2021年12月28日火曜日

【No.1214】『発達障害の壁』

養老孟司氏の新刊『ヒトの壁』が出たので読もうと思っているものの、なかなかたどり着けないくらい未読の本が積み重なっています。
『バカの壁』から始まり、『死の壁』『超バカの壁』『「自分」の壁』と壁シリーズが続いているのを見て、ふと『発達障害の壁』というものを連想しましたので、その辺りの話をしたいと思います。


のちに強度行動障害と呼ばれる人達、症状や認知の面で重度と言われる人達は、出生後すぐの時点で、その不具合が生じているようです。
共通しているのが、睡眠と情動の乱れ。
赤ちゃんは一日のほとんどの時間を眠るものですが、なかなか寝られない、ちょっとした物音、衝撃ですぐに覚醒してしまう、ということがあります。
これは眠れないから情動が乱れるのか、情動が過敏だから眠れないのか、そのどちらかはわかりませんが、とにかく一日中泣いていた、ぐずってばかりいた、という話もよく聞きます。
赤ちゃんにしては珍しいくらい激しく泣くという話もちょくちょく伺いますので、出生した時点で、既に何らかの神経発達的な不具合が生じていると推測されます。
眠るという動物としての本能行動に困難がある。
これが『新生児の壁』


次に訪れる壁は、『運動発達の壁』です。
腰坐りが遅かった、立位までが遅かった、という"遅れ”と、ハイハイを飛ばした、すぐに立ってしまった、という"ヌケ"があります。
そしてもう一つ留意しなければならないのが、非定型の運動パターンで、寝返りの方向が片方のみ、肩膝立ちのずりばい、後ろにしか進まないハイハイなど、特徴的な動きをする場合もあります。
こういった特徴的な動きは、代々続くことが多く、「お父さんもそうだった」「おばあちゃんも」「従兄弟も」など、引き継いだ運動パターンだといえます。
もちろん、そういった遺伝的な話ではなく、原因があって、そういった偏った動きしかできないからやっちゃう、という場合も多いです。
その原因に関しては、新刊『ポストコロナの発達援助論』に詳しく書きましたので、お読みください(宣伝w)。
こういった運動発達の壁は、現れた時点で定型の動きに戻してあげることが重要で、そのままスルーしてしまうと、あとから育て直しが必要になりますし、時間も倍以上かかることになります。
私の感覚では、動きの偏りは神経発達の偏りとなり、「ああ、言葉が出ないな」と気づいた頃には、あらゆる面で偏り、凸凹が生じているような印象を受けますし、就学後、なかなか勉強の面でうまく積み重なっていかない子が多いと思います。


同じような時期ではありますが、『折れ線型の壁』もあります。
赤ちゃんのとき、好意的な関わりに対して笑って返したり、運動発達もとくに気になることはなし、喃語も出ていたし、なんなら初語も出ていた。
だけれども、あるときを境にして、急に表情がなくなり、言葉も出なくなった、という子ども達がいます。
この原因はまだ特定されていませんが、発達障害の子の1割くらいはいるのではないでしょうか。
私の聴き取り、見立てでは、離乳食のタイミングで生じるケースが多い気がしますので、栄養の面でガス欠状態になり、神経発達がガクンと落ちるような感じがします。
ヒトの赤ちゃんは脳神経を育てるために、まるまると脂肪を蓄え生まれますが、その蓄えが少なかったり(赤ちゃん側の内臓の課題で)、そもそも母体が貧血でおっぱいからもあまり鉄を中心とした栄養が得られなかったりすると、母乳から離乳食に変わり、綱渡り状態で神経発達が進んでいたものが止まってしまうのかもしれません。
栄養が限られると、緊急事態となり、神経発達のための栄養も生命維持の方へ回さざるを得なくなるのだと思います。
内臓の発達を含む、栄養面からのアプローチがポイントになるようです。
でも、なかには頭を強くぶつけたなどがきっかけになるケースもあるので、とくに生後1年間の強い衝撃にはお気を付けください。


