教え、育てること

教育という言葉は、「教える」という字と「育てる」という字が並び、成り立っている。
「教える」ことと同様に、「育てる」ことも大切だ、という意味があると私は解釈している。

私は自閉症の人たちの支援に関わるとき、一人ひとりに合わせて教えていくことと同様に、一人ひとりが自らの力で育っていけることについても配慮している。
"育っていけることの配慮"を具体的に書くと、「悩ますこと」と「環境を整えること」になる。

自閉症の人たちは、失敗から学ぶことが苦手なので、支援者が先回りして本人が躓かないようにすることがある。
しかし、そればかりであると、自ら考えることが少なくなる。
ときには、「敢えて悩ませる場面を作り出し、過去の経験や周囲の状況から答えを導き出す」といった自らで考えることも、本人たちが育っていけることにつながる、と思っている。

自閉症の人たちは、周囲の状況や意味を読み取ることが苦手である。
また、周囲の刺激に影響され、学習に注目や集中が向きづらいこともある。
だからこそ「環境を整えること」により、周囲の状況や意味を読み取れるようになったり、学習に集中できるようになったりすることで、自ら学び、育っていけるようにする、ということである。

家庭や学校を一歩出ると、いろいろな物事に対し、自分の頭で考え、対処していくことが多くなる。
すべての物事を側について教えていくわけにはいかない環境である。
日々の学習や生活の中に、少しでも自分で考える場面を入れていくことで、自ら育っていける人間へと成長していく。
教えるだけではなく、自ら育つような状況へ導いていくことも重要である、と私は考えている。

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