2021年3月24日水曜日

【No.1152】専門化すればするほど、切り捨てられるものが増えていく

2019年がピークで、徐々にブームが去った感じがする栄養療法。
発達相談の中でも話題になることが多かったのが、昨年までといった感じです。
だいたい皆さん、一通り栄養療法をやってみて、効果があったご家族もいれば、そうでもなかった感じのご家族もいますね。


この2年間で気になったこととしましては、特に幼児期のお子さんですが、親御さんが栄養療法に凝り過ぎて、数値が高くなってしまった子が少なからずいた、ということです。
もちろん、数値的な問題もありますが、何よりも内臓、消化機能も育てる時期でもありますので、そんな一粒で高栄養素のものを食べ続けていたら、そっちのほうに身体が適応してしまわないか、と心配になります。
人類というか、動物全般がそうだと思うのですが、何を食べ消化吸収するかによって身体の構造が変わり、神経発達が進んできたのです。
20万年前に誕生したホモサピエンスの子ども達は、硬い肉をカミカミし、硬い木の実をかじり、それに応じて口と内臓、消化器系が発達していったのでしょう。


またこんなお話も、よく伺いました。
「みなさん、栄養療法でかなり効果が出てきているみたいだけれども、うちの子は…」という内容です。
これはBSやCSとかでやっている健康食品のCMと同じです。
「たった1粒で、こんなに痩せました!」
たった1粒でも体内になにかを摂取して体重が痩せるなら、それは毒です(笑)
ふつう、食べたら増えますね、体重は。
だから、もちろん、実際にそのものを摂取するとは思うのですが、他にも食事の調整をしたり、運動をしたりしているんですね。
食事はそのサプリしか摂らない、あと運動もしない、ただ家で横になっているだけ、で痩せるのならスーパーフードかもしれませんが、そんなわけはありません。
それと同じで「栄養療法が効果あった!」というご家庭は、他にも運動したり、一緒に遊んだり、メディア視聴を制限したり、いろいろやっているんですね。
栄養素は発達の条件であって、ただ摂れば勝手に神経発達が始まるわけはありません。
しかも、食事で十分な栄養が摂れている子に、さらにプラスしてもその分、発達が加速することはないでしょう。
良いというアイディアにも範囲と限界があるものです。


範囲と限界で言えば、感覚統合や作業療法、運動療法というものにも当然ありますね。
まあ、私が勉強した範囲、私があちこちで伺った範囲でお話ししますと、どうも「触覚」「固有覚」「平衡感覚」に偏り過ぎている感じです。
たとえば、静かに椅子に座るのが難しいお子さんがいるとします。
こういった専門の先生から見れば、「感覚を欲しているのかな」「平衡感覚を刺激するような大きな動きを」と、トランポリンなどの運動を勧めたりするかもしれませんが、実際、ご家庭にトランポリンがあって、毎日跳んで刺激してお子さんがいますね。
でも、ほとんど変化がない。


で、私が訪問しお子さんの様子を拝見すれば、前庭感覚の未発達があるのはあるけれども、それだけが課題じゃないことがわかるんです。
身体の軸が育っていないために姿勢保持が難しい子。
胎児期の愛着障害のために、世の中に対する身体的な不安があり、ソワソワしてしまう子。
ハイハイのヌケにより、重力との付き合い方が身についていない子。
原始反射があって、過剰な防衛反応が発動してしまっている子。
右脳と左脳の未分化などによる勉強できる身体の準備が整っていない子。
身体に力が入るばかりで、弛めることができない子。
聴覚の未発達から言葉をキャッチできない子。
背骨の過敏さから背もたれが気になって仕方がない子。
足の指の未発達で定まらない子。
腰や腎臓、排泄系の未発達で、落ち着くことができない子。
トラウマ、フラッシュバックが生じている子。
単にその場がつまらない子、単に(年齢的に)幼いだけの子。
お腹が空いている子、出かける前に嫌なことがあった子。
快食、快眠、快便、そして基本的な生活習慣が確立できていない子。
パッと思いついただけで、これだけありますし、もちろん、単独の要因なんてことはなく、複数の要因が複雑に強弱をつけて絡み合い、そして表に現れているのです。


このような発達という複雑系のものを何か一つの専門、領域で解釈しようというのは無理があります。
ですから、専門化していけばいくほど、その守備範囲は狭くなり、その他の要因が切り捨てられる可能性が出ます。
特定の療法にこだわる親御さんが多いですが、単にその療法の限界だけではなく、他の可能性が排除されることのほうが、育っていかない、結局、いつまでも卒業できず何年も通い続けている姿に繋がっていると思うのです。


私の事業が家庭訪問を基本としているのは、私が専門家ではないからです。
何か特定の領域から見ているのではないので、どうしても実際に生活してる様子、遊んでいる様子を見て、いろんな要因を確認していく必要があるのです。
そしてその子の発達の物語を綴っていく。
でも、だからといって、すべての要因をお話はしていません。
要因が複雑に絡み合っているということは、一つ発達すればそれに引っ張られるようにして変化が生じていきます。
特に胎児期の発達に近いければ近いヌケから育てていくことが、全体的な発達に繋がります。


私の個人的な考えではありますが、「ゆっくりでも発達成長している子は、今やっている介入の効果はほとんどない」と思っています。
たとえば、Aという方法を行っていて、子どもが発達、成長している。
でも、それは時間の経過とともに発達、成長しているだけだと考えられます。
発達に必要なものの一番は時間だと思うからです。
極端なことを言えば、何も特別なことをしなくても、子どもは時間とともに発達、成長するものです。
ですから、私の仕事の評価としては、発達が加速したか、停滞していた発達が動き出したか。
ゆっくり発達、成長していた子が、私の発達相談後も同じペースで発達、成長しているとしたら、それは私の実力不足、仕事の質が悪かったのです。


まとめると、エラソーに言っている専門家よりも、家庭が重要。
だって、専門家が見ている範囲は狭いから。
家庭は胎児期から今までのすべてを見ている。
細分化すればするほど、捨てられる可能性が増えるということです。
そして、そんな細部のものをいじくったとしても、大きな変化は生じません。
むしろ、介入の効果というよりも、時間が経過したため、時間が解決した、ということのほうがずっと多いです。
だいたいの課題は、時間が解決すると思ったほうが良いと思います。
焦っていろいろやるのが、却って子どもの混乱、発達の妨げになることもあるからです。
何よりも、子ども自身が発達する主体ですから、本人が伸びやかに育つ環境を用意したほうが良いですね。
それには、どんと家族が構えること。
そして子どもが楽しい、笑顔になる時間を増やしていくこと。
子どもの遊び、特に名も無き遊びをしている時間こそ、自ら発達のヌケを育て直すときですから。




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