【No.1333】授業中、立ち歩く子が急増して

「またですか」という感じで、授業中、立ち歩く子の相談が続いています。
今は少しでも問題があれば、発達障害にされてしまう時代なので、昔の落ち着きのない子はみんな、「発達相談へ」となってしまいます。
もちろん、この誰でも彼でも発達障害の傾向は何年も前から続いていましたが、最近の傾向ではクラスに一人というレベルじゃないんですね。
先生に話を聞けば、そのような子どもが何名もいる状態とのこと。
「健診がまともにできない」というお医者さんの声。
「ごはん中、立ち歩く子が極端に増えた」という保育士さんの話。
子ども達に明らかな変化が生じているのは確かだと思います。


以前の「立ち歩く子ども達」の相談では、こんなところを確認していました。

①ちゃんと椅子に座れる身体が育っているかな?
②背中の感覚があるかな?
③足や背中に関係する原始反射が残っていないかな?
④内耳が育っているかな?(平衡感覚と聴覚)
⑤愛着形成でヌケがないかな?
⑥呼吸が育っているかな?
⑦口の発達は大丈夫かな?(ぽかん口、噛む力の弱さ、噛み合わせ、口呼吸など)
⑧日常的にタブレットやゲームなど強い刺激に触れていないかな?
⑨脳は左脳と右脳とバランスよく育っているかな?
⑩体軸の育ちは大丈夫かな?

といった感じです。
だいたい合わせ技一本という感じで、複数の要因があるものですが、そういったもので異常性が確認できなければ、心因性や単純に「授業がつまんないんじゃないの?」というように身体→内因⇒環境側の要因へと広げていきます。


しかし最近の幼児さんから小学生に見られる「立ち歩き」の子ども達は、またこれとは違った感じがするんです。
とにかくみんな、幼い。
たぶん、過剰な対策により、子ども同士、人と人との繋がり、関わり合いが極端に減った結果、動物から人へ育つための発達の土台の部分がすっぽり抜け落ちた感じです。
ですから、シルエットが赤ちゃんだし、社会性の部分でも赤ちゃん。
「ここの発達がヌケているから、座り続けられないよな。歩いちゃうよな」ではなく、そもそもが幼くて、「歩きたいから歩いています」みたいなんです。


あとは覚醒状態が乏しい様子もあり、夢遊病みたいに無意識で歩いているような子も見かけます。
「心ここにあらず」と言った感じでしょうか。
この場合、何かエクササイズをしようと思っても、それ以前の話になってしまいます。


そして特に心配になるのが、人に対する反応が弱い子ども達。
人を人と思っていないような感じがあって、先生や大人が注意したり、話しかけたりしても反応が返ってこない子がいるんです。
何度も呼びかけないと注意が向けられなかったり、反応があったと思えば、急に感情を爆発させたり。
先生が優しく注意したとしても、この前は「どうしたの?」と立ち歩いている子に話しかけただけで、突然、怒り出し、「先生に怒られた」と捉えてしまった子の話を聞きました。


すべてがコロナ対策のせいだとは思いませんが、とにかく今までのアセスメント、発達援助ではダメだと思っています。
発達のヌケや未発達が多い子もいたし、重い知的障害を持った子もいましたが、またその子達とは違ったアプローチが必要です。
日々、発達相談をしていて、コロナ対策の悪影響というよりも、この3年間の発達期間が丸々すっぽり抜けちゃった感じがしています。
だから、とにかく身体は育っていても、心身共に赤ちゃんみたいな子が多いのでしょう。


しかし、こういった状況を嘆いていても、何も始まりません。
コロナ騒動を止めることはできなかったとしても、この3年間を取り戻すことができなかったとしても、私のところに相談に来てくれた子ども達の発達を後押しする方法があると思っています。
今、私が実践しているのは、覚醒+発達刺激です。
簡単に言えば、子どもさんの覚醒状態を上げるための関わりをしながら、育てたい刺激を入力していくアプローチです。
単にハイハイを抜かしたから、ハイハイのやり直しをさせるのではなく、そこに覚醒状態を上げていく工夫が必要ということですね。
また成果があったら、みなさんと共有したいと思います!




☆『ポストコロナの発達援助論』のご紹介☆

巻頭漫画
まえがき
第1章 コロナ禍は子ども達の発達に、どういうヌケをもたらしたか?
〇五感を活用しなくなった日本人
〇専門家への丸投げの危険性
〇コロナ禍による子ども達の身体の変化
〇子どもの時間、大人の時間
〇マスク生活の影響
〇手の発達の重要性と感覚刺激とのソーシャルディスタンス
〇戸外での遊びの大切さ
〇手の発達と学ぶ力の発達
〇自粛生活と目・脳の疲労
〇表情が作れないから読みとれない
〇嗅覚の制限 危険が察知できない
〇口の課題
〇やっぱり愛着の問題
〇子ども達が大人になった世界を想像する
〇子どもが生まれてこられない時代
〇子育てという伝統

第二章 コロナ禍後の育て直し
〇発達刺激が奪われたコロナ禍
〇胎児への影響
〇食べ物に注意し内臓を整えていく
〇内臓を育てることもできる
〇三・一一の子どもたちから見る胎児期の愛着障害
〇胎児期の愛着障害を治す

第三章 ヒトとしての育て直し
〇噛む力はうつ伏せで育てよう
〇感覚系は目を閉じて育てよう
〇身体が遊び道具という時期を
〇もう一度、食事について考えてみませんか?
〇食べると食事の違い
〇自己の確立には
〇右脳と左脳の繋がりが自己を統合していく
〇動物としての学習方法
〇神経ネットワーク
〇発達刺激という視点

第四章 マスクを自ら外せる主体性を持とう
〇なぜマスクを自ら外せることが大事なのか
〇快を知る
〇恐怖を、快という感情で小さくしていく

第五章 子どもの「快」を育てる
〇「快」がわかりにくいと、生きづらい
〇快と不快の関係性
〇子どもの快を見抜くポイント
〇自然な表情

第六章 子ども達の「首」に注目しよう
〇自分という軸、つまり背骨(中枢神経)を育てる
〇首が育っていない子に共通する課題
〇なぜ、首が育たない?
〇首が育たない環境要因
〇首が育つとは
〇背骨の過敏さを緩めていく
〇首を育てるには

第七章 親御さんは腹を決め、五感を大切にしましょう
〇子育て中の親御さん達へのメッセージ
〇部屋を片付ける
〇子どもと遊ぶのが苦手だと思う親御さんへ
〇ネットを見ても発達は起きません
〇発達刺激という考え方
〇五感で子どもを見る
〇特に幼児期は一つに絞って後押ししていく

第八章 自由に生きるための発達
〇発達の主体を妨げない存在でありたい
〇大人が育てたいところと子どもが育てたいところは、ほとんど一致しない

あとがき
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巻末漫画

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