会話に発達が表れる

自閉症の人の話は、「長い」と言われることがあります。
要点を掻い摘んで話すのが苦手だから。
どうしても、詳細に、順を追ってすべて話そうとするから、クドクド長くなってしまいます。


自閉症の人から相談を受けるときは、時間に余裕を持たせるようにしています。
上記のように、話が長くなる傾向がありますし、途中で割り込むと、話が