【No.1267】焦った方が良いとき、悪いとき
開業5年目くらいから北海道外の出張の依頼をいただくようになりました。
最初はいたずらか、冷やかしかなんて思っていたくらいで(笑)、「本当に良いんですか?」「函館からだと飛行機代とホテル代が結構かかりますよ」なんて言って何度も確認をしていました。
当時を振り返ると、「ひと家族のために」でカバン一つ持って出かけていたものです。
親御さんの熱い思いに応えたい、子ども達が少しでも治っていけるのなら全力で頑張りたい、そんな感じでした。
近頃では出張の予定が決まり、アナウンスすると、すぐにお問い合わせをいただけるようになりました。
本当にありがたいことです。
それだけ日頃から情報をチェックしている親御さん達が多いということでしょう。
子ども時代の一日はとても貴重なものです。
なので、「そんなにすぐに出張してもらえるんですか!?」と驚かれることもありますが、とくに8歳以下の子どもさん達の場合には、できるだけ早くお会いできるように日程調整をしています。
8歳を過ぎると伸びなくなるわけではありませんが、やはり根っこから治していくには神経発達が盛んな時期に始めたほうが良いですね。
こんな風に書くと、焦ってしまう方達がいらっしゃると思います。
しかし私は、焦ったほうが良いとも考えているのです。
基本的には「何かをしたから治った」というよりも、時間の経過とともに治っていったというのが真実だと思います。
神経発達はひと足飛びにはいかないもので、ある一日、頑張ったからといって神経の繋がりが生じるわけではありません。
コツコツと継続していくことで、同じ神経回路を刺激が通り続け、「この神経、ネットワークは必要なものだ」ということになっていくのです。
なので、週に1回とか、月に1回とか、スペシャルな先生に施術を受けたからといって何かが定着するわけではありません。
自閉症や発達障害の子ども達の脳内では、シナプスの刈り込みが"少ない"ことが問題とされていて、それはよく使う神経回路とそうではない神経回路の違いが明確ではない、とも言い換えることができます。
つまり、神経発達には時間がかかるため、早く始めるに越したことがないのです。
しかしここで注意しなければならないのは、「なにを始めるか?」になります。
たとえば、スプーンが持てない子に、いくらスプーンを持たせてもほとんど意味がありません。
スプーンが持てる手・指に育てなければなりません。
そのためには手づかみ食べをやり切ってもらうことが必要ですし、水遊びや泥遊び、さらにいえば、四つん這いの姿勢になるといったことも必要です。
もし四つん這いの姿勢になっても、手の指が丸まっているのなら、その手がパッと開くようなマッサージ、アプローチも必要でしょう。
スプーンが持てない子にスプーンを持たせて練習させるのは、表面だけ見た対症療法です。
できるだけその子の課題の根っこ(胎児期に近い発達)から始めることが重要です。
発達の遅れという状態、現象は、今の生活、家庭、親子の関係性の中で生じているといえます。
ですから、その中の何かを変える必要があって、それは早いに越したことがないのです。
ただし、目の前に見えている課題を解決しようとしてしまうと対処療法になってしまい、手数は増えるし、治っていないし、という悪循環にはまります。
根っこから治っていけば、その後、どんな状況になっても揺らぎませんし、後戻りもしません。
それに土台である根っこから治っていくと、それ以降の発達全般に良い影響を及ぼしていきます。
対処療法が基本である今の特別支援においては、一度始めた支援はやめていくよりも、盛っていく方向へ進み続けるのと一緒になります。
神経発達には時間が必要なため、できれば神経発達が最も盛んな8歳までの子ども達は、一日でも早く始めたほうが良いと思います。
また発達に遅れている状況、環境を少しでも早く変えることは必要でしょう。
一方で焦ってしまい、とにかく目に見えている課題をどうにかしようとすると、却って解決から遠のいていきますし、「とにかくあれもこれも」と盛ってしまうと、子ども達には刺激が強すぎて参ってしまう場合もあります。
植物に水や肥料を与えすぎると枯れるように、消化不良を起こしている子どもさんも少なからず見受けられます。
強すぎる刺激に対して子ども達は、消化不良を起こすか、右から左に聞き流すか、パターン学習のように形だけやったふりをするか、で分かれます。
発達の遅れに気がついたら、すぐに動きだしたほうが良いですね。
そして「これだ」という根っこを掴んだら、あとはじっくり時間をかけて子ども自身が育っていくのを後押ししつつ、見守っていく。
発達の主体は子ども自身ですので、育て始めてから周りが焦っても、却って本人の心地良い育ちを妨げてしまう危険性があります。
我が子を想うがゆえの焦りだとは思いますが、焦るポイントのコツを掴んでいくことが親として育つことにもなると思っています。
☆『医者が教えてくれない発達障害の治り方』のご紹介☆
まえがき(浅見淳子)
第一章 診断されると本当にいいことあるの?
〇医者は誤ることはあるけど謝ることはない
〇早期診断→特別支援教育のオススメルートは基本片道切符
〇八歳までは障害名(仮)でよいはず
〇その遅れは八歳以降も続きますか?
〇未発達とは、何が育っていないのか?
〇就学先は五歳~六歳の発達状況で決められてしまうという現実
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのメリット
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのデメリット
〇療育や支援とつながるほど、子育ての時間は減る
第二章 親心活用のススメ
〇親子遊びはたしかに、発達に結びつく
〇変わりゆく発達凸凹のお子さんを持つ家庭の姿
〇学校は頼りにならないと知っておこう
〇安定した土台は生活の中でしか作れない
〇支援者が行うアセスメントには、実はあまり意味がない
〇親が求めているのは「よりよくなるための手がかり」のはず
〇人間は主観の中で生きていく
〇専門家との関係性より親子の関係性の方が大事
〇支援者の粗探しから子どもを守ろう
〇圧倒的な情報量を持っているのは支援者ではなく親
第三章 親心活用アセスメントこそ効果的
〇子育ての世界へ戻ろう
〇その子のペースで遊ぶことの大切さ
〇「発達のヌケ」を見抜けるのは誰か?
〇いわゆる代替療法に手を出してはいけないのか
〇家庭でのアセスメントの利点
1.発達段階が正確にわかる
2.親の観察眼を養える
3.本人のニーズがわかる
4.利点まとめ
〇家庭で子どもの何をみればいいのか
1.発達段階
2.キャラクター
3.流れ
4.親子のニーズの不一致に気を付けよう
第四章 「我が子の強み」をどう発見し、活かすか
〇支援と発達援助、どちらを望んでいますか?
〇子ども自身が自分を育てる方法を知っている
〇親に余裕がないと「トレーニング」になってしまう
〇それぞれの家庭らしさをどう見つけるか
〇親から受け継いだものを大切に、自分に自信を持とう
あとがき(大久保悠)
『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』をどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!ご購入して頂いた皆さまのおかげで二刷になりましたm(__)m
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