ベルトコンベヤー

「この地域は、ママ友は、みなさん、視覚支援なので、身体アプローチはちょっと…」というような人もいます。
その一方で、早期診断、早期療育、就学後は相談機関の人と連携して学校生活を送り…みたいな人が、「やっぱりおかしい」といって、治す道へと歩みだすこともあります。


そういった親御さんの一人から連絡がありました。
「他人の気持ちを察することができるようになったんです」
「会話がスムーズになって、雑談ができるようになったんです」
長年の課題、「ここが育てば」と思っていたところが育ち、ご家族皆さん、とても喜ばれていました。


察すること、雑談…。
こういった部分は、発達障害の人、特に自閉症の人達に共通してみられる課題でもあります。
だから、療育でも、熱心なアプローチが展開されます。
なんとか会話や、なんとかストーリー、輸入物のアプローチの数々。
一通りやってみて、結果が出なければ、「それが障害特性だから」という典型的なパターン。
何年もかけて、SSTをやったのに、「だって、障害特性だもん」と言われた日にゃあ、どうすりゃいいの、私達の時間を返せ、となるわけです。


そこで、「これだけ時間かけて、頑張ってきたんだから、仕方ないよね」と納得するか、「仕方がないんじゃなくて、やりかたが悪かったんじゃないの」と思うか。
そこが分かれ道だと思います。
冒頭で紹介した親御さんは、それから自分でいろんなことを調べ、辿りついたわけです、身体アプローチに。


長年、療育に通い、児童デイにも通い、定期的に相談機関、医療機関と頼ってきた。
最初は、「早期療育を行えば、この療法をやって続けていけば、コミュニケーション面も改善しますよ」と言っていたのに、「薬を飲めば、集中力も上がってくるから、療育の効果も高まるから」と言われて飲ませたくなかった精神科薬も飲んだのに、挙句の果てに障害特性で、はい、終了となる。
こういった話は、全国どこにでもある話ではないでしょうか。


結局、上辺だけの知識、技能では、問題解決などするわけないのです。
だって、発達障害は、知識や技能を覚えれない障害ではないから。
発達期に生じた神経発達の遅れ、です。
「神経発達の遅れ」=「知能や技能を覚えられない」???
現在行われている療育、特別支援教育の多くは、知能や技能を覚えられない人向けのアプローチ。
というか、神経発達のヌケが埋まった人、育った人が前提で展開されています。


知識や技能が習得できないのは、課題の表面。
根っこは、あくまで神経発達。
神経発達にアプローチできなければ、エビデンスがあろうが、免許が必要な輸入物の方法だろうが、身になることはありません。
結局、そういった上辺だけのアプローチで学んだことは、真の意味が掴めて身についたものではないので、パターン学習となる。
そろそろ、日本の特別支援も、パターン学習のコレクション(通称『パタコレ』)から脱皮しなければならないと思います。


冒頭の若者、親御さんへのアドバイスは、たった2つだけ。
栄養が吸収できていない雰囲気があったので、藤川ドクターの本を紹介と、背面を優しくマッサージすること。
まずは、それだけとことんやってみてください、と提案。
栄養が満たされれば、神経発達は加速するし、脳みそにも余裕が生まれてくる。
だから、会話にも余裕が。
皮膚の感覚が乏しければ、空気を読むなんてできるわけがない。
だから、皮膚からの刺激を充分に味わい、育ててもらう。
10年以上、悩んでいたことが、たった数か月で解決。
根っこを育てれば、あとは早いんですね。


栄養を整えて、発達のヌケを、未発達の部分を育てる。
何も特別なことではなく、子育ての範疇です。
ですから、気づくかどうか。
「障害を持った子だから、専門的な支援、療育」と思うか、「発達が遅れている子だから、そこを丁寧に育てていこう」と思うか、の違い。


この親御さんのように、いつからでも気が付いたら、その瞬間から育てられるのが、言葉以前のアプローチ、身体アプローチの良いところ。
ただそのためには、一つだけ条件があります。
動ける身体があること。
世の中、「おかしいな」と思っても、それが言いだせない、行動に移せない人が少なくありません。
「おかしいな」と直感が働いたとき、その内なる声に耳を傾け、手や足を動かせるかどうか。
待っていれば、特別支援のベルトコンベヤーは前に進んでいくだけ。
一度、乗ったなら、自らの手や足で降りる必要があるのです。


本人自ら降りられるならベスト。
でも、子ども時代に、それを子ども自身でやるのは難しい。
となると、やっぱり子どもの手を引いて、ベルトコンベヤーから「降りよう」という人が必要。
それが親御さんであり、家族だと思うんです。


「大久保さんとのご縁が」と仰っていたけれども、それは関係ありません。
私と縁がなければ、他の人と繋がっているだけ。
他にも治すアイディア、未発達を育てるアイディアを持っている人はいます。
だから、ベルトコンベヤーから降りた、親御さんが素晴らしいのです。
「おかしい」と気づき、行動に移せる親御さんは、必ず最後には、ふさわしい人と縁ができるわけです。


だって、親御さんは我が子のことで妥協しないものだから。
親が子の手を離すときは、子が自立したときです。

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