【No.1296】怒りの正体
子育てをしていれば、落ち込むことがあるし、悲しいこともある。
だけれども、「怒り」という感情はなかなか出てこない。
テストの点数が悪ければ、その準備が足りなかったことに対して小言をいうことはあるかもしれないが、テストの点数が悪いといって怒りはしない、普通。
同じように、発達のヌケや遅れがなかなか埋まっていかないことに対して、焦りや不安の感情が出たとしても、「どうしてできないんだ」「育っていかないんだ」という怒りの感情は湧いてこない。
でも、そういったご家庭は少なくないのです。
怒りの感情というのは、自分自身が理不尽な扱いをされたとき、またはその場面に遭遇したとき、湧いてくるのだと思います。
親御さんだったら、大切な我が子に対して、そのようなことをされても、怒りの感情は湧くでしょう。
私達も動物ですので、主に子ども達という弱い存在を守るためにも、怒りという感情のスイッチが入ることもあります。
ではなぜ、我が子や家族、パートナーに怒りの感情が湧くのでしょうか。
相手からひどいことをされれば、怒るのは当然です。
しかし、そうではない場面で、さらに自分ではコントロールできないくらいに、反射的な怒りの感情が湧く。
それは、その子だったり、その人だったりに怒りが湧いているのではなく、本当の怒りの対象は他にいるということです。
私は家庭支援を行っていますので、親子の関係、パートナーとの関係に投影された怒りの対象の存在を感じます。
我が子の発達がうまく進んでいかないことに怒りの感情が湧く。
でも本当は、我が子に怒っているのではなく、自分の親に怒っている。
自分が子どもの頃、自分の親から親が思い通りに動くことを強要されてきた経験がある。
それが嫌で嫌で仕方がなかった、意識レベル、無意識レベルを問わず。
だから、発達のヌケが埋まっていかないことに怒っているのではなく、自分の親に怒っているのであり、自分は親の思い通りに生きてきたのに、我が子は"思い通りにいかない”で生活できていることに怒っているのです。
特に発達の「順序・順番」が発達援助の基本知識になっていますので、そこから外れることは、親の想いから"外れることができなかった自分"を連想させるため、反射的に怒りが湧いてしまう。
同じようにパートナーとの関係性を悩む親御さんも少なくありません。
それは子育ての方向性の違いに悩んでいるというよりも、パートナーを通して自分の親との関係性を見ている。
子育てに無関心な夫に、自分に無関心だった自分の親を重ね合わせ、「愛してほしかった」という想いを横にいる夫にぶつけている。
家事ができない夫に、いつも母親を困らせていた父親を重ね合わせ、そこまで言わなくていいんじゃないですか、というくらい怒りの言葉を言ってしまう。
中には、我が子を溺愛する夫に怒り狂うお母さんもいて、それは「なぜ、自分は愛されてこなかったのに、この子はこんなにも愛情を貰っているんだ」ということだったりします。
かなり深刻な状態になると、自分の家族、パートナーだけではなく、見ず知らずの他人に対して、自分の内側にある誰かを重ね合わせ、怒りをぶつけるような場合もあるのです。
発達援助の観点から言えば、また私に求められている役割としては、本人にどのような発達のヌケや遅れがあり、それはどうやって育てなおしていけばいいか、をお伝えすることです。
しかし、このような課題を残したままでは、親御さんが「なんで怒りの感情が湧くのだろうか」ということに気がつかなければ、本人は治っていけないのです。
これも一種の愛着障害になりますので、親御さんが根っこから治っていかなければ、それは次の世代、子どもの世代に引き継がれていきます。
それこそ、夫婦のいざこざ、家庭の雰囲気の悪さを感じて育った子ども達は、同じようなことを自分が築いていく関係性の中に投影しようとします。
しかも、ほとんどが無意識レベルで行いますので、なんだかわからないけれども、無性に我が子にいらつく、無性に旦那に怒りが湧く、ということが出てきます。
いま、我が子の発達障害をきっかけに、愛着障害の視点を知ったために、気がつくことができたという状態の親御さん達。
それが20年後、30年後の我が子も気がつき、それを自力で解決できるかどうか。
我が子との関係性の中に、パートナーとの関係性の中に、はたまた全然別の他人に対して、どうしようもない怒りを感じたとき、本当にその怒りはその相手にぶつけたものだろうか、を冷静になって考える必要があると思います。
そして真に怒っている相手に気づき、その相手に対しての何に怒っているのか、と向き合うことが必要です。
そうやって親御さんの課題を解決していくことが、子どもにとってより良い発達の環境づくりにつながりますし、子どもの世代に親の愛着障害を引き継がないための行動になります。
真に怒っている相手が分かり、自分の子育て、我が子との関係性と分けて捉えられるようになったあとから、子どもさんが「なんだか治り切らない」という状態から「治り切った!」と思える状態へと変わることができた、という報告をいただくことは少なくありません。
再三申し上げているように、発達援助とは身体アプローチをすることだけでも、栄養を整えることだけでもありませんね。
子どもが発達していけない状況、環境が問題なので、親御さんを含めた家庭をよりよく変えていくことも重要です。
親御さんの課題は、子どもさんの課題とも連動するものですから。
伸びやかに成長していくための環境としての家庭ですね。
子どもが変わってほしいのなら、まずは大人が変わる方が先です。
【福岡・九州出張のお知らせ】
8月25~28日の日程で福岡に行きます。
ただいま、ふた家族の訪問が決まりました。
もしこの機会に発達相談をご希望される方がいらっしゃいましたら、お問い合わせください。
内容はこちらのブログでご確認ください。
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