【No.1426】興味関心の狭さ問題

「いつもミニカーを並べている」
「ブロック遊びをもう5年以上続けている」
「アンパンマン以外、興味を示さない」
遊びが変わっていかない。
興味の幅が広がっていかない。
特定のものにしか興味がない。
このような悩みを持たれているご家族は多いと思います。
実際、相談でもあるあるの内容です。


同年代の子ども達は興味の範囲を広げ、遊びもどんどん変わっていく。
そんな姿を見れば、不安に思うのは当然のことです。
だから、興味の幅を広げようと、いろんな場所や活動へ連れていく。
地域のイベントがあれば、そこに参加してみる。
よい習い事がないか、体験会がないか、探して行ってみる。
だけれども反応は変わらず、動物園に行っても、ベンチにミニカーを並べて過ごしている。
だから今度は「ミニカーをもっていかない!」とすると、子どもは家から出ない、家から出てもずっと不機嫌、挙句の果てにパニックになって泣き叫ぶ。
そしてママのメンタルは削られ、「やっぱりうちの子は無理かも」と諦める。
そこに「うちの子、成人した今でもアンパンマンよ」というSNSや先輩ママの声に一時的に癒される。
支援者には「否定するのではなく、受け入れましょう」と言われたり、「アンパンマンをご褒美に、別の活動もやらせて興味を広げましょう」と言われたりする。
で、「興味関心の狭さ」という課題が、「特定の対象に対するこだわり」へと進化する。


興味関心の問題は、パパっと対処できるような話ではないですね。
ご家族の様子を聞いても、年単位で時間がかかることが多い。
それはその子の心と、発達(成長)と繋がっている話だから。
やっぱり「育ち」がメインになります。


このブログだけではお伝えできない課題なのでポイントだけ紹介。
まず興味関心が狭いというのが身体、感覚と繋がっていないか。
つまり、身体や感覚の未発達により、狭い範囲でしか気づけていない、捉えられていないかもしれない、ということ。
たとえばブロックとか固くて無機質なものは触った感覚が一定で、ある意味、単純で乏しいから認知できている。
だけど、触覚が育っていないため、花などの植物は崩れやすくて、触れるだけでも多彩な刺激が指から伝わってくるものが認知できない、わからない。
わからないから気づけていなくて、興味が移っていかない、ということもある。
テレビしか見ないか、動画に没頭して過ごしている子も、視覚は育っているけれども、身体が育っていないため、首から上だけで対処するしかないだけかもしれない。
動いて興味の対象まで向かうこと自体がしんどい子もいる。
身の回りのもの、刺激に気づけていますか?
そもそも気付けるだけの身体と感覚が育っていますか、準備できていますか?
という話が一つ。


もう一つのポイントは、心の話。
その遊び、対象と向き合っていること自体が癒しになっていないでしょうか。
それをすることで生活が成り立っていませんか、学校や保育園に行く力になっていませんか。
発達に凸凹、課題がある子の中には不安が強い子が多い。
その不安を癒すために、その不安に立ち向かうために敢えて同じ活動、遊び、対象と過ごしていることがあります。
その子にとって今、必要だからそれをやっている、ということもあります。
こだわるものは「癒しのモノ」
こだわるものは「お守り」
ということもあるのです。


上記のポイントを踏まえつつ、興味関心を広げるためにどのような発達援助を行っていくか。
それはその特定のモノ、活動自体の幅を広げていく。
ミニカーを並べるのなら、ミニカーの色を変える、車種を変える、本や写真など抽象的なものへと誘っていく。
その子がタイヤが回ることに癒しを求めているのなら、回る系で広げていっても良い。
電車の車輪が回る、扇風機が回る、駒が回る、自分が回るだっていい。
ブロックを並べる子なら、ブロックを積むこと、形を作ることに誘うのも良いもしれない。
もしかして、そのプラスチックの材質が好みなら、プラスチックで作られたもので広げても良いし、近い材質のモノを少しずつ提供して触れられる範囲を広げていくのも良い。


興味関心が狭いというのは悩みかもしれませんが、大きな子育てのヒントだといえます。
その対象のどこに、なににその子の興味関心が注がれているのか。
きっとその興味関心は、子どもさん本人にとってはとても必要な刺激だといえるのでしょう。
子ども達が教えてくれるそのモノの”ツボ”を探してみましょう。
きっとそこから彼らの世界が広がっていくはずです。




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