子どもさんへの質問に、すべて答えるお母さん

先日、お手伝いした会で、印象に残ったお母さんと娘さんがいました。
会に参加するのは、娘さんだけ。
その娘さんを送るために一緒に会場にいらしたときのことでした。

他の親御さん達が「じゃあね」「終わったら、迎えに来るから」と言って会場を後にしていくのですが、その娘さんのお母さんは一向に離れようとしないのです。
ずっと娘さんの側に付きっ切り。
ボランティアの学生やスタッフが娘さんに話しかけるのですが、それに対する受け答えを本人ではなく、すべてお母さんがしていました。

事前情報として、この女の子は話すことが苦手だと聞いていました。
ですから、会が始まる前のお母さんの行動は、その娘さんをフォローしてのものだったように感じました。
しかし、会が始まり、時間が経過していくと、言葉は少ないですが、適切に受け答えをするのです。
時折、自分からも話しかけてきたりもしました。
自閉症の診断は受けていますが、通常学級で勉強している中学生の女の子です。

私が仕事で携わっているご家庭でも、このお母さんと娘さんのような方はいます。
私が子どもさんの方に話しかけているのですが、お母さんがすべて受け答えをされたり、お子さんが何かしゃべろうとしても、その途中で「こういうことだよね」と言ったりされます。
また会話以外でも、勉強やスキルを教えていたら「これが苦手です」「まだ習っていません」「前にやったときに間違って覚えたかも」と言うような方もいます。

できない部分を見るのも、私の仕事です。
ですから、できないままの姿でOKなのです。
できない様子から分析し、本人に合った学び方、成長の仕方を考え、実践していくのが発達を支援するということです。

また、失敗するのも一つの学びの機会なのです。
失敗から何を考え、どう変えていけるのかが大事なポイントです。
失敗こそが成長のチャンスだと言えます。
試行錯誤していく過程がなければ、成長することはできません。
「失敗経験をさせてはいけない」と言う方もいますが、失敗経験させることではなく、失敗経験を失敗のままにしておく支援者がただ下手くそなだけなのです。

会の活動中、積極的に参加している様子が見られました。
そして、参加者同士の会話にも入る様子も。
緊張し、無理をしていたかもしれませんが、会の後半の表情はとても柔らかい自然な表情でした。
お母さんの横で、ずっと俯いていた様子とは別人のようです。
会の終了後、参加者の子ども同士で会話していたことを伝えると、お母さんは大変驚かれていました。

苦手なことも、成長する可能性はあるのだと思います。
別に、うまくなる必要はないのですから。
苦手なものは、苦手なまま、上達していけば良いのです。
苦手な度合いが少しでも小さくなると、その分、生活しやすくなると思います。
ですから、苦手なことに挑戦する場面も、大事な学びの場面になるのです。

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