【No.1241】チャンネルに合わせた言葉づかい
難しいことを難しく説明する人は専門家だったとしても、プロとは言えないでしょう。
プロとはお金を貰って仕事をする人であり、そのお金を払ってくれる方の視点に立って仕事、サービスを提供しなければなりません。
しかし一方で、だからと言って、その相手が簡単に理解できるレベルまで下げて伝えるのも違うと思っています。
特に私が対象としているのは親御さん達ですから、専門的な内容を噛み砕いてお伝えすることは大事ではありますが、親御さんがもう一歩前進できるような、できればご自身で考え、「ああ、子育てって楽しいな」と思ってくれるような言葉を選び、説明ができたらと考えています。
日々、メールでの相談をいただくのですが、その際も上記のようなことを思い描きながらお返事しているのですが、当事者の方からの相談も多くあります。
当事者の方の場合、今、困っていて、今を改善したい人が多いので、レベルアップしてもらう、考えるきっかけにしてもらう、というよりも、できるだけ脳に負荷をかけないような文章にしています。
でも、それは単にシンプルに書くということではないと思っています。
綴られている文章には、その人の頭の中が原寸大で表れているような印象を受けます。
文章が長く、細部が細かく書かれている人には、それが日頃の情報処理の形態だといえますので、なるべく曖昧な言葉は使わず、具体的に、ここは端折って良いなと思うところまで、詳しく文字にするようにしています。
他には、表面的な言葉が多い人は、内面や感覚が掴みきれていない場合が多いので、客観的な目で見てわかるような表現を使い、説明するようにしています。
細かいところで言えば、感情表現が豊かな人はなるべくオノパトペを使うようにし、文章がポツンポツンと脈絡がないような人には、ポイントを絞ってメール1通で伝える分量を小さくしてやりとりをするようにしています。
つまり、相手の文章、もっといえば、脳の情報処理、世の中の組み立て方に合わせたメールを書くようにしているのです。
私達支援者と言うのは、相手のことを思えば思うほど、容易で簡単な言葉を使おうとしてしまいます。
よく成人施設などで、利用者の方に赤ちゃん言葉を使っている支援者がいますが、まさにそれです。
そういった年齢にそぐわない、相手を低く見るような言動は、それ自体が失礼だということもありますが、相手のチャンネルに合っていない言動は却ってわかりづらいことが往々にしてあります。
知的障害があるからといって、幼い子に使うような言葉を使っても、相手が理解しづらいこともあるのです。
ですから、その人のチャンネルに合わせた言葉、コミュニケーションをすることは大事だと思います。
そういった視点で親子関係を見ますと、実に上手なコミュニケーションをとっているご家族が多くいらっしゃいます。
日頃は普通に話をしているものの、大事なことを伝えるときには、その子が単語レベルの発信、理解の仕方だと、親御さんも単語で伝えます。
まだ概念が育っていない子どもさんには、言葉と合わせて具体的なものを使いながらコミュニケーションをとったりしています。
言葉の発達で言えば、理解が先で発信があとです。
理解が広がるから表出できるのであって、表出の練習をしたからといって話せるようになるわけではありません。
つまり、言葉の発達には理解を育てることが大事であり、そのために聴覚を育てる必要があるし、聴覚の前には前庭覚を育てる必要があるのです。
また聴覚という機能的な準備だけではなく、その子が理解できるチャンネルに合わせた言葉、形態、レベルを使わなければ、本人がキャッチできませんので、そのためにはその子の情報処理の形態、もっといえば、どのように世の中を切り取り、認識しているかを捉えていなければなりません。
支援者にとっては、相手のチャンネルに合わせてコミュニケーションができているかが重要なポイントになります。
どの子にも同じような言葉を使ったり、自閉症ならこういった言葉、知的障害がある子にはこういった言葉というように通り一辺倒なコミュニケーションをとっている人は力量に疑問符がつくでしょう。
親御さんにとっては、子どもの成長とともに言葉、表現の仕方を変えていけることがポイントだと思います。
親子の間ですと、どうしても楽なチャンネルでのコミュニケーションで終始してしまう傾向がありますが、本人の認知的な発達とともに言葉使い、表現のレベル、複雑さ、どのくらい本人が考えられる余白を作るかなどの変化が大事です。
理解は相手と同じチャンネルで、成長は相手のチャンネルよりもちょっと上のレベルで。
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