【No.1344】発達の遅れのサイン(赤ちゃん編)

今年は赤ちゃんの相談が増えましたね。
例年なら1年間で数件だったのに、今年は初めて10件を超えました。
9月に書いた【「おっぱいを飲まないんです」】という記事でも紹介したように、赤ちゃんに何らかの異変が生じているのは確かでしょう。


2013年開業以来、多くの人たちの発達相談を行ってきて、その分、様々な人の成育歴を聞いたことになります。
そこで今日は、赤ちゃんのとき、どんな特徴があったのかについてお話していきたいと思います。
チェックリストのように捉えられると困るのですが、それでも今、赤ちゃんを育てているお母さんが発達の遅れの前兆を掴み、軌道修正ができれば本格的な発達障害になる前に治ったり、予防に繋がったりすると思うんです。
実際、赤ちゃんを育てているお母さんからの相談でもこの辺りの質問が多く、中には短期間で心配事がなくなったケースもあります。
ぜひ、子育てのアイディアの一つ、考えるきっかけにしてくださいね。


【おっぱいがうまく飲めない】

最初から上手に飲める子もいれば、うまく飲めずにいる子もいます。
でも、うまく飲めない子も徐々には上手に飲めるようになるものですが、あとから発達障害と分かった子は、「結局、最後まで上手に飲めなかった」という場合が多いです。
私の見立てでは、首や脳幹になんらかの課題があるように感じます。
あとは吸啜反射がうまくいかず、乳首に吸い付くことが難しい子もいます。
おっぱいを飲むことは問題なくできる子でも、その飲み方がポイントで、定型発達の子はリズムよく飲む一方で、飲み方に特徴があることもあります。
またこれは言いづらい面もあるのですが、研究結果でも明らかになっているので母乳と人工乳ではIQに違いが出ることもわかっています。
ですから昔の日本人は当たり前にやっていた「妊娠する一年前からしっかり栄養を摂る」ということが大事だと思います。


【終始機嫌が悪い。まとまって寝ることができない】

赤ちゃんは泣くのが仕事ですが、空腹やおむつの不快感といったことがないのにもかかわらず、一日ずっと泣いている子がいます。
それに関連して、とにかく寝れない、抱っこから降ろすとすぐに泣きだす、というお話もよく伺います。
私が施設で働いていたときも、「赤ちゃんのとき、とにかく泣いていた」「とにかく寝なかった」という話をたくさん聞きました。
背景には胎児期から出産時に起きたトラウマと、神経学的な、生物学的な問題があるような気がします。


【運動発達のヌケ】

「ハイハイを飛ばした」「ほとんどしなかった」という子がいる一方で、「1歳を過ぎてもずっとハイハイをしていた」という子もいます。
ハイハイはわかりやすいですし、そういった情報が多くあるので親御さんの中でも印象に残りやすいと思いますが、ほとんどの子はハイハイ以前の運動発達に問題が生じていますね。
よくよく伺えば、当時の動画を見せてもらえば、ずりばいの仕方が違ったり、寝返りがちゃんとできていなかったり、そもそも首が座っていなかったり。
「じゃあ、どこに違いがあるんだ?」と言われれば、いくつかポイントがあって、手や足など末端の形や力の入り具合、使い方だったり、身体の軸、左右のバランス、傾きと偏りだったり。


【お母さんの目を見ない】

これもよく聞きますね。
ヒトが備わっている目に対する注意ですが、「顔に興味を示さない」「私がいても、とくに反応しない」ということがあります。
これも神経学的な問題から注視できないということもあるかもしれませんが、結構多いのが授乳中のスマホ。
赤ちゃんからしたらお母さんの目を見ても、反応がないから学習の機会が失われた、ということも少なくないのでは。
生後一年というのはものすごく刺激の影響を受けやすいので、赤ちゃんの頭の近くでスマホの操作もまずいと私は思っています。
あと、「目の動きが乏しい」「一点を見つめていることが多い」というのも、私が「あれっ」と思う様子です。


