自分の資質から飛びだすことはできない

私は、「資質から飛びだすことはできない」と思っています。 別の言い方をするならば、「資質を超えることはできない」ですかね。 資質っていうのは、その人が持って生まれたものであって、その資質を磨くことはできますが、新たな資質を加えるようなことはできない、と思っています。 よく「無限大の可能性」なんて言いますが、その可能性は持っている資質の範囲での可能性ってことですね。 支援を始めるときの出発点は、その人の資質を見抜くことです。 問題行動や心身の不調を抱えている人は、得てして自分の資質を活かせていないものです。 自分の資質を活かしていない、自分の資質ではないことをやっているから、問題や不調が起きるとも言えますね。 自閉症の人達は、自分をモニタリングすることが苦手だったり、そもそもの経験が足りなかったりするので、自分の資質が分かっていないことが多いような気がします。 また、他人の評価、言動をそのまま鵜呑みにする傾向もありますので、言った本人は励ましや期待のつもりで「きみには絵の才能がある」とか、「あなたの取柄は優しさだね」とか、「苦手な運動も頑張ればできるようになる」とか言っているのに、「そうか、自分は〇〇なんだ」というように自己像が作られていく場合もあります。 こうなると、自分の資質とは違うことをやってしまう機会が多くなり、その分、失敗も多くなりますね。 100mを15秒で走る資質しかないのに、10秒切ろうと走り続けている感じです。 100mを15秒で走る資質の人には、「あなたは、どう頑張っても15秒でしか走れないよ」「10秒切るのは無理」というのも、支援の1つだと考えています。 そして、「持っているもので勝負しよう」と言い、適切な方向へと軌道修正するのも大事な支援です。 仕事が続かない、就職できない人の支援にも携わりますが、やっぱり問題や不調を抱える人と同じで、資質に合っていない仕事を選ぼうとする傾向が強いんですね。 「なんでその仕事に就いたんですか?」 「どうしてその仕事に就きたいんですか?」 と尋ねると、自分の資質だからではなく、「〇〇が好きだから」とか、「親が、相談機関が勧めたから」とか、「労働条件が良いから」というのがほとんどです。 定型発達の人のように、自分の資質とは異なる仕事に就いたとしても、柔軟に対処できるなら良いの...