2020年4月29日水曜日

【No.1056】絵が内的な世界を表し、描く行為が外的な世界を表す

今朝来た相談メールにも子どもさんが描いた絵が添付されていました。
2年前に【子どもの絵と発達】というテーマでブログを書いてからは、相談文にプラスして絵も送ってこられる親御さんが増えました。
当然、実際にお会いする発達相談でも、お子さんの絵を拝見しますし、一緒に絵を描いて遊ぶこともあります。


絵は、その子の世界であり、その子の脳そのものです。
「どんな絵を描くか」「どんな色を使うか」
そこに意識を向けていくと、子どもの目を通した世界が見えてきます。
発達段階や精神状態などの内側を追体験することができますので、子どもさんが描いた絵を拝見し読み解くことは、私達支援者にとって重要な仕事になります。


絵そのものが内的な世界を表しているとしたら、絵を描いている様子は外的な世界を表しているといえます。
色鉛筆も、クレヨンも、絵の具も、道具です。
つまり、絵を描いている様子で注目するのは、この道具の使い方なのです。
道具の使い方で、どのくらい勉強の準備が整っているか、今後どのくらい学力を積み重ねていけるかがわかります。


ヒトの進化において、道具を使えるようになったことが言語獲得へと繋がったのは有名な話です。
道具を操作しているときに働く脳の部位は言語野だといわれています。
私達が言葉を話すようになったことと、道具が使えるようになったことは密接な関係にありますので、発達援助においても、どんな道具をどれくらいうまく操れるかに注目するのです。
使える道具が増えると、言葉も増えてきます。
反対に道具がうまく使えないと、言葉の遅れがみられます。
ぎこちない道具の使い方がそのままぎこちない言葉へと表れます。


お子さんが絵を描いているとき、そのペンの持ち方と同時に、力加減と滑らかさに私は注目しています。
持ち方(指の位置・形など)はストレートに発達段階を表しますし、力加減と滑らかさは学習における脳の準備の状態を表現しています。
力加減は強すぎても弱すぎても、まだ学習の準備は整っていないことになります。
ペンの運び方、滑らかさは思考の柔軟性を表しますので、ぎこちなさを感じると「単純計算は大丈夫そうだけれども、文章問題・思考を問う問題はどうかな」と心配になります。
「しなやかな身体が柔軟な頭を作る」と言われており、それが指先にも表れると考えても良いかもしれません。


就学後のお子さんや成人した若者たちの字を拝見しますと、小さいときに思いっきり絵を描いたか、全く描かなかったか、また絵を描いたか、字や記号ばかりを描いたかがよくわかります。
特に成人の方が書く字は、思考そのものが表れやすく、硬い字を書く人は思考が固く、字が弱々しい人は知的な課題をもっていて、筆圧が強い人は衝動性が高い傾向があると、私は感じます。
しかし生涯発達は続きますので、当然、その人の生活・環境・発達によって字も変わっていきます。
届いた手紙を見て、その内容からではなく、字体から成長している様子が伝わってくることがあります。


セラピーの一つに絵を描くことがあります。
心理系の考えでは絵を描くことで、その人の内的な感情や課題が解き放たれ癒していくというように捉えられますが、私が思うに絵を描くこと自体に発達を促す効果があるような気がします。
先ほどお話ししたように、絵を描くことは道具を操作することになりますので、その行為を繰り返すことが言葉の発達から認知の発達に繋がっていくのだと思います。
なので、心理的な効果はかじった程度でよくわかりませんが、発達的な観点から成人した方にも絵をお勧めすることがあります。


実際に絵を描き始めた成人の方は、最初は「ただ描いて」と言われても描けませんので、模写をしたり、好きなキャラクターを描いたりしていました。
そうやって繰り返していくうちに、自由な絵が描けるようになり、気が付いたら手の操作性が上がっていましたし、思考も柔らかくなっていました。
子どもさんの場合は、大人の変な介入さえなければ、自由に絵を描くものなので心配ないのですが、成人した方はどうしても字や記号を書いてきた経験が多すぎますので、(自由な)絵を描かなかったヌケを埋めるのは難しいです。
なので、ある程度、介入と支援、援助が必要なわけです。


絵を描くこと、それが発達につながるためには、"自由"が何よりも大切なことになります。
小さいときから、「数字やロゴなどを描いていた」というのは発達障害の子にあるあるの話です。
数字やロゴは、そのままコピーであり、学習の準備を整えることにはなりません。
確かに就学前から字が書けるかもしれませんが、字が書けることは厳密に言えば学ぶ力とはいえないのです。
文字が大事なのは、就学後学習を積み重ねていくために必要な力は、その文字が表す概念を理解し、そちらに注目できることになります。
そういった意味で自由に絵を描くというのは、抽象的な概念を味わう行為であり、育む作業だといえます。


子どもの絵が上手か下手かなんかどうでもよい話です。
就学前の子に絵の描き方を教えるなんて言語道断、そんなのは教育とは言えません。
とにかく自由に、思いっきり絵を描き切ること、絵を描く楽しみを味わうことです。
たくさん描いたら描いただけ、その子は育っていきます。
あと「うちの子、絵を描かないんです」「興味を示さないんです」という相談が多いですが、それに対する答えは一つ。
「遊びが足りない」ということ。
身体、五感を存分に使って遊ぶ、全身で刺激を受けることが、そのまま絵に表れます。
ですから、絵を描かない子は遊びが足りなく子。
数字やロゴばかり描く子は視覚しか使っていない子、裏を返せば感覚、運動系に発達の遅れが多い子です。
学習の準備のために絵を描くように、絵の準備のために全身と五感を使った遊びを増やしていきましょうね。





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