この夏のテーマは?一つに絞るとして

基本的に一発勝負ですので、伝えられることはすべて、お教えできることはすべて、という気持ちで仕事をしています。
さらに、私は早口ですし、頭の中に浮かんだこと、連想したことを次々にしゃべるので、どうしても情報量が多くなってしまいます。
ここが私の課題でもあります。


ですから、情報を受け取った親御さんが、「これもやろう」「あれもやろう」と思いがちになります。
これは、メール相談でも同じでし、ブログを読んでくださっている方からも言われることがあります。
だからこそ、私は必ず次のことを伝えるようにしています。
「どれか一つをやってください」「全部を一気にやる必要はないです」と。


どれもこれもではなく、一つを、というのには理由があります。
別に親御さんが大変だから、プレッシャーになるから、という理由ではなく。
あくまで、子どもさんを中心に考えたとき、一つに絞って、やり切る方が重要だと考えるのです。


よくたとえに出すのが、赤ちゃんの発達の様子です。
赤ちゃんは、寝ても覚めても、一つのことをやり続ける時期があります。
起きている間はずっとハイハイして動きまわっている。
疲れたら寝て、また起きたらハイハイをする。
そうやって、一つの発達課題をやりきったあと、ある日突然、ハイハイをやらなくなり、次の発達課題へと向かっていく。
そうやって、一つのことを寝ても覚めてもやりきるのが、自然な発達の姿だといえるのです。
ですから、あれもこれもではなく、本人が今、やりたいこと、育てたいことを樹分にやり切らせてあげる。
それこそが、自然な発達の姿ですし、言葉以前の発達段階をクリアするポイントだと、私は考えています。


一方で、親御さんにとっても、一つのことに絞って、十分にやり切らせてあげるのは、とても意義のあることだと考えています。
何故なら、バリエーションが生じてくるからです。


例えば、呼吸を育てようと決めます。
そうすると、自然と意識が「呼吸」に集まってきます。
「普通のとき、ちゃんと息が吸えているだろうか?」
「走っているときはどうだろう?」
「寝ているときは?」
「もしかしたら、思いっきり吸うことができていないかも」
「そういえば、飲みこみも弱い」
「じゃあ、噛む回数が多くなるような食事を徐々に入れていくかな」
「放課後、一緒にシャボン玉で遊ぼうかな」
「ストローの太さを大きくしたらどうだろう」
「タピオカが流行っているから、それを飲んだら、吸う練習になるかも」


親御さんが、我が子の一つの発達に目を向けるようになりますと、そこがよく見えてくるようになります。
日常的にも、気になるようになってくる。
親御さん同士で、その一点に関して話題が多くなり、そこから新たな発想が生まれることもあります。
それこそが、バリエーションが生じる、という意味です。


ここでは、一つのことに絞っているように見えますが、実は一つのことにバリエーションをつけているのです。
呼吸を中心に、吸うこと、吐くこと、そのいろんな育て方、という具合に、刺激に幅をもたらしています。
それが、子どもの豊かな発達につながります。
だって、同じハイハイでも、その動きは微妙に異なっているので。
床をハイハイしたり、段差をハイハイしたり、逆走ハイハイをしたり、早くハイハイしたり、ゆっくりハイハイしたり…。
そうやって、赤ちゃんは自分自身でバリエーションをつけながら、存分に一つの発達課題を味わい、育てていくのです。
それは呼吸でも、感覚でも、運動発達でも、同じです。


福岡、広島、ここ1ヶ月くらいに出会ったご家族には、このようなことを提案しています。
「夏休み、一つのテーマに絞って、それを存分に味わい、楽しんでみたらどうでしょうか」と。
私の仕事は、発達の物語を読み解くことであり、どうやったら本来の発達の流れに戻っていくか、をお伝えすること。
それには、ここを育て、あそこを育て、というお話する必要があります。
ですから、それを聞いた親御さんは、「あれもこれも」と思ってしまいます。
でも、実際は、私が挙げた育てた方が良いところよりも、子どもさん自身が育てたいところの方が、何百倍も正しいですし、優先すべき発達だといえます。
子どもは、自分自身で必要な育ちがわかるものですから。


夏休みは、学校がお休みになるからというよりも、夏という季節だからこそ、存分に味わえることがあるのだと思います。
出張して各地に訪問させていただければ、そこの土地土地の環境があり、文化があるのを感じます。
夏祭りの伝統的な太鼓があるのなら、その太鼓を思いっきり練習する夏休みでも良いと思います。
呼吸や感覚、背中を育てるために、とにかく毎日、近くの海で遊ぶ、というのも良いと思います。
子どもの意向、今まさに育てたいと思っている部分と合致すれば、時間を忘れて、時間という概念から解き放たれて、子どもは存分に遊んだり、活動したりするものです。


やりきってから、次の発達段階へ進む。
同じ動き、発達課題であったとしても、そこにはバリエーションがあり、そのバリエーションの豊かさが発達の豊かさに繋がる。
そういった視点で、夏休みを過ごされると、良い時間が過ごせると思います。
この夏のテーマは、なんですか?
子どもさんが、今、育てたい、やりきりたい、存分に味わいたいのはなんでしょうか?

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