【No.1337】「ねえ、いま、どんなことを育てたいの?」

発達相談を受けてくださった方の感想で、「子育てが楽しくなった」と言われるのがとても嬉しいですね。
せっかく縁があって親子になったのですから、しかも子ども時代はあっという間ですから、その限られた時間を愉しく思えることがお互いにとって幸せなこと。
逆に言えば、それまで「楽しめなかった」「その余裕がなかった」のでしょう。


子育てを楽しめないのが「余裕のなさ」だとしたら、それはどこからきているのでしょうか。
よく「私は要領が悪くって」「ちゃんと子育てができていなくって」「私には愛着障害ガー(涙)」とおっしゃる親御さんがいますが、私はそうは思いません。
全国各地、家庭訪問をして、たぶん、一般の人よりも親御さん、ご家族と関わっている私ですが、みなさん、大きな違いはないと思います。
親御さんのセンスとか、資質とかではなく、後天的なモノ。
子育ても、経験や情報をもとにどんどんうまくなっていくものだと思っています。


「発達の課題が治っていくから、親御さんに余裕が出るんだ、楽しみを感じられるんだ」と思われた方もいるかもしれません。
確かに発達の悩みが解決していけば、余裕が生まれるでしょう。
でも、順番は反対で、「余裕が生まれるから子育てを楽しめて、子育てを楽しめるから発達の課題がクリアされていく、どんどん伸びていく!」のです。


我が子に発達の課題や遅れが見つかると、親心としては「できることをなんでもやってあげたい」と思うでしょう。
しかし、発達は勉強とは違いますので、やったらやっただけ伸びるとはいえないのです。
むしろ、親御さんが先行してあれこれやってしまうと、却って本人が必要としている刺激や発達から遠ざかっていく可能性も出てきます。
発達相談を利用された親御さんのニーズとして、「なにをどうしたらよいかわからない」というのが多いですが、みなさん、情報過多&あれこれ手を出し過ぎて訳が分からなくなってしまっている状態ですね。


情報が氾濫していて、「どれが良いのかわからない」「どれが我が子に合っているのか、必要なのか分からない」というのが、今の親御さんの悩み。
だから発達相談の中で、改めてお子さんをアセスメントすることにより、どんな刺激や発達が必要なのかを確認していく作業が求められていると感じます。
情報過多は焦りを生み、焦りを生んであれこれやろうとするから、本当に子どもが必要な発達が見えなくなっていく。
情報の交通整理が必要です。


アセスメントでお子さんの発達の課題の根っこを確認し、どう後押ししていけばよいかをお話しすると、「えっ、それだけで良いんですか?」と驚かれることがあります。
たぶん、みんなよりも遅れている分、何倍も頑張らなければならないと思われているのでしょう。
でも、発達の根っこを辿っていけば、1つか2つと繋がっているものです。
ヒトの発達とは、それぞれ別々に存在しているのではなく、受精から胎児期、乳幼児期というように1つの発達が次の発達のベースとなり、段々と育っていきます。
ですから、枝葉ではなく、根っこからアプローチできれば、いくつもやる必要はないのです。


また子どもというのは、自分自身で必要な刺激、発達がわかっているものです。
私達だって、誰から教わったわけではなく、いろんな遊びや運動を行っていく中で、ちゃんと育ってきたではないでしょうか。
赤ちゃんはハイハイの仕方を教わったからハイハイができるようになったわけではありませんね。
ハイハイができる身体、つまり発達の準備が整ったからハイハイをしているのです。
ということは、親御さんがあれこれ調べて、やるというよりも、お子さんが今、必要としている刺激や発達を後押ししていけばいい。
それがわかれば、スマホで夜な夜な調べる必要はありませんね。
目の前にいる我が子に訊けば良いのですから。
「ねえ、いま、どんなことを育てたいの?」


