2021年3月31日水曜日

【No.1156】発達援助の浸透と、見えてきた課題

先日、書いたブログ(【No.1153】定型発達の子ども達は教える前に自然とできている)について、ご質問やご感想を多数いただきました。
「どうして身体の発達が道具の操作に繋がるのか?」
「やっぱり道具の中には、教えたり、練習しないと使えるようにならないものがあるのでは?」
「補助箸って、どうなんですか?」
など、身体と道具の繋がりについての疑問や感想が多かったです。
ご指摘の通り、練習しないと使えない道具というものがあります。
しかし、ここでいう幼児期に使う道具は、身体が育てば自然と操作できるようになるものばかりです。
何故なら、スプーンも、箸も、はさみも、クレヨンも、すべて『手の延長』だからです。
「手があって道具」ではなく、「指の先に道具が繋がっているイメージ」になります。


ヒトは二足歩行ができるようになり、手での操作が可能になりました。
その手が自由自在に使えるようになるためには、まず体幹の育ちがあり、肩→肘→手首→指(小指から親指へ)の育ちが必要です。
二足歩行が可能になったあとから、手での遊びが始まります。
手でいろんなものを触り、掴み、つまみ、肩から指先に向けた育ちを行うのですが、この育ちのプロセスの中で触れるものは、子どもにとってはすべて遊び道具になります、おもちゃも、リモコンも、オムツも、タオルも。
その遊び道具の中にあるのがスプーンであり、箸であり、ハサミであり、クレヨンなのです。


ですから、肩から指先を育てている段階で操作するものは手遊びの延長であり、手を育てる延長、つまり手の延長として道具があるのです。
小学生くらいになれば、指先までの発達は完成するため、以降使用する道具はまさに私達がイメージする道具になり、手と道具の関係になります。
よって道具の形状や複雑さというよりも、子どもの目線に立ったとき、それは指先まで育てるプロセスで使う手の延長としての道具なのか、手が完成した後の「手と道具」の関係なのか、そっちのほうが理解しやすいと思います。
ちなみに補助箸は、「補助がないと使えない手の発達段階」なので、補助箸が使えるようになったからといって一般的な箸が使えるようにはならないですね。
ただ定型発達の子ども達は補助箸を使っている間に、自然と遊びを通して指が育ちますので、結果的に箸が使えるようになります。
「補助箸を使ったから箸が使えるようになった」という大人の自己満足のためには良いかもしれませんね。


また絵に関して、「うちの子、絵を描きたがらない」というご相談もありました。
単純に「絵を描く」といっても、そこにはいろいろな発達状態、心身の状態が関わってきますので、子どもさんの状態を確認しなければ「なぜ、描こうとしないのか」がわかりません。
だけれども、案外、盲点というか、これも大事な発達ではあるのですが、子どもさんに「絵を描かせていないか?」ということがあります。
画用紙とクレヨンを用意し、その前に子どもを座らせたあと、「さあ、描いて」みたいな(笑)
描けって言われて絵を描くのは、年長さんか、小学生です。
つまり、幼児さんは描けと言われても描かないのが普通です。


1歳代の子は、遊び道具としてのペンを持つと、どこでもここでも楽しそうに腕を動かし、なぐり描きをします。
それは目で見て変化を楽しんでいるのです。
自分の意思で変化を生じさせることのできる喜びと楽しさ。
ですから、この発達段階で絵を楽しめないというのは、変化に気づくだけの感覚や認知の面での発達が進んでいないか、周りから「描け」と言われ続けて絵自体が嫌になったか。


そして次の段階、2歳前後の子は、対話としての絵を描きます。
グルグルや点々を描き、お母さんを見る。
お母さんは笑顔になったり、「これは"おにぎり"かな」などとリアクションをする。
そうやって対話、コミュニケーションとしての絵を描くのです。
なので、言葉の遅れ、特にやりとりの段階まで発達が進んでいない子は、上記の「なぐり描き」の段階以前に留まっているので、なかなか絵を描くモチベーションが高まらないのです。


で、次の段階は意味を持った絵を描く段階です。
グルグルっと丸を描いたあと、「これは"お父さん"」と言ったり、「次は"お母さん"を描く」といって丸を描いたりします。
この段階は、言葉の発達、概念の発達が必要になりますので、胎児期から言葉以前の段階までの発達がある程度完成している必要があり、かつそれ以降の認知の面での発達も必要になってきます。
ですから、子どもさんの発達を見る上で、何か形は描けなくても、こういった意味を持った絵を描くようになったかどうか、を大事なポイントとして私は確認するようにしています。


そして上記の発達段階は、だいたい1歳から2歳・3歳になりますが、この時期の子ども、内面の発達的にいうと、この時期特有の社会性の発達があります。
それは同じ目線の子ども、「遊び仲間」としての社会性が育つ時期です。
この時期の子どもは、同じくらいの子どもがいるとすぐにそばにいき、同じような行動をします。
公園に行けば、見ず知らずの子でも関わらず、どんどんそばにいき、その子が滑り台を滑れば自分も滑り、その子が石を拾いだしたら自分も石を拾う。
その子が「ママ」と自分の親のところに行けば、自分の親ではないその子の親のところに一緒に駆け寄っていく。
こういった同じ目線と同調する行動が強い喜び、行動の動機付けになる時期です。


なので、幼児期の子どもさんに「絵を描きなさい」はダメ。
「絵を描きなさい」ではなく、一緒に描く、または同じ目線で、同じ方を向き、共に絵を描く活動の中に身をおくことが必要です。
結構、発達相談でも「耳が痛いです」と言われるのですが、遊ばせている親御さん、遊んでいるのを見ている親御さんがいますね。
上記のように、幼児期のお子さん、特に3歳くらいまでの子ども達は一緒に遊ぶ、一緒に活動することが大事です。
それが彼らの発達段階なので。
しかも、発達障害のお子さんなら、やはり胎児期から2歳くらいまでの間に発達のヌケがありますので、たとえ5歳、6歳、小学生だったとしても、「共に遊ぶ」段階が必要な場合が多々あるのです。
ちょうど2歳、3歳の頃は、発達のヌケ、遅れが大きく、そうやって他人と共に遊ぶことができなかった、他人に興味すらなかった、というお子さんがいますね。
だったら、やっぱりその時期の発達のヌケ、その運動発達をやり直すだけではなく、その時期の子ども達が欲している「共に遊ぶ」もやらなきゃダメです。


「ハイハイ、どうやってますか?」と尋ねれば、「ここの廊下を使って、毎朝3往復させている」なんていうこたえが返ってきます。
でも、それって発達のヌケを"育て"ているのではなく、"トレーニング"になっていませんかね。
トレーニングでは発達のヌケは埋まっていかないと思いますよ。
親御さんから見れば、「発達のヌケを育てている」になるかもしれませんが、子どもさんからすれば、「早く日課のハイハイを終わらそう」というような意欲の伴わないただのルーティンワークになっているかもしれません。
神経発達には自主性と意欲が必須条件です。
拝見すると、「それって"廊下を四つん這いで移動する"練習にしかなっていないですよ」と言ってしまうことが少なくありません。
ハイハイを育て直したいなら、親御さんも一緒にハイハイしなきゃ。


明日から新年度が始まります。
改めて「発達のヌケを育てる」とはどういうことなのか、「神経発達を促す」にはどういうことなのか、を考えてみると良いかもしれません。
今年度も全国各地に訪問させていただきました。
「発達援助」は浸透したけれども、大事なところがヌケているようにも感じましたので、私も意識してその辺りを伝えていきたいと考えております。




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