2022年3月13日日曜日

【No.1246】口の課題からの連想

「愛甲さんに質問する会」の録画を拝聴していると、やはり「口の発達」に課題を持たれている方が多い印象を受けました。
確か栗本さんとご一緒させていただいたZOOM講演会(2020)でも同様のご質問が多かった気がします。
コロナマスクからの口呼吸といった問題からも、口の発達には注目していて、近頃考えることがあったのでお話ししていきたいと思います。


この前も発達相談であるお宅に伺ったとき、子どもさんのおやつを食べている様子から気がついたことがありました。
それは「歯の前側を使っていない」ということです。
このご家庭だけではないのですが、どうもパクっと食べ物を口に入れたあと、奥歯を使って噛み、飲み込んでいる子が多い気がします。
「最近の子は固いものを食べない」と言われて久しいですが、噛む力の問題と同様に、歯の使い方の問題もあると思います。


1万年以上続いた縄文時代の私達の祖先は、野山で採集した木の実、川や海で採った魚・貝、狩りで採った獣や鳥を食べて生きていました。
当然、今のようにナイフで食物を切って食べやすくするなどはしていなくて、主に歯を使って噛み千切っていたと想像されます。
昭和のアニメのように、大きな肉をガブってかじりついていた感じですね。
そうやって1万年以上、いや、人類の歴史からいえば700万年以上、いいえ、もともとヒトも動物の進化の途上ですから、現在の食事が異質だといえるのです。


そんな風に連想していると、今の子ども達って噛み千切るってしませんよね。
とくに噛む力が弱くて、「固いものはあまり食べないんです」「すぐペッと出しちゃうんです」というご家庭は、無意識のうちに食べ物が小さくカットされ、より食べやすく、飲み込みやすい形態になっていきます。
そうすると、ますます前歯を使う機会がなくなり、パクっと口の中に入れて奥歯で噛み、ごっくんが繰り返され習慣化するのだと思います。


「奥歯で噛んで飲み込んでも良いじゃないか」というツッコミが入りそうですし、私もそう思いました。
でも実際にやってみるとわかるのですが、前歯を使わず奥歯で噛んで食べると、舌を使わなくなるんです。
逆に言うと、前歯で噛もうとすると、いやでも舌が動き、また舌と食べ物の接触が多くなります。
つまり、噛む力に問題が出るというよりも、この舌の使い方、発達に影響が出るのでは?と思うのです。


そう考えると、一言で「口の課題」といいますが、そこには滑舌(発語)の問題、偏食(味覚過敏を含む)、嚥下の問題、目の動きの問題(舌下神経は動眼神経と関連)、危険認知の問題、呼吸の問題というようにかなりの広がりと繋がりがあるんですね。
ですから私は上記に挙げたような課題が複数またがって確認できる際、そして何よりも食事場面で「どうも前歯を使っていないな」「奥歯で食べる習慣ができているな」と見えたとき、食材を(徐々に)大きくすること、噛み千切る機会を作ることを提案しています。


食材が大きくなれば、自然と前歯を使いますし、丸飲みできないので舌を使って食べ物の位置を口腔内の前側に押し出します。
押し出すときは、当然、食物と舌が接触しますし、舌をコントロールしなければなりませんね。
噛み千切るでいえば、せんべいとか、フランスパンとか、するめとか、最初から小さくして提供するのではなく、手を使ってちぎって食べるのではなく、ガブッと噛みつき、前歯を使って切り分けると、自然と奥歯ではなく、前側の歯を使って食べる習慣ができてくると思います。


ただ忘れてはならないのは、こういった問題の根っこはうつ伏せ姿勢のやり残し、ずりばい、ハイハイのヌケですから、こちらをやり切ることが優先されます。
これらのやり残しをそのままにしていて、いくら上記のようなアプローチで口を育てようとも、発達は繋がりであり、全体的な広がりですので、どうも「部分的に訓練されできるようになる」みたいな感じで、噛む力はついたけれども、舌の動きが悪いまま、呼吸や味覚、嚥下は未発達のまま、といったことが生じます。
ですから、うつ伏せ(ずりばい&ハイハイ)をやり切ったあとのアプローチとして、もちろん、同時進行しても良いのですが、根っこが何なのかはきちんと押さえておいてほしいと思います。


親心としてわからなくはないのですが
【根っこ】うつ伏せのヌケ
→口の課題
→食べ物を小さく&柔らかく
→奥歯食べ・丸飲み
→噛む力&舌が育たない
→関連する領域の課題が残る
→より食べ物を小さく&柔らかく
→食べ物の偏り
→味覚の偏り&栄養の偏り
→全体的な発達の遅れ
→食べ物を小さく&柔らかく
…の無限ループに入っている場合があるように感じます。


原始の生物も、管状になり、始まりは口と肛門でした。
発達障害の子は食と排泄に課題を持っている場合が少なくないですね。
人類が始まって以来、異質な食事を行っているのはまさにこの100年であり、現代社会、日本社会。
口の課題って、現代社会が作った問題、環境要因による発達の遅れの一つだといえるかもしれませんね。




【新刊『ポストコロナの発達援助論』発売のお知らせ】
北海道から沖縄まで、全国の書店に並びました。店頭でのご購入もよろしくお願い致します。
出版元である花風社さんからのご購入はこちら→https://kafusha.com/products/detail/56
Amazonでも購入できます。

前著『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』もどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!ご購入して頂いた皆さまのおかげで二刷ですm(__)m


0 件のコメント:

コメントを投稿