【No.1429】「強度行動障害は治りますか?」

今朝、花風社の浅見さんからご質問をいただきました。
ずばり「強度行動障害」についてです。
今月8日の厚労省の発表から今まさに関心が向けられているトピック。
大事な話だと思いますので、みなさんに共有しますね。


【浅見さん】====================
強度行動障害のひどさを訴えるニュース動画などをみると、やはりどの方も身体が突っ張っています。
そして必死に自己治療していらっしゃいます。
それが行動障害になっています。
あの突っ張りと癇癪が関係ありそうだ、という関連付けから黄色本が生まれました。
そして各種手法で身体を緩めることは効果がありました。
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ポイントは「身体の突っ張り」「自己治療」ですね。
長年、自閉症、発達障害に関わる本を世に出してきた浅見さんだからこそ、さらっと出る言葉。
共通言語&認識として、ここがあるので浅見さんとの会話はポンポン進みます。
世の中に、どのくらいこの視点を持っている人がいるでしょうか。
自閉症は自閉症。
特性は特性。
いまだに発達の凸凹を持つ人たちの身体に注目できていない支援者が多いのではないでしょうか。


私が関わってきた強度行動障害をもつ人達、今も行動上の課題を持つ人達とのかかわりはありますが、浅見さんがおっしゃる通り必要以上に身体を緊張させ、いや、硬直させているという表現のほうが近いかもしれませんが、突っ張っらせている人が多いですね。
「自己治療」と絡めると、身体を固めることでバリアを張っているような、周囲から波のようにやってくる刺激を遮断しているような感じもします。
あとは、そもそも運動発達のヌケがあり、身体をうまく動かせない、その機能が育っていない、限られた動きの中で生活しているため固まりやすい、それこそ『黄色本(自閉っ子の心身をラクにしよう!花風社2014)』で指摘されている通り身体の力を抜けない、弛められない方が多いですね。


【浅見さん】====================
大久保さんが施設でみていらしたような重度の方には、この手法は通じないでしょうか?
廣木さん方面等、強度行動障害に打つ手を持っている人もいます。
それをやってみもしないで、トンデモ扱いして薬物とABAだけで、それで長期入院しかない手段がないと言われても、納税者の納得は得られない時代になりました。
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詳細を知りたい方は黄色本が出版された2014年以降の花風社さんの本を読まれると良いですが、ここでは身体アプローチという言葉で進めさせていただきますね。
私が施設で働いていたときに関わっていた方たちは、重度、最重度、測定不能、強度行動障害と判定された人たちです。
当然、言葉でのやりとりが難しかった方ばかり。
で、そのとき、中心に行っていた支援は、彼らの環境、生活空間をシンプルでわかりやすいものにすることで、「刺激を減らして不安を下げる」「理解を増やして自ら行動したり、伝えたりできることを目指す」というものでした。
言葉や文字、知識の伝達でうまくいかないため、見てわかりやすい、そこにいけば何が求められているかわかる、具体的なモノを介した交流でした。


で、身体アプローチなのですが、具体的なモノよりも、直接的なアプローチになるといえます。
身体にダイレクトに伝える、そして反応がある。
一番シンプルで、一番わかりやすいアプローチではないでしょうか。
当時の私達にはそういった視点、アイディアがありませんでしたので、モノや空間というアプローチをしていました。
それが一番刺激が少なくてシンプルでわかりやすいと考えていたからです。
もし当時の私が知っていたら、身体アプローチを中心に行っていたはずです。
なぜなら、今も時々関わり、相談のある行動上の課題を持った子ども達、若者たち、重度と言われる子ども達も身体アプローチによって改善がみられるからです。
そして何よりももっとも反応が早く(心身ともに)、誤学習や副反応の心配がない、家庭でできるというのが素晴らしいと感じいます。


「暴れなかったらご褒美」
「声を上げなければ、遊びが続けられる」
という行動変容を目指した手法。
暴れたいけれども、暴れるだけの理由があるけれども、身体が動かない、気力が出ない状態にもっていくことで抑え込む向精神薬。
どちらも身体から発せられる苦しさ、根本的な原因には目が向けられていませんね。
身体をラクにすることは、根本原因にアプローチすることだと私は思うのです。


廣木道心さん:本人も、支援する人も傷つかない介助法を開発、広めている。全国各地で講演会、実技の講座を行っていますので、是非、調べてみて下さい!


【浅見さん】====================
強度行動障害は本当に治らないのでしょうか?
治ってしまえば、制度が変わっても安心ですよね。
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強度行動障害は治ると思います。
ただ「治る人」と「治らない人」がいるといえます。
私が今まで関わってきた人たちのほとんどは治るでしょう。
理由としては、そのほとんどが誤学習で作られた行動障害であり、未発達が続いた自己治療だからです。
誤学習に関しては根気はいりますが、絡まった糸を一つずつほどいていくように新たな学習をしていくことで収まっていきます(当然、誤学習した場所、環境を変えて学習し直す必要がありますが)。
もちろん、神田橋先生が行うようなトラウマ処理で一発で治る人もいるでしょう。
未発達に関しては、身体を緩め、動ける身体を作ることで、もう一度、育て直しをすれば大丈夫です。


しかし「治らない人」がいるのも事実だと思います。
それは生まれたときから異常さを持っている人です。
施設で成育歴の聞き取りをしていますと、稀に赤ちゃんの時から「ほとんど寝なかった」「一晩中、泣いていることがざらだった」「おっぱいも拒絶で苦労した」という人がいます。
こういった人たちをみますと、神経学上の困難をもって生まれてきた子ではないか、と思うのです。
動物の本能である「寝る」「食べる」がままならない。
もしかしたら今後、バイオフィードバック療法等で治せる時代がやってくるかもしれませんが。
誤学習と未発達が背景にある作られた行動障害は治せると私は考えています。


医療的ケアが必要な子もそうですが、本来、支援や医療的介入が必要なのはこういった神経学上の困難をもって生まれた人たちですよね。
自分たちの利益のために、猫も杓子も発達障害にしてしまい、結果的に必要な人に支援が届かない状況を作ったギョーカイ。
児童デイに1日1万円なんて、ハナから継続できるわけないし、最初に予算という餌をまき、民間参入を促して、ある程度、広がったら間口を閉めるのは御上の古典的な手法。
だから、15年以上前から支援や行政をあてにするよりも、「治せるところは治して自立を目指していこう」と訴えていたのです。
浅見さんもずっと同じことを言われていました。
最初からわかっていたのです。
時代や制度に左右されない生活、人生の尊さを。
まさに浅見さんのおっしゃっていた「治るが勝ち!」が今やってきたのですね。


北欧は「医療も福祉も充実している」と言われていましたが、今は無料、少額で受けられるのは最低限にも満たないサービスだと聞きます。
最低限以上の良い医療、良い福祉を受けるためにはお金を払うしかない、お金を払えるものだけが受けられるサービス。
日本も直にそうなるでしょう。
いや、すでにそうなっていたのかもしれません。
無料では治らない。
無料と引き換えに、一部の者の利益のために「子どもの発達と家族の時間を差し出していた」というのは言い過ぎでしょうか。
一人でも多くの親御さんに気づいてほしいですね。
「治したいなら治すための情報を手に入れる。治せる人のところに行く」





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