【皮膚過敏】

「横抱きにすると泣く」というエピソードもよく聞きます。
縦抱きだったり、補助いすに座っているのは大丈夫(?)我慢できるからよいけれども、触れられる範囲が大きい、また身体に圧がかかりやすい横抱きは苦手ということじゃないかなと思います。
赤ちゃんはスキンシップが大好きなものですが、それを不快に感じ、拒否するような子もいて、だいたいみんな、縦抱きオンリーだったという話です。
皮膚と脳は同じ部位からできているので、これまた神経に関する問題の表れかもしれません。


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細かいところでいえばほかにもあるのですが、メジャーなのが上記の様子です。
テレビがずっとついている家庭で、そっちをずっと見ていたとか、ずっと英語のCDを聴かせていてその間は静かだったとかもあります。
この時期のアプローチは、「〇〇をやらせよう」と思っても無理なので、赤ちゃんの生活に「心地よい」をたくさん増やしていくことだといえます。
とにかく赤ちゃんが機嫌よく過ごせる時間を増やしていく。


その一方で、人生で一番脳が繊細な時期なので、できるだけ強い刺激、人工的な刺激を減らしていく。
「赤ちゃん、ぜんぜん寝ないんです」という家庭に訪問すれば、夜もこんこんと電気がついていたり、家族がテレビを見ていたり。
生後1年くらいは赤ちゃん優先の生活スタイル、生活環境にしませんか。


あと結構効果があるのが、赤ちゃんの身体を温めること。
できればお母さんの身体で、それ以外は暖かいタオルケットなどで、赤ちゃんの身体を温める。
睡眠の乱れで悩んでいたお母さんが、できるだけ肌をくっつけて過ごし続けた結果、睡眠が安定しだしたというケースもありました。
本来、赤ちゃんの体温は高くて、冬でも薄着で良いくらいなのですが、発達に遅れが出るような子は体温が低め、深部体温が低め。
ああ、これも一つの前兆、兆しになるかもしれませんね。
「手足の冷たい赤ちゃん」というのも、話を聞きます。
カンガルーケアのように、また胎児期をもう一度やり直すイメージで関わることも、発達の遅れを早期に戻すアイディアになると思います。
現場レベルでの気づきでした。
ご参考までに。




☆『医者が教えてくれない発達障害の治り方』のご紹介☆

まえがき(浅見淳子)

第一章 診断されると本当にいいことあるの?
〇医者は誤ることはあるけど謝ることはない
〇早期診断→特別支援教育のオススメルートは基本片道切符
〇八歳までは障害名(仮)でよいはず
〇その遅れは八歳以降も続きますか?
〇未発達とは、何が育っていないのか?
〇就学先は五歳~六歳の発達状況で決められてしまうという現実
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのメリット
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのデメリット
〇療育や支援とつながるほど、子育ての時間は減る

第二章 親心活用のススメ
〇親子遊びはたしかに、発達に結びつく
〇変わりゆく発達凸凹のお子さんを持つ家庭の姿
〇学校は頼りにならないと知っておこう
〇安定した土台は生活の中でしか作れない
〇支援者が行うアセスメントには、実はあまり意味がない
〇親が求めているのは「よりよくなるための手がかり」のはず
〇人間は主観の中で生きていく
〇専門家との関係性より親子の関係性の方が大事
〇支援者の粗探しから子どもを守ろう
〇圧倒的な情報量を持っているのは支援者ではなく親

第三章 親心活用アセスメントこそ効果的
〇子育ての世界へ戻ろう
〇その子のペースで遊ぶことの大切さ
〇「発達のヌケ」を見抜けるのは誰か?
〇いわゆる代替療法に手を出してはいけないのか
〇家庭でのアセスメントの利点
1.発達段階が正確にわかる
2.親の観察眼を養える
3.本人のニーズがわかる
4.利点まとめ
〇家庭で子どもの何をみればいいのか
1.発達段階
2.キャラクター
3.流れ
4.親子のニーズの不一致に気を付けよう

第四章 「我が子の強み」をどう発見し、活かすか
〇支援と発達援助、どちらを望んでいますか?
〇子ども自身が自分を育てる方法を知っている
〇親に余裕がないと「トレーニング」になってしまう
〇それぞれの家庭らしさをどう見つけるか
〇親から受け継いだものを大切に、自分に自信を持とう

あとがき(大久保悠)


『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』をどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!ご購入して頂いた皆さまのおかげで二刷になりましたm(__)m


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