【No.1338】絵を描かない、でも文字は読める

人は文字を書き始めると、絵が上達しなくなります。
だから、ヒトの発達を理解している幼稚園、保育園では、就学まで文字の学習をしないのです。
幼児さんの絵は、形を描くというよりも、感覚活動に近い。
自分が目にしたことを、触ったことを、体感したことを、そのまま紙面にぶつける。
一方で文字を覚えたあとの子ども達は、徐々に感覚ではなく、形として、構造としてのものを描くようになるのです。


発達相談において、「うちの子、絵を描かないんです」という話はよく伺います。
そしてそのほとんどの子ども達が企業のロゴがわかったり、数字や文字を読めたりする。
これは完全に脳の発達のバランスが崩れた状態です。
「うちの子、もう文字が読めてすごい!」と思っているところ、申し訳ないのですが、私は水を差すようなお話をしています。


0~2歳までは右脳を中心に発達する。
3~4歳までは左脳を中心に発達する。
そしてまた右脳の発達を中心に、という具合に交互に育っていき、ちょうど就学を迎えるころに文字が理解できる身体と脳の準備が整います。
ですから、「絵が描けない」も心配ですし、「文字を読めちゃう」も心配なのです。


「絵が描けない」背景は、クレヨンを持つ、持ったものを動かす、コントロールする、というような身体的な発達の遅れもあるでしょう。
感覚面の未発達や遅れから、五感を通して体感できないという課題もあるでしょう。
もちろん、背骨の発達に遅れがあれば、目と手の協応、指先のコントロールは難しくなります。
「そもそも絵に興味が持てない」という子ども達は、そもそも他人に興味や意識が持てていないかもしれませんし、その前提となる自分がよくわかっていないのかもしれません。


「文字を書く、読めちゃう」背景は、本来、感覚系である右脳を育てる時期に、十分な感覚刺激がなかったか、反対に左脳を刺激するようなデジタル、人工的な刺激に偏ってしまったか、だといえます。
典型的なのは、赤ちゃん時代(特に0~2歳の間が危険)からのタブレットなどの動画視聴です。
忙しいと、ついつい「静かだから」と与えてしまいがちですが、子どもからしたら楽しんで集中しているのではなく、その強い刺激に圧倒されているだけ。
発達障害といわれる幼児さん達の中で、1~2割はこの早期からの動画視聴で脳の発達が歪んでしまったケースだと感じています。


8歳までは動物として育っていく段階です。
なので、動物の生活から離れれば離れるほど、発達障害ができてきます。
赤ちゃんの運動発達に始まり、五感を育て、自分の身体を認識し、遊びを通して自由自在に動ける身体を育てていく。
認知面の発達でいえば、思いっきり遊びきった子どもが、その体感や感動、記憶をもとに、また想像を入れながら絵を楽しむようになる。
そうやって絵を描いているうちに、就学後の文字を書く手、形を認識する力、文章から心情を想像する力、論理展開の順序性や図形の空間認知の力を育んでいく。
なので、絵を描かないまま、先に文字を覚えちゃった子ども達は、小学校低学年を終えると、一気に勉強が苦しくなるのです。


でも、だからといって、「絵を描かないから、絵を描かせよう」としてもダメです。
大事なのは絵が描きたくなる身体と感覚が育っているか、準備できているか。
まずは動物としての土台を育てること、そして幼児さんは自分の身体を使って遊べるようになることが重要です。
ただ家の中に貼ってある「あいうえお表」や人工的な刺激を減らしていくことは、今すぐにでもできます。
まずは左脳を刺激するような人工的な刺激を減らし、右脳を刺激する自然な刺激を増やしていきましょう。




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