【No.1298】家庭という環境、親という環境

7月の講座の中で、私は「遠巻きに見ている親御さん達」のお話をしました。
私に対して、私の行っている発達相談、援助について興味関心がある。
心から治したいと思っている。
だから、実際にどんなことを行っているのか、もし相談したらどんなことを言われるのか、とても気になる。
そしてその情報を集めるために、書籍を読んだり、ネットを検索したり、実際に利用した親御さんの話などを聞こうとする。
なんなら匿名、仮名を使い、メール相談をする方もいらっしゃいます。
無料でメール相談していますので、良いのですが(笑)


一見すると、「だったら、一回依頼すればいいじゃないか」と思いがちです。
実際、私も最初の頃は、そう思っていました。
でも私の間に一定の距離を持とうとするのには理由があるように感じます。
息子、娘には治ってほしいし、自分もその後押しがしたい。
だけれども、無意識の階層に「私には触れてほしくない」という想いが存在しているのです。
自分は変わりたくないけれども、我が子は変わってほしい、という感じ。
結構、ご自身では気がついていないですが、こういった無意識の想いがあるように思えます。


私に発達相談を依頼される親御さん達からは、覚悟を感じます。
それこそ、自分自身の課題と向き合う覚悟です。
自分の愛着障害、発達の課題、妊娠・出産・育児における過ち、自分自身の過去の行い…。
そういったものと本気で向き合う覚悟ができたとき、発達相談を受けようと思うのでしょう。
なぜ、そう思うかといえば、誰一人、「How To」を訊いてこないですし、そこを求めていないから。
そしてその後の様子を伺うと、まずは親御さん自身が変わろうと動き、実際に子どもさんが変わる前に変わっているから。


胎児期から2歳前後の言語を獲得する前の段階に生じる発達のヌケや遅れが、発達障害と呼ばれている子ども達の根っこだといえます。
生物としての土台の部分に不具合が生じるから、人間として育っていく部分に問題が現れていく。
その発達のヌケや遅れは主に親子の関係性の中で生じ、母胎を含めた家庭という環境に発達が進んでいけない"何か"が存在している。
だから、発達の環境としての家庭、親御さんがまず変わる必要があるのです。


家庭を変える人は多くいます。
テレビやタブレットを撤去したり、食事から添加物、加工食品を減らしたり、早期教育をやめたり。
自然の中で過ごす時間を増やすのは、遊びや遊び場、刺激を変えることであり、身体育てや発達のヌケの育て直しも、ある意味、家庭での過ごし方を変えることになるでしょう。
こういった家庭の変化だけで治っていく子もいますが、正直、それは誤診の範囲に入る発達障害であり、もともと普通の子だったのだと思います。
ひと言でいえば、育つ環境が悪かっただけ。


一方でこういった家庭を変えるだけでは治っていかない子ども達もいるのです。
それは愛着形成の歪みから発達障害っぽく見えている子ども達。
三代にわたる愛着障害、トラウマが、その子の安心を奪い、そのために伸びやかに育っていけず、それが発達の遅れとなる。
こういった子ども達は、まず親御さんがご自身の愛着障害を治さない限り、そこと向き合わない限り、愛着形成の基盤となる親子の関係性が整いません。


よくあるのが、我が子の愛着形成を育てるアプローチを行うけれども、いつまで経っても子どもさんの愛着が育っていかない。
その背景には、形としてのアプローチであり、本当の意味で実感としての愛着がわかない、イメージできていないことがあります。
愛着形成には、子ども側の感覚が育っていること、快や心地良いがわかることも大事ですが、親御さん側の気持ち、感情、雰囲気のほうが大事なのです。
我が子を愛おしく想う身体の動きはできたとしても、実際に愛おしさがなければ、それはストレートに子どもに伝わってしまいますので。
お互い義務感としての愛着形成のアプローチになっているご家族は少なくないような気がします。
だから、まずは親御さんが大事なのです。


また家庭を変えるだけでは治っていけない子ども達というのは、生物学的なダメージ、不具合を抱えている子ども達、遺伝としての神経発達の凸凹、不具合を抱えている子ども達です。
そういった子ども達は、長いスパンで、それこそ、生涯をかけて治っていく人達だと言えますので、やはり親御さんも一緒に変わっていくことが必要ですし、それも小手先ではなく、根本から変わることが必要になります。
さらに生涯に渡って治していくということは、親がいなくなったあとも、自分自身で育てていく、社会の中で治していくことが必要になりますので、親御さん自身が変わっていく姿をモデルとして見せていく必要もあるのです。
大人になっても成長し続ける、変わっていける最も身近なモデルは自分の親になります。
反対に言えば、親御さんの親がそういった姿を見せてこなかったから、子(孫)の育ちに影響を与えているのです。


私の仕事は、治るためのアプローチ、技能を教えることではないと思っています。
そういったアプローチ、技能は、ネットを中心に溢れかえっています。
その溢れかえっている情報の中から選択ができない、組み合わせができない、我が子に合わせて創造することができない。
そちらのほうが深い層にある課題であり、ではなぜ、それができないかといえば、目の前にいる子どもの姿が見えていないからであり、その見えない目を持っているのは親御さんになります。
我が子の姿をそのまま見ることができないのは、ご自身の感覚や体調の問題、深層心理が邪魔をしているかもしれないし、そもそも現実を直視できていないことがあるかもしれない。
もっといえば、無意識に「見たくない」と強く思っている人もいます。


スピ系の人が「子どもは親を選んでくる☆彡」などと言うから、私は大っ嫌いな人なんですが(笑)、子どもが生まれたこと、しかも発達に課題をもっていることで、親御さん自身が根っこにある課題と向き合う機会になっていることがあると思います。
子どもにとっての親という関係性ばかりにクローズアップされますが、親にとっても子どもが特別な関係性になり、そこが結ばれることで揺らぎが生じます。
さらに子ができることで、否応にも自分の親との関係性にも意識が向きます。
夏休み実家に帰り、改めて親との関係性と向き合ったという方がいらっしゃいました。
「ずっと我が子の発達の遅れ、我が子を治したいと思っていたけれども、本当の課題は私と親との関係性にありました」という気付きが合ったようです。
親に覚悟が生まれたとき、子ども自身も変わる覚悟が生まれるような出来事が起きるのは、今までにもたくさん経験してきました。
きっとこのご家族にも、良い変化、サイクルができてくると思います。






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