【No.1428】頭に雲がかかっている子ども達
「男の子はみんな、ADHD」
たしかに保育園などにいけば、つねに動き回っているし、あちこちで喧嘩しているし、大人の話なんか聞かずに興味が向くままに意識が飛んでいる子も多く見かけます。
だから、「男の子なんか、そんなもんだから、ADHDはインチキ。心配する必要はない」というのもわかります。
「成長するとともに落ち着くんだから」という声も、その通りだと思う。
だけど、今日、私がお伝えしたい話は「やっぱり特別な子育て、発達援助が必要な子もいるよね」ってこと。
精神医療における診断の混乱の原因は、「確認できる症状、言動で診断」ということですね。
その原因は問わない。
なぜ、落ち着きがないのか問わない。
何ポイント以上、何個の項目以上当てはまるかどうかで診断が行われる。
ざっくりいえば、10個当てはまれば〇〇症候群で、9個ならセーフ。
だから、ADHDの診断チェックシートをもって保育園に行けば、多くの子がADHDに当てはまっちゃう。
冒頭の「男の子はみんな、ADHD」という言葉は正しいともいえる。
しかし、発達相談の現場からいえば、もう20年以上、この世界で仕事をしている私からすれば、一言で「ADHD」と言っても、その原因、背景は異なるし、当然、その対処、育て方、発達援助のアプローチは変わってくる。
大きく分けて3つ。
①未発達、発達途中の普通の子
②身体、環境、心理的な影響で落ち着かない子、ボーとして注意散漫な子
③覚醒の状態が低く、治療、アプローチが必要な子
①は、みなさんのご想像通り。
元気な子のほとんどはこのタイプ。
8歳までの脳はまだ本能優位の動物の脳。
あふれ出るエネルギーを運動によって発散しつつ、それが心身の発達に繋がっていく。
野生のサル、ゴリラを見ても、子どもはみんな、喧嘩ばかりしている。
でも、その喧嘩によって人との距離間、関係性を学んでいくのも、大事な社会性の発達。
小さい子が集団になれば、いざこざ、喧嘩が起きるほうが自然なので、それを「問題!キー!」となるほうが問題。
園の先生力量不足と、子どもを大切にしない、許容できない社会に問題がある。
放っとけばいい問題(子どもの成長)を放っとけない大人が薬を飲んだら、って話。
②も、よくある話。
栄養や睡眠不足、生活リズムの乱れ、未確立が子どもの心身の状態に大きな影響を与える。
甘いものを常に食べていれば、血糖値が上昇し、それを下げようとインスリンが放出される。
血糖値の乱降下が落ち着きのなさ、またはボーとしてしまうことにつながるのは当たり前。
強い光刺激、音刺激に長時間触れていれば、頭は強い刺激、つまり、人工的な刺激のほうに適応してしまい、結果的に自然な刺激の中では「刺激不足」となって、自ら刺激を求めて動き回ってしまう。
当然、家庭環境に問題があれば、子どもの心へ影響が現れる。
過去には家族の問題が解決したら、「子どもが落ち着いた」ということもありますね。
①でお話した通り、動物に近い子ども達には、動物が育つ環境から離れてはいけませんね。
で、③が今回の中心の話。
そもそも覚醒状態が低い子がいて、上の空、ボーとしている子がいる。
一方で同じ状態だけれども、自ら動くことで覚醒状態を上げていこうとする子もいる。
常に動き回っていなければ、眠ってしまう、ボーとしてしまう。
貧乏ゆすりをしたり、爪や鉛筆を噛んだり、常に手でモノをいじったり。
これは子ども自身の対処法であり、治療法なこともある。
精神科で処方されるADHDの薬は、成分的に覚せい剤と類似のものがある。
つまり、ADHDの薬を飲んで「落ち着く」「集中できる」というのは、覚せい剤で無理くりハイ状態に覚醒させることで、やっと「落ち着く」「集中できる」と言っているのと同じこと。
それだけ覚醒状態が低い、自分ではどうにもならない、ということです。
ここにこそ、治療や発達援助が必要ではないでしょうか。
「男の子はみんな、ADHD」というのは半分あっていて、半分間違っている。
「成長とともに落ち着く」も同じ。
中には支援、援助対象な子ども達もいるのです。
そういった子ども達は、まず自分で生み出した対処法からアイディアをもらい、育てるべくポイント、機能を明らかにしていきます。
たとえば、「貧乏ゆすり」から「足」「上下運動」「(一定の)リズム」が導き出せれば、ホッピングやダンス、縄跳びなどにつなげていっても良いですね。
同時に根本原因である「なぜ、覚醒状態が低いのか」を明らかにしていき、並行してアプローチ、こっちは”育てて”いくのです。
たまに「片付けられない大人」「仕事がうまくいかない大人」というドキュメンタリー、報道がありますが、その映像から見えてくるのは、覚醒状態の低下ですね。
子どもがみんな、ADHDなら、それが未発達であり、成長の一過程なら問題ないし、放っておいてOK。
だけど、このように大人になっても症状が残っている人がいるというのは、根本的な問題を抱えている人も中にはいる、ということでしょう。
そういった大人たちからは頭に雲がかかっている感じが伝わってきますね。
頭に雲がかかっている子ども達もいることを皆さんにも知ってもらいたいと思い、今日はこの話題にしました。
「ADHDかも」と思われている親御さんに届けば嬉しいです。
コメント
コメントを投稿