【No.1155】だましだましやっている

もうすっかり雪が溶けましたので、7月の函館マラソンに向けて外ランを始めています。
冬の間はずっとジムだったので、久しぶりの外ランは気持ちがいいですね。
私の課題は筋力で走ってしまう癖があるので、今期は身体の重心を少し前目にして推進力をつかって走るフォームを目指しています。
そのため、冬のジムでは体幹トレーニングをみっちりやり、シックスパッド(仮)くらいまで腹筋が仕上がりました(笑)
あとは月間200㎞をノルマにし、できれば250㎞を目指して本番を迎えたいと思っています。


子どもさんの中には、今期私が目指している重心移動を使って走っている子がいて、「教えてください、師匠!」と思うことがあります。
しかし、この重心を移動させる走りには別の見方があって、「重心移動を使わなければ、走れない」という場合があるのです。
家庭訪問をすると、家の中を走って移動している子どもさんがいます。
一見すると、「元気がある子」「運動発達的には問題ない子」のように見えますが、しっかり確認すると、運動発達のヌケがあることがわかります。
走ってはいるけれども、「二足歩行ができる段階にない」といった感じです。


いま、ハイハイを抜かす子ども達が多くいます。
そういった子ども達はハイハイをせずに、すぐに立って歩いてしまっています。
で、走るようにもなる。
だけれども、上半身と下半身の連動が見られなかったり、腰がそのまま足だけで走っていたりと、「なんとなく走り方がおかしいよね」という場合があります。
「うちの子、走ることはできるんだけれども、なんか走り方がヘン」と相談される親御さんは少なくありません。
療育機関などに相談すると、「走れているから、問題ないですよ、お母さん」とか言われてしまう。


赤ちゃん時代からの運動発達の積み重ねが、走る姿に表れます。
ですから、その走る姿に違和感があるとしたら、それは運動発達のどこかにヌケがあるということです。
もちろん、それは走るだけに留まらず、認知やコミュニケーションの発達にも影響を及ぼします。
「ちゃんと走れない」というのはそれ自体が問題なのです。
単に「走れているからいい」「走り方は個性」ではありません。
先ほど紹介した重心を移動させて走っている子は、重心移動をしなければ走れない子だといえます。
つまり、「しっかり立つ」「しっかり歩く」が完成していないからこそ、できないからこそ、重心移動を使って走っている、というか移動しているのです。


私達支援者の仕事は、いわゆるこの「だましだまし」やっている行動を見抜くことでもあります。
「運動発達は、一通りちゃんとやっていました」と言われる親御さんもいますが、実際、子どもさんを見ますと、明らかに「ハイハイ、抜かしたよね」「寝がえり、やってないよね」という子がいます。
でも、親御さんが嘘をついているわけでもなく、子どもさんがやらなかったわけでもないのです。


一つひとつの運動発達には、定型のやり方と大事なポイントがあります。
そういった定型のやり方と違った場合が多いですが、勢いでやってしまったパターンも少なくないような気がします。
たとえば、寝返りは下半身主導で捻ることが大事なのですが、上半身の勢い、または足の反動を使ってくるっと回っていた。
またハイハイをするとき、「常に全力で移動していた」という子の中には、できない動きをカバーするために重心移動や勢いを使っていた子もいて、そういう子は動きのパターンが少ないという特徴があります。
早くハイハイをすることもあれば、ゆっくりハイハイをすること、途中で止まったり、方向転換をしたり。
そういった強弱、変化がない子、きちんと静止できない子は、ハイハイをしていたとしても、だましだましやっていたとも考えられるのです。


小学生の子どもさんもそうですが、ダダダッとやってしまう行動、活動は、案外、きちんとできず、苦手なことが多いものです。
反対に、ゆっくりできること、ゆっくりハイハイすることなどは、それだけハイハイに動員させる運動一つ一つがしっかり行えるということでもあります(つまり、バリエーションが大事!)。
昔から発達障害の分野においては、出生時の様子、また運動発達についてはしつこく確認されてきましたので、そこに意識や注目があったのがわかります。
でも時々、「運動発達の中で短いもの、抜かしたものがあったとしても問題ない」というような医師や支援者もいます。
その根拠に、「運動発達をやっていた子の中にも、発達障害の子ども達がいる」というものが挙げられます。


しかし、ここまで読んでくださった皆様はお分かりの通り、そのやり方が重要なのです。
表現が良いかどうかはわからないまま使ってきましたが、子ども達の運動、活動、遊びの中には、案外「だましだましやっている」ものが少なくありません。
私もこの仕事をするようになって、「赤ちゃん時代、ちゃんと運動発達をやった」という子の中に、運動発達のヌケがあることがわかりました。
そして乳幼児の発達を勉強していく中で、ヒトの運動発達にはそれぞれやり方とポイントがあり、それはその前段階や周辺の発達と繋がっていることがわかったのです。
寝返りをするのに勢いをつけなくてはならなかった理由が、足の親指、背骨、首の発達や背中や皮膚の感覚、原始反射の統合も影響するように。


親御さんが子どもさんの運動発達を確認する際のポイントとして、素早くできているような運動でも、「勢いや反動でやっていないか?」「その運動は、一本調子ではないか?特にゆっくり動くことができるか?」を確認してみると、より深く発達を捉えることができるかもしれません。
この前も、「赤ちゃんのとき、めちゃくちゃハイハイが早かったんですよ」といっていた小学生の子に、「おじさんと一緒にハイハイしてみよう」と言ったら、手足をどう動かしていいか分からず、立ち竦んでしまっていたことがありました。
当時のビデオを拝見すると、やっぱり勢いでダダダッとハイハイしていた感じでした。
普通級で学んでいるけれども、なんかうまくいかない、勉強がしんどい、というお子さんでしたので、もう一度、腹這いから膝つきばい、高這いと育てなおすことを提案してきました。
その子がどのように変わるか、また成長されるか楽しみです。




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