【No.1303】この夏のケース報告

夏休みに入ると、上の子はほぼノーマスク生活でした。
一人でおつかいや書店に行くときも、マスクを持たずに出かけていく。
「だって、一人で買い物するんだから、しゃべらないでしょ」と。
なにか言われるようなことがあったようだけれども、「完ムシ~」だって。
私の子なら、そこで言いかえすくらいの勢いが欲しいところですが、まあ、良しとしておきます(笑)
大事なことはマスクをしないことではなく、自分の頭で考え、判断すること。
とにかくどこでもここでもマスクするのと、どこでもここでも外すのは、根っこでつながっているんだから。
下の子は、マスク姿の人を見かけると、「あの人、自分の頭で考えられないんだね」と言う始末(笑)


今日はこの夏、関わったケースの中から、ちょっとだけご紹介。
もちろん、部分的に改変して、また発達相談の一部の内容によって個人が出ないような配慮はしますが。
たまには具体的なお話の方が皆さんの参考、考えるきっかけになるかと思いました。
ではいきます。


ケース①
【対象者】:幼児さん
【相談内容】:言葉の遅れ
【アセスメント】:「バババ」など、上下の唇をつけた発音のみ。お母さんの話では「ハイハイを飛ばしたことが…」とのことでしたが、まだ口が幼い印象。発達段階で言えば、おっぱいを吸っている段階の口。食事の様子を訊けば、「丸飲み」「固いものは食べられない、吐き出す」。
【助言】:ヒトはうつ伏せの姿勢、運動により噛む力、飲み込む力を育てていく。いろんなものを頑張って食べさせれば噛む力が付くというのは間違い。今の段階で固いものを食べさせるのは無理強いという。ハイハイを飛ばしたということは、それに至る前の段階ですでに課題があったということで、たぶん、首から背骨にかけての問題だろう。言葉の発達は、進化の過程で言えば、最後のほうなので、根っこから育ていくことが言葉の発達につながると思う。
【その後の様子】:「哺乳瓶による水分補給」「首から背骨にかけてのアプローチ」「くちゃくちゃ食べの容認」を行う。以前よりも、舌の動きがよくなったとのこと。「ダ」が出るようになった。
【感想】:ひとことで「言葉の遅れ」と言っても、その遅れの状態&段階も人それぞれ、遅れた要因も人それぞれ。このお子さんの場合は、運動発達という土台から育てなおしていくことが大事だと判断。時間はかかるが、ご両親ともに共通認識が持てたので、この調子で続けていってもらえるだろう。


ケース②
【対象者】:小学生
【相談内容】:学習障害(LD)の診断。学習面の改善。
【アセスメント】:学習障害、とくに書字が苦手とのこと。テストの答案を拝見すると、たしかに字の大きさはバラバラだが、書き順と形を捉えることはできている。筆圧もOK。
【助言】:そもそも椅子に座れていない。座位を保持できていないのだから、授業を聞くこと、座る姿勢を保ちつつ、字を書くことは相当エネルギーを要する。書けないと書かないは違う。さらにまだ利き手が定まっていない段階。現時点での対処として、椅子に座るのではなく、地面との接地面を多くした姿勢での勉強を。根本治療としては、運動発達のやり直しと、両手を使った遊び、活動を。
【その後の様子】:床に座った姿勢での勉強を行う。本人、「正座がラク」とのことで、その姿勢で宿題を行うようになった。以前よりも、解答までの時間が短くなった。書字もスムーズに。
【感想】:学習障害と言われる人達は、対面したときの"目"の雰囲気が異なる。ドッチボールでキャッチできることも確認したうえで、やはりそこじゃないと判断。今は対人面で問題が見当たらない+勉強に課題の子がLDになっている。なんでも診断を付ければいいって話じゃないよね。


ケース③
【対象者】:小学生
【相談内容】:不登校。学校に行けなくなった。病院に相談すると、「ASD」だろうとのこと。
【アセスメント】:訪問すると、自ら挨拶をしてくれた。その後、雑談も。社交的で、言葉とコミュニケーションに問題のないASD(笑)。こだわりと言えば、ベッドで一緒に寝ているぬいぐるみ。保育園のときから行き渋りがあったとのことで、ASDというよりも、分離不安、愛着形成の課題、ヌケだろう。
【助言】:スキンシップを心地良く感じられない本人側の課題からの愛着障害。愛し方が分からない大人側の課題からの愛着障害。大まかに分けてこの2つだが、後者だと思う。義務感で行う形だけのスキンシップは愛着形成を進めるどころか、新たな傷となる。まずは親御さんご自身の課題と向き合うことが必要だと思う。
【その後の様子】:親御さん自身が自分の過去を振り返るようになる。「あれが原因」という具合に言語化できていたけれども、課題の根っこは言語化できない無意識のレベルに存在する。
【感想】:今の親御さんはまだ言語レベルでの愛着形成のやり直しかもしれないが、子どもさんは"受け入れられた感"を味わえるだろう。それにしても、風邪の患者に「とりあえず抗生物質出しておきました」みたいな、不登校=とりあえず発達障害の診断つけときました、が多すぎ。それで安定剤を飲まされる不登校の子ども達…。


