2019年5月7日火曜日

神経細胞の数ではなく、繋がりを変えるという戦略

新生児の脳の重さは400gで、大人の脳は1,400g。
1歳になる頃には、800gになると言われています。
1年間で、脳の重さが2倍になったのだから、神経細胞が2倍に増えたと感じるかもしれません。
でも、神経細胞の数は、生後増えることはありません。
つまり、新生児も、1歳児も、大人も、みんな、同じ数。
ちなみに、ヒトの脳の神経細胞は、生まれたときに全体で1,000憶個あり、そのうち、大脳新皮質には140憶個の神経細胞があります。


じゃあ、脳はなぜ、重くなるのか?
それは、神経細胞と神経細胞の間を連結するシナプスが増えるから。
生後、外の環境からの刺激によって増えていくのです。
繋がりを増やすことで脳は大きくなり、繋がりが増えるということは、感覚、動作、認知の発達だといえます。


生後、1年間は、もっとも脳が育つ時期だといえるでしょう。
その最も脳が育つ時期、劇的な発達を見せる時期に、「なんの問題もなかった」「特に変わったことはなかった」「むしろ、順調に育っていた」と言われる子ども達が少なくありません。
「おっぱいを吸うのが難しかった」となれば、胎児期の発達に根っこがあると考えられます。
早産や未熟児だったとなれば、当然、お腹という環境の中で行うべき発達や栄養が足りなかったとなるので、その影響が生まれたあとに出るのは自然だといえます。
明らかに「ご本人さまですね」という親御さんなら、遺伝の影響が考えられます。


おっぱいを吸うのも、運動発達も、親との交流も、順調に育っていた。
特に、胎児期、出生児にトラブルがあったように思えない。
親御さんや家族、親戚に、同じような特徴を持った人がいるわけではない。
でも、「1歳を過ぎたあたりから…」「2歳になっても言葉が出ず…」という子ども達がいます。
それも珍しい話ではなく、よく聞く話なのです。


順調に1歳、2歳まで発達する子ども達に遅れが出る。
この子達は、確かに発達に遅れが出るので、発達障害の子ども達なのだと思います。
しかし、じゃあ、先天的な障害か、と言われれば、そうではない可能性が高いといえます。
だって、先天的な障害だとしたら、少なくとも、新生児、赤ちゃんの時点で、何らかの課題が生じているはずだから。
超早期診断というのもありますが、そのマーカーに引っかからないのです、だって、その項目はクリアし、順調に育っているから。


受精し、細胞分裂の時点で、神経細胞の数が少なければ、それはもっと器質的な障害として表れるでしょうし、生まれること、生きることが難しいかもしれません。
しかし、私が関わる子ども達は、最初から神経細胞が少ないなどと思われるような子はいません。
神経細胞の数は、出生後、変わらないのですから、違いがあるとすれば、その繋がりの問題。
何らかの要因から、うまく神経細胞同士が繋がっていかなかったと考えるのが自然だといえます。


では、1歳、2歳まで順調に育っていた子の発達の遅れは、どう捉えれば良いのか。
当然、神経細胞同士の繋がりは、神経なのですから、栄養と刺激に左右されます。
もちろん、個人的な見解ではありますが、栄養面で言えば、おへそからの栄養摂取ではなく、口からの摂取になりますので、食べたものが偏っていたり、栄養が足りなければ、神経細胞同士の繋がりが生じにくくなるでしょう。
それに、消化、吸収に関する個体差があるでしょうから、バランスよく食べても、消化、吸収がうまくできなければ、結果的に偏りが生じ、それが繋がりに影響を及ぼす。


刺激に関しても同様で、単一的な刺激や、自然ではないコントロールされた環境、反対に強すぎる刺激を受ければ、それに応じて、繋がりが生じにくかったり、反対に局地的な繋がりばかり生じてしまったりする。
そして、本人の感覚に課題があれば、同じ刺激を受けても、十分に受容、反応できないのですから、そこでも繋がりに影響が出る。


まあ、端的に言えば、一言に「発達障害」と言っても、後天的な発達障害もあるということ。
というか、これだけ、モノと刺激と人工的な環境に溢れる現代ですから、それに親世代がとても忙しく余裕のない時代ですから、便利でインスタントなモノに流れていくのは自然だといえます。
人類の歴史から考えれば、これだけ短い時間の中で、強烈な変化、非自然なものに溢れた環境で生きることは経験したことがないのですから、DNAや身体がその変化に、刺激に、追いつけず、バグを起こすのは当然です。


私は、便利で快適なものをすべて捨てろ、と言っているのではありません。
ただ、神経細胞同士の繋がりを、出生後の環境、刺激によって変えられるような戦略をとってきたヒトという生き物が、現代社会の影響をもろに受けるのは当然だと思っています。
だからこそ、子ども達の環境、刺激は、大人が守らなければならないのです。
子どもがより良く発達できる環境と刺激を用意するのは、大人たちの役目であり、責任です。
子どもの発達を阻害する環境と刺激から守っていくのも、同じこと。


1歳、2歳まで、つまり、脳が2倍も重くなる時期を、順調に育ったのですから、その発達の遅れは、生来的なものではなく、生まれつきのものでもなく、生涯変わらないものでもない。
環境と刺激の影響で、脳の神経細胞同士の繋がりにネガティブな影響が出たのなら、そのネガティブな環境、刺激から遠ざけ、反対にポジティブな環境と刺激で、より良い繋がり、発達を促していけば良いのです。
とてもシンプルな話。
だって、神経細胞の数は変わらないのです。
じゃあ、あとは繋がりだけ。
神経細胞同士の繋がりは、栄養と刺激で生じるのです。


今回は、いわゆる折れ線グラフ型の子ども達について書きましたが、他の発達障害の子ども達も、生後の栄養と刺激で、どんどん変わっていくと思います。
何故なら、どう考えても、神経細胞の数の問題ではなく、繋がりの問題だといえるから。
つまり、その発達の遅れの根っこが、たとえ胎児期であっても、それが生来的、生まれつきとは言えないから。
胎児だって、羊水の中で身体を動かしたり、羊水を飲んだりして、神経発達を促しているのです。
出生後からではなくて、胎児期から刺激を感じ、身体を動かして、自分の脳や神経を育てている。
だから、ここの時点で発達の遅れが生じたとしても、あとからこの胎児期のやりのこしをやれば、神経細胞同士の繋がりは生じるのだと思います。


発達障害と呼ばれる子ども達の多くは、神経細胞同士の繋がりの問題。
じゃあ、先天的な障害とはいえないでしょ、生まれつきの障害といえないでしょ、治らないといえないでしょ。
もちろん、先天的で神経細胞自体の数が少ない子、それ自体に問題がある子もいるでしょう。
でも、ほとんどの子は、違うはず。
じゃあ、あとからでも、生まれたあとからでも、良い栄養と刺激によって、より良く神経細胞同士を繋げていこうよ、より良く育てていこうよ、というお話。
諦めるのも、やらないのも自由だけれども、発達障害の子ども達の中に治って、診断基準から外れ、普通の子として成長していく子がいるのは、ごく自然なことですね。
ヒトは神経細胞の数は一定にしつつ、環境と刺激によって、「神経細胞同士の繋がりを変えられる」という戦略をとった生き物なのですから。




0 件のコメント:

コメントを投稿