今年もあちこちで発達相談を行いましたが、情報過多で頭でっかちになりがちな現代での子育て、発達援助は、「どうやって治すか?」よりも、親御さんが子どもの「どこを見るか?」「何を確認するか?」のほうが大事じゃないかなと思っています。
そして「どこを見るか?」以上に大事なのが、「何を育てたがっているか?」を感じられること。
それは特殊な能力というよりも、コツがあって、誰でもわかるようになれることです。
実際は、日々見ている我が子の言動だけれども、そこに「発達の視点」がないので、気がつかないままという状況なんだと思います。


お子さんの発達に関するメッセージが掴めるようになれば、焦ってあれこれする必要はありませんし、余裕をもって子育て、発達の後押しができるようになります。
「自分がやらなければ」と思えば、どんどん追い詰められていきますね、自分自身の心に。
でも、「我が子が教えてくれる」というのがわかれば、お子さんの発達する力を信じ、それに応じた子育て、後押しができるようになる。


春にお会いした幼児さんですが、重度で自閉症という診断で、親御さんはかなりテンパった状態での相談がありました。
お子さんのアセスメントをしながら、課題の根っこについてお話ししたところ、「息子の育つ力を信じて、根っこから育てていきます!」ということで、この半年間、そこだけを後押しし続けた結果、言葉が出て、しかも単語から二語文までとんとん拍子で育っていったというメールをいただきました。
添付されていた写真を見ると、お子さんに表情が出ていて、さらにごきょうだいとパパが顔いっぱいに笑っていました。
この家族写真を拝見して、改めて私は発達障害を治すこと以上に、家族の笑顔、幸せな時間を作るお手伝いがしたいんだな、と感じました。


お金はなくなるし、モノは壊れる。
親だっていつまでも生きているわけではない。
この社会だって、このままの状況が続いていくとも限らない。
だけれども、発達したことと、学んだこと、そしてきらめく思い出は一生消えることはない。
子育て、発達援助を通して、今よりも家族みんなで幸せになりましょうね!




☆『医者が教えてくれない発達障害の治り方』のご紹介☆

まえがき(浅見淳子)

第一章 診断されると本当にいいことあるの?
〇医者は誤ることはあるけど謝ることはない
〇早期診断→特別支援教育のオススメルートは基本片道切符
〇八歳までは障害名(仮)でよいはず
〇その遅れは八歳以降も続きますか?
〇未発達とは、何が育っていないのか?
〇就学先は五歳~六歳の発達状況で決められてしまうという現実
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのメリット
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのデメリット
〇療育や支援とつながるほど、子育ての時間は減る

第二章 親心活用のススメ
〇親子遊びはたしかに、発達に結びつく
〇変わりゆく発達凸凹のお子さんを持つ家庭の姿
〇学校は頼りにならないと知っておこう
〇安定した土台は生活の中でしか作れない
〇支援者が行うアセスメントには、実はあまり意味がない
〇親が求めているのは「よりよくなるための手がかり」のはず
〇人間は主観の中で生きていく
〇専門家との関係性より親子の関係性の方が大事
〇支援者の粗探しから子どもを守ろう
〇圧倒的な情報量を持っているのは支援者ではなく親

第三章 親心活用アセスメントこそ効果的
〇子育ての世界へ戻ろう
〇その子のペースで遊ぶことの大切さ
〇「発達のヌケ」を見抜けるのは誰か?
〇いわゆる代替療法に手を出してはいけないのか
〇家庭でのアセスメントの利点
1.発達段階が正確にわかる
2.親の観察眼を養える
3.本人のニーズがわかる
4.利点まとめ
〇家庭で子どもの何をみればいいのか
1.発達段階
2.キャラクター
3.流れ
4.親子のニーズの不一致に気を付けよう

第四章 「我が子の強み」をどう発見し、活かすか
〇支援と発達援助、どちらを望んでいますか?
〇子ども自身が自分を育てる方法を知っている
〇親に余裕がないと「トレーニング」になってしまう
〇それぞれの家庭らしさをどう見つけるか
〇親から受け継いだものを大切に、自分に自信を持とう

あとがき(大久保悠)


『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』をどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!ご購入して頂いた皆さまのおかげで二刷になりましたm(__)m


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