ケース④
【対象者】:中学生
【相談内容】:「家で暴れる」「家で大変」と支援機関から介入のSOS
【アセスメント】:奴隷のような親子関係。身体が大きくなり、子どもの言いなりになってしまっている。父親は手をとり足を取りで食事を食べさせ、服を着替えさせ、要求を何でも聞く。母親は敢えて上下という関係を作り、接しているように見える。重い知的障害もあるものの、問題の核は歪んだ関係性を形成してきたこと。
【助言】:特になし。「結局、手に負えない段階までこじらせてから大久保かよ」と支援機関にダメ出し(笑)
【その後の様子】:親御さんのフォローを始めるらしい(?)
【感想】:子どもさんに重度の知的障害がある場合、支援者は無意識に介助を行なおうとする。だから、早期からの介入があったとしても、結局は介助慣れする人を育ててるにすぎない。本人にとっても介助は「ラク」だが、自分が「こうしたい」という欲求は満たされず、それが周囲の制止レベルを超えた時点で爆発する。重度の子に「意思はなし」という大人の姿勢が、問題の始まり。


ケース⑤
【対象者】:幼児さん
【相談内容】:園で友だちに手が出る、暴言が出る、いじめる(?)
【アセスメント】:運動発達のヌケや違和感、発達の遅れもとくに感じない。全体的に同年代と同じ発達の範囲に入っているといえる。特定の子に向かう理由は?その子がいじわるしたとか、嫌いというわけではない。むしろ、好きな子。友達と遊ぶこと自体ができないわけではない。「一人っ子だからですかね」と親御さん。
【助言】:親御さんとの会話の節々にパートナーへの不満が出てくる。「もしかしたら、子どもさんの前で、パートナーをけなしていませんか?」と尋ねると、頷かれる。よくあるケースで、親を見て、関係性の模倣をする子がいる。親の口調や仕草だけではなく、家族間での関係性も、模倣し、学んでいくのが子ども、特に幼児期の子ども達。そういった姿をあまり見せないようにするのも大事だが、パートナーとの関係性は同性の自分の親との関係性の模倣ともいえるので、ご自身の課題と向き合うことを。
【その後の様子】:相談後、気分が落ち込んだとのこと。しかし、今は落ち切った後で、自分と親との関係性を冷静に振り返られるようになったそうです。
【感想】:まさに「3代続く」のお話。どこかで"けり"を付けなければ、その3代が我が子で終わらず、孫の代まで続いていく。まだ幼児期に気づけたから良くて、これが思春期以降になると、子どもさんが恋人を作り、似たような関係性を結ぼうとすることが起きる。若者たちとの相談でも実際にあること。




☆『医者が教えてくれない発達障害の治り方』のご紹介☆

まえがき(浅見淳子)

第一章 診断されると本当にいいことあるの?
〇医者は誤ることはあるけど謝ることはない
〇早期診断→特別支援教育のオススメルートは基本片道切符
〇八歳までは障害名(仮)でよいはず
〇その遅れは八歳以降も続きますか?
〇未発達とは、何が育っていないのか?
〇就学先は五歳~六歳の発達状況で決められてしまうという現実
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのメリット
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのデメリット
〇療育や支援とつながるほど、子育ての時間は減る

第二章 親心活用のススメ
〇親子遊びはたしかに、発達に結びつく
〇変わりゆく発達凸凹のお子さんを持つ家庭の姿
〇学校は頼りにならないと知っておこう
〇安定した土台は生活の中でしか作れない
〇支援者が行うアセスメントには、実はあまり意味がない
〇親が求めているのは「よりよくなるための手がかり」のはず
〇人間は主観の中で生きていく
〇専門家との関係性より親子の関係性の方が大事
〇支援者の粗探しから子どもを守ろう
〇圧倒的な情報量を持っているのは支援者ではなく親

第三章 親心活用アセスメントこそ効果的
〇子育ての世界へ戻ろう
〇その子のペースで遊ぶことの大切さ
〇「発達のヌケ」を見抜けるのは誰か?
〇いわゆる代替療法に手を出してはいけないのか
〇家庭でのアセスメントの利点
1.発達段階が正確にわかる
2.親の観察眼を養える
3.本人のニーズがわかる
4.利点まとめ
〇家庭で子どもの何をみればいいのか
1.発達段階
2.キャラクター
3.流れ
4.親子のニーズの不一致に気を付けよう

第四章 「我が子の強み」をどう発見し、活かすか
〇支援と発達援助、どちらを望んでいますか?
〇子ども自身が自分を育てる方法を知っている
〇親に余裕がないと「トレーニング」になってしまう
〇それぞれの家庭らしさをどう見つけるか
〇親から受け継いだものを大切に、自分に自信を持とう

あとがき(大久保悠)


『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』をどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!ご購入して頂いた皆さまのおかげで二刷になりましたm(__)m


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