井出草平氏の「アスペルガー症候群の難題」(光文社新書)を読んで
業界内では、話題の著書 井出草平氏の「アスペルガー症候群の難題」(光文社新書) 私も発売日に購入し、一気に読んでしまいました。 なかなか発達障害と触法行為についての書籍や論文がありませんので、発売前から楽しみにしていました。 今までの書籍や論文とは異なり、事象だけではなく、日本の自閉症支援をリードしてきた専門家や機関がどのような言動を行ってきたのか、まで記されていました。 この本を読んだ率直な感想は、「こんなことまで書いて大丈夫かな」という思いでした。 その予想通りの結果となり、発売して間もないのですが、関係者たちから酷評されています。 私もいろいろな意見を見聞きしました。 普通の新書なら「嫌だったら読まなければいい」ということになると思うのですが、そうとも言えない事情があるようです。 確かに「発達障害=危険な人たち、犯罪者」というようなイメージが世の中に広まるのは避けなければならないと思います。 でも、だからといって、このような課題に取り組まなくて良いということにはなりません。 この著書に対する批判の中に「発達障害者が起こす犯罪数は、定型発達の人の起こす犯罪数よりも多いということはない」というような意見がありました。 しかし、そんなことはどうでも良いのではないかと思います。 定型発達の人の中にも犯罪を犯す人もいます。 だから、発達障害の人の中にも犯罪を犯す人がいるのは容易に想像できることです。 注目すべき点は、「発達障害を持った人が犯罪を犯してしまった」という事実ではないでしょうか。 注目すべき点は、「定型発達の人が犯した犯罪と、発達障害を持った人が犯した犯罪の"違い"」ではないでしょうか。 私が関わる自閉症の人たちの中にも、このままいったら犯罪を犯してしまうのではないか(もう起こしている!?)というような人もいるのが実際のところです。 いじめや周囲の無理解といったネガティブな経験が誤った行動と結びつくといった後天的な要因もあります。 でも、それだけでは説明できない事例もあり、やっぱり自閉症の特性、具体的に言えば、"想像性の違い"という中核的な特性と関係していると感じることもあります。 詳しく書けませんが、「他者からどう見られるか」「自分の言動がどのような影響があるか」など、想像...