就学前の6年間が、生涯学習の土台作り

闇営業はしていないけれども、私も謝らないといけないことがあります。
私はブログ等で、再三「小学校4年生の学力を身につける」と発言しています。
ですから、それを見た親御さんの中には、一生懸命文字を書くことや計算することに取り組まれている方達がいます。


もちろん、勉強すること、教科学習に力を入れることは、とても大事です。
長い間、知的障害があったり、支援級、支援学校に通っていたりしたら、教科学習は二の次、三の次になって、身辺自立と職業訓練が中心となっていました。
まあ、それが中心だったからといって、卒業後、自立する子はほとんどいませんが…。
義務教育の9年間、ずっとひらがなの練習、足し算引き算で終わっていた子ども達も多い時代があったのです。


「自立した生活を送る」「就職して、仕事を続ける」には、ただ身辺スキルを身につければ良いわけでも、働くための体力をつければ良いわけでもありません。
それだけでは不十分。
やはり自立した生活と仕事には、自らの頭で考える力が必要です。
そのためにも、世の中の原理原則を学び、考える為の道具である文字や計算、教科の内容を学ぶ必要があります。
その最低ラインが、小学校4年生の学力ということになるのです。


私のところに相談、依頼をくださる親御さんの中には、「教科学習を頑張っています」と言われる方達がいます。
ですが、お子さんが就学前の場合もあります。
焦る気持ちもわかりますし、きちんと学力をつけさせてあげたいと思うのもわかります。
でも、就学前から教科学習を焦って行う必要はないと思います。


学校に見学に行くこともありますが、そこで感じるのは、学習の土台が育っていない子が多いということです。
今は、幼稚園などで英語や国語、算数の勉強をしている子が多く、小学校入学時で、ある程度の学力を先取りしています。
そういった子ども達は、当然、小学校の授業はわかりますし、テストも100点ばかりです。
でも、きちんと椅子に座れていなかったり、鉛筆が持てなかったり、4教科とその他の教科の差が大きかったりするのです。
集中できる時間が短かったり、午後は疲れてしまって、ボーとしている子もいます。


小学校4年生の学力とは、目安としての表現です。
大事なことは、自分の頭で考えられる力を持つことと、学び続ける姿勢を養うことだと思います。
ですから、そのためにも、教科学習ができる土台の育ちが重要だといえます。


文字の読み書き、計算はできるけれども、文章問題になった途端、まったくできなくなる。
暗記科目は得意だけれども、考える問題、自分の意見をまとめる問題は苦手。
このような子どもさんは、少なくありません。
そして皆さんに共通してみられるのが、数の概念が育っていないこと、右脳&2歳前&言葉を獲得する前の発達にヌケや遅れがあることだといえます。


こういった育ちのヌケや遅れがあると、小学校低学年くらいまでは、授業についていけますが、学年が上がるごとに理解が難しくなっていきます。
授業数が多くなる、授業の内容が多くなる。
そうなれば、基本となる身体が育っていない子は、授業を受け続けること、集中し続けることがしんどくなります。
学校に通う、椅子に座る、授業を受けるに多くのエネルギーを使わざるを得ない子、もともとのエネルギーが不足している子は、学習の方に振り分けができなくなるのです。


同じように、教科学習の土台と言いますか、考えることの土台、基礎は、概念理解です。
その概念を養っていくのは、就学前。
まずは、モノを数えることを通しての概念学習。
身の回りにあるいろんな概念を体験を通して理解していく。
そして、友達と遊びながら、ルールや人間関係等、さらに高度な概念を養っていく。
そういった積み重ねが、就学後の教科学習とつながり、真の意味での学びが始まるのです。


自由で、自立した生活、人生を送るためには、生涯を通して、学び続ける姿勢、考える力が必要だといえます。
そのためには学校生活の中で、教科学習を通して、培っていく必要があります。
で、その前段階として、就学前までに概念と土台である身体を育てておくのです。
概念と身体を育てる方法は、ただ一つ。
思いっきり身体全体を使って遊び、いろんなことを体験することです。
やはり子ども時代に思いっきり遊んだ子は、高校生、大学生、大人になっても、学び続けるし、成長し続けます。
だって、生涯に渡って学び続ける土台を子ども時代にしっかり培っているから。


本来、教科学習は就学後から始めて遅くないといいますか、それが自然な発達だといえます。
それなのに、これから秋にかけて行われる就学相談では、「文字が書けますか?」「計算できますか?」なんて質問がされるのです。
それで、「できません」と答えれば、「じゃあ、支援級」となってしまうことすらある。
まったくもって、ナンセンスだといえます。
就学前に字が書けて、計算ができる前提なら、小学校1年生の授業はまるまる必要なくなるわけです。
だって、普通級では、一年間かけて、ひらがなとカタカナ、漢字、足し算引き算を学ぶのですから。


こういった話、情報が、親御さん達を必要以上に焦らすのだと感じます。
生涯を通して、学び続ける人に育ってもらうためには、子ども時代の遊びと体験が必要です。
だからこそ、親子で、家族で、思いっきり全身を使って遊んでほしい、と思うのです。
言葉以前の発達が育つ→思いっきり遊ぶ→教科学習→考える力→学び続ける姿勢が自然な流れ。
発達の遅れがある子、ない子に関わらず、いきなり「教科学習」が、土台が育つ前の「教科学習」が多いような気がします。


今、自立して生活している若者たちを見ますと、就学時、まったく国語も、算数もできなかった人もいますし、小学校高学年、中学生くらいから急に勉強が分かるようになり、4年生の学力を身に付けた人もいます。
発達の土台がしっかりすると、ヌケや遅れが埋まってくると、いつからでも教科学習は身についていく印象です。
ですから、就学前の子ども達は特に、言葉以前の発達を育て直し、発達のヌケを埋めていくこと。
思いっきり遊び、いろんな体験をしていくことが大事だと思います。


就学は、学び始めるスタートです。
ゴールは死ぬとき。
ヒトは、生涯学び続け、発達、成長し続けるもの。
今の子ども達は、100年時代の人達。
学び続ける土台作りは、たった6年しかありません。
あとの94年間、ずっと学び続ける。
小学校4年生の学力は、年齢がいくつになろうとも、身に付ければ良いのです。

コメント

このブログの人気の投稿

【No.1358】体軸が育つ前の子と、育った後の子

【No.1364】『療育整体』を読んで

【No.1370】それを対症療法にするか、根本療法にするかは、受け手側の問題