みなさんが発達の遅れに気がつきやすいのが言葉の遅れになりますので、『言葉の壁』がありそうですが、言葉の発達は進化的に言えば最近の話なので、言葉の遅れが生じている場合、上記のいずれかの壁が超えられていないのだと考えられます。
ですから、次の壁は『社会性の壁』だと思います。
公園デビューや親戚の子ども同士の関わり、幼稚園や保育園生活で集団活動が始まると同時に表立つ壁です。
『新生児の壁』『運動発達の壁』『折れ線型の壁』をクリアしているのに、ここで初めて目の前に立ちはだかるといった場合は、遺伝の面が強いといえます。
お父さんが自閉症、おばあちゃんがADHDなど、家族内に、親族内に同じような子ども時代、また現在もそのような特徴をもった個性的な人生を送っている方がいる場合が多いと感じます。
「うちの子、友達とうまく関われないんです」と言っているお母さんがコミュ障だったり、「俺も小さいときは、幼稚園からよく脱走していた」とお父さんが言っていたり(笑)
これは時代の変化、社会の変化によって、発達障害の範囲がずれたことによる人工的な壁だといえます。
ですから、治すというよりも、そういった親御さんの人生を振り返りながら、よりよく育てる、その子にあった子育てをしながら、ときに成長するまでは親御さんが防波堤になることも大事かもしれません。


あと忘れてはならないのは、『歪みの壁』です。
本来、そういった器質は持って生まれてきていないのに、生後1年の間からスマホを見せた、長い時間、デジタル音を聞かせていた。
また8歳までの脳神経が不安定な時期に、長時間のテレビ、タブレット視聴をさせた、添加物や砂糖などが多い食事を続けていた、誤った英才教育などで、脳や神経発達が歪む場合があります。
これは現代病ですし、コロナ禍の2年間で後天的な発達障害が増えたのは確かでしょう。
親が、社会が、発達障害の壁を作ってしまう感じです。
ここには親子間の愛着形成不全も入るでしょうし、外遊び、自然な感覚刺激の制限も入ると思います。


年長さんの『就学の壁』は、そこを超えられるだけの準備が整っているか、幼少期にどこまで育ちきったかを確かめるための機会だといえます。
就学後の『小3の壁』は、概念理解がどこまで育っているかを確かめる機会。
低学年はパターン的な作業、理解で乗り切れますので、本当の意味で教科学習ができるのか、その準備が整っているかをここで確認する時期となります。
幼少期、いくら課題があろうとも、ここの壁が飛び越えれば、あとはその子のペースで学び続けていけるので、発達障害、発達援助とはおさらばです。
もし『小3の壁』が大きく立ちはだかるようでしたら、もう一度、10年間の発達を見返し、育て直すべきところを育て直す。
またどうしてもやっぱり超えられそうもないということになれば、支援や資源、サービスを利用しながらより良い人生を目指していくことも考えていかなければなりません。
一般の人達がイメージする自立は、小学校4年生レベルの習得になりますので、概念理解、概念学習の出来具合がポイントなのです。


2021年も多くの子ども達、若者たち、親御さん達と関わりを持つことができました。
そんな中で、子ども達の成育歴を振り返ったとき、いくつかのポイント、壁があるような気がしていました。
それぞれの壁が生じたとき、すぐにそれに応じた子育て、発達援助ができれば、現在が変わっていただろうと思うのは正直なところです。
「発達障害」と一言でいっても、それは何も言っていないのと同じです。
大事なのは、どの時点で発達に課題が生じたのかを知り、その課題をクリアできるように行動することなのですから。


ここでは取り上げませんでしたが、『胎児期の壁』もあるでしょうし(愛着、トラウマ、栄養、遺伝など)、『父親・母親になる壁』もあるでしょう(生物としての健康、環境からの影響)。
「三つ子の魂百まで」というのは、受精する前の一年間、受胎した約一年間(十月十日)と、生後の一年間を指すのだと思います。
改めて綴ってみますと、普通に育つということがどんどん難しくなってきているような気がしてきます。
『コロナ禍の壁』が加わった令和の子ども達は、いくつの壁を乗り越えないといけなくなるのでしょうか。
私達大人たちに求められる発達の後押しの責任は増すばかりです。




【先行予約のお知らせ】
12月3日より出版元である花風社さんで新刊の予約の受けつけが始まりました。
花風社さんで直接お申込みいただけると、特製のミニクリアファイルがついてきます。
書店で並ぶよりも早く読むことができますので、是非、ご利用ください。
ご予約はこちらから→https://kafusha.com/products/detail/56

前著『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』もどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!帰省、ご旅行の際、書店を覗いてみてください♪


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