【No.1272】治すだけではなく、繋げていける発達援助

栄養療法から入った親御さんも、必ず身体アプローチに進んでいくものです。
栄養だけでは治らないから。
栄養だけで育つのは植物。
ヒトは動物なので、そこに"動き"が必要になる。
同様に身体アプローチから入った親御さんも、必ず栄養と食事の改善に進んでいきます。
いくら運動や遊びを行っても、生き物としての土台である栄養、「生きる」ということがままならなければ、伸びやかな発達は生じない。
我が子は生きていて、その子を形成している神経も生きている。


生きているからこそ、栄養が大事で、人間だからこそ、食事が大事。
動物だからこそ、運動が大事で、人間だからこそ、遊びが大事。
食事も、遊びも、ヒトから人間として育つためには必要なことです。
「発達障害を治そう」から「我が子によりよく育ってほしい」
そういった想いの移り変わりが、栄養療法や身体アプローチの枠を飛び越えていくのだと思います。


そういった療法の枠を飛び越えていく親御さんは、世代という枠をも飛び越えていきます。
発達援助を考える際も、より良い子育てを考える際も、私は必ず三世代を見ます。
単に動物としてのヒトを育てるのなら、同じモノを食べ、同じ運動をし、同じ遊びをすれば良い。
だけれども、私達は目の前にいる子どもがその子らしく育ち、自分の人生を歩んでもらいたいと願っています。
だから、その子らしさの原点である親御さんの歩んできた道、さらにおじいちゃん、おばあちゃんが歩んできた道により良い育ちのヒントを見つけようとするのです。


「我が子に発達の遅れがあった」
「どうしたら、その遅れを取り戻すことができるのだろうか?」
「栄養療法があるらしい、やってみよう」
「少しずつだけれども、子どもの発達が進んでいく気がする」
「そうか、栄養が大事なんだ、食事って大切なんだ」
「食べるって運動なんだ。噛む、飲み込むって赤ちゃん時代の大切な発達なんだ」
「今の私の食事はどうだろうか、今までの私の食事はどうだっただろうか」
その私の食事の原風景は、幼少期に繋がり、それは自分の家族とどんなものを食べ、どんな雰囲気の中で食事をしていたかに繋がっていく。
そうやって我が子、自分、自分の親の三世代が繋がり、その子らしい育ちと、その子に合った子育てが創られていくのだと思います。


私は発達援助という仕事を通して、「ああ、三世代がようやく繋がったな」と思える瞬間に出会えることがあります。
我が子の子育ての悩みで相談していたのに、いつしか自分が大切に育てられてきた、という想いを感じ、涙を流される親御さんもいらっしゃいます。
反対に、本当はもっと親から愛されたかった、受け止めて欲しかった、無償の愛、「あなたがいるだけで私は幸せだ」というメッセージが欲しかったんだと気づかれ、また涙を流される親御さんもいらっしゃいます。
人間は自分が愛されてきたことを実感することで、我が子を心から愛することができる。
同時に人間は強い生き物なので、自分の内側にある満たされなかった想いに気がつくことで、我が子を全力で愛することができる。


食事、運動、遊び、そして愛情。
これらが揃って初めて、その子らしく伸びやかに育っていけるのだと私は考えています。
やはりヒトは社会性の生き物であり、人と人とが関わること、協力すること、共感すること、ぶつかり合うこと、そういったことが必要な生き物なんだと思うのです。
ただ食べて、運動して、遊んでいるだけではダメで、そこには自分が愛されているという実感が必要。
ですから、愛着形成に課題を持つ子ども達が「発達障害」という診断を受けるケースが後を絶ちません。
彼らは社会性や運動発達に問題があるのではなく、安心感が得られていないために、他人や身の周りに意識が向かず、結果的に関わりと運動の機会の乏しさが育っていかない状態を生み、それを専門家が「発達の遅れ」と言っているにすぎません。


私達親の世代は、当たり前のように核家族化した子ども時代を過ごしてきました。
ですから、私たち自身、親との繋がり、祖父母との繋がりが軽薄です。
さらに地域社会との関わりも乏しいため、いつも孤独を感じながら子育てをしている。
だからこそ、きっかけは我が子の発達の遅れという喜ばしいことではないんだけれども、子育てを通して、また自分が親になっていく過程を通して、自分の親や祖父母との繋がりを感じ、ヒトが700万年続けてきたみんなで子どもを育てる共同保育の雰囲気を感じてもらいたいと思っています。
そうすれば、もっと子育ては楽しくなるし、子どもは伸びやかに育っていくし、今の誤診だらけの発達障害も減っていくと思います。


大人を中心にみれば、自分の親と子ども達をつなぐ存在。
そして子どもを中心にみれば、大人である私たちと未来の子ども達、次の次の世代とをつないでくれる存在。
今の大人たちが頑張ることが、子ども達の幸せと健やかな成長を目指すことが、未来の子ども達をも幸せにすることになるのではないでしょうか。
発達援助とは単に発達障害を治すだけではなく、家族の幸せ、三代にまたがっていく喜びを感じられるような仕事まで高めていけるよう私は頑張っていきたいです。
そして、こういった想い、考えに共感してもらえる人達と繋がっていければ、私の人生も幸せで心豊かなものになっていくと思っています。




☆『医者が教えてくれない発達障害の治り方』のご紹介☆

まえがき(浅見淳子)

第一章 診断されると本当にいいことあるの?
〇医者は誤ることはあるけど謝ることはない
〇早期診断→特別支援教育のオススメルートは基本片道切符
〇八歳までは障害名(仮)でよいはず
〇その遅れは八歳以降も続きますか?
〇未発達とは、何が育っていないのか?
〇就学先は五歳~六歳の発達状況で決められてしまうという現実
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのメリット
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのデメリット
〇療育や支援とつながるほど、子育ての時間は減る

第二章 親心活用のススメ
〇親子遊びはたしかに、発達に結びつく
〇変わりゆく発達凸凹のお子さんを持つ家庭の姿
〇学校は頼りにならないと知っておこう
〇安定した土台は生活の中でしか作れない
〇支援者が行うアセスメントには、実はあまり意味がない
〇親が求めているのは「よりよくなるための手がかり」のはず
〇人間は主観の中で生きていく
〇専門家との関係性より親子の関係性の方が大事
〇支援者の粗探しから子どもを守ろう
〇圧倒的な情報量を持っているのは支援者ではなく親

第三章 親心活用アセスメントこそ効果的
〇子育ての世界へ戻ろう
〇その子のペースで遊ぶことの大切さ
〇「発達のヌケ」を見抜けるのは誰か?
〇いわゆる代替療法に手を出してはいけないのか
〇家庭でのアセスメントの利点
1.発達段階が正確にわかる
2.親の観察眼を養える
3.本人のニーズがわかる
4.利点まとめ
〇家庭で子どもの何をみればいいのか
1.発達段階
2.キャラクター
3.流れ
4.親子のニーズの不一致に気を付けよう

第四章 「我が子の強み」をどう発見し、活かすか
〇支援と発達援助、どちらを望んでいますか?
〇子ども自身が自分を育てる方法を知っている
〇親に余裕がないと「トレーニング」になってしまう
〇それぞれの家庭らしさをどう見つけるか
〇親から受け継いだものを大切に、自分に自信を持とう

あとがき(大久保悠)


『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』をどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!ご購入して頂いた皆さまのおかげで二刷になりましたm(__)m


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