【No.1237】コロナ禍を経て発達援助も変わらなければならない
昨日のブログを読んでくださった方から感想を頂戴しました。
読んでいて苦しかったけれども、その苦しさを辿っていくと、自分自身が目を背けようとしていたところだった。
発達障害はこの子にあると思っていたけれども、私とも繋がっていた、と。
実はこのような感想をおっしゃる方は少なくなく、発達相談後にこういったメールをくださる方がいらっしゃいます。
このような親御さん、家庭を含めた環境要因については、長年タブーとされてきました。
しかし根っこから育ち、治っていくには、どうしても避けては通れないところになります。
ですから、私の仕事の中で、一対一のご家族しかいない状況でじっくりお話を伺いながら、伝えていくようにしていました。
ただ今回の『ポストコロナの発達援助論』の執筆をきっかけに心境の変化が生じたのです。
発達のヌケや遅れの育て直し方、また愛着障害や知的障害の治っていき方については、既に花風社さんの著書、著者の方たちの知見から明らかになっています。
あとはやるかどうか、我が子に応用できるかどうか、どこにヌケや未発達があるかが捉えられるかどうかだと思いますし、実際に元発達障害の若者たち、子ども達がたくさんいらっしゃいます。
アメリカでも「全体の5%くらいは困難なケース」と20年前くらいから言われていましたし、私の感覚からいっても大部分の子ども達は治っていける方達だと思います。
なので、私の中では「治る」ことに特別な感情を持たなくなり、自然な発達過程だと思うようになったのです。
コロナ騒動も2年が経ち、世の中の空気もオミクロンが終息すれば、徐々に以前のような生活に戻る、ゴールはもうすぐそこまで、といった感じがします。
しかし本当に2019年のような日常が戻ってくるでしょうか。
私はまったくそのようには思えません。
自粛生活により高齢者の認知機能の低下、筋力、運動能力の低下が顕著になり、要介護者を増やすでしょう。
その急増した要介護者を誰が支援、サポートするのでしょうか。
今でも国家の支出の中で多くの割合を占めている高齢者の介護や医療にかかわるお金は誰が負担するのでしょうか。
現役世代、とくに若い世代の就職難はますます悪化し、また景気の悪化は治安の悪化を招くことでしょう。
外資に買い取られた企業は安い労働力として外国人をどんどん入れてきます。
これまた治安の悪化の要因になるはずです。
安い賃金で働かされる若者は当然、自立や結婚が難しくなり、それが少子化にさらなる拍車をかけます。
そしてコロナ騒動を人生で最も盛んな神経発達の時期として過ごした乳幼児期の子ども達、心身の自立のために重要な社会生活、集団生活をやり切れずに過ごした若者たちにはその後の人生全体に影響を及ぼすことでしょう。
コロナ以前から、「普通に育つ」ということが難しくなっていました。
私が思うに、どの子も発達障害になる可能性がある中での子育て、となっているような気がします。
あまりにも社会の変化が大き過ぎるのが、現在の子育て世代、子ども達を取り巻く環境だといえます。
そこに今回、ほぼ日本全国平等に「コロナ禍のヌケ」という環境要因が加わりました。
発達相談の内容の変化、子ども達の様子を見ていると、とんでもないことが起きていると感じらざるを得ないのです。
うまく表現できないのですが、動物から離れた部分で生じたのが今までの発達障害のイメージです。
一方でコロナ禍では、人工的な非自然な環境に無理やり適応させられたことによって生じる発達障害という感じがします。
それまでの700万年の歴史、ホモサピエンスとしての20万年の歴史、日本に住む人類3.8万年の歴史がブツッとこの2年間だけ切れてしまった。
他人の素顔を見て泣き出す子ども。
何度も消毒し、自然のものに一切手を付けようとしない子ども。
他児との、他の大人との身体接触を拒む子ども。
私達人間は、この日本に住むヒトは、環境と食の中で体内に細菌やウィルスを取りこみ、共存してきました。
この日本に適した日本人らしい体内環境があるわけです。
ヒトとしての原理原則、日本人としての原理原則。
その上に各家庭の、その子だけの子育て、育ちを試行錯誤しながら作り上げていく。
ただでも子育てを一人ひとりに合わせてカスタマイズするのは大変なのに、前提となる原理原則の部分までもがコロナ禍によって揺らいでしまった。
だから今までは、試行錯誤の子育ての中で自然な状況から外れてしまっていた場合、そこを修正し、フォローすればよかった。
でも、子どもが育つ環境そのものが非自然なのです。
『ポストコロナの発達援助論』を読んでくださった方からも感想を頂戴しました。
その方とも危機感を共有できていました。
人は未来のリスクを小さく見積もる癖を持っています。
ですからその場にならないとリスクを認識できず、人類は何度も失敗してきたのです。
しかし大東亜戦争の前、戦中にも、恐ろしい未来、結末に気づき声を上げていた人達がいました。
そういった人達がいたからこそ、私達は過去に学び、少しずつ最悪の事態を回避し、進歩してきたのだと思います。
2011年の大震災は、胎児も同じように体験し、その後の発達過程に影響を及ぼしたことがわかりました。
あれから10年、胎児も同じようにコロナ禍という不安定な世の中を体験したはずです。
あのときは半年くらいで徐々に世の中の不安は薄れましたが、今回は2年にも及ぶ長期間になっています。
3.11の子ども達から私達は何を感じ、コロナ禍で胎児だった子ども達になにを活かすことができるでしょうか。
一人ひとりが考え、選択し、行動する。
気づいた人から変わっていく。
これが私達大人に課せられた課題だと思います。
社会は変えられないけれども、どんな社会になろうとも自立し、生き抜けるための育ちを後押しすることはできると考えています。
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2022年2月17日より全国の書店に並ぶ予定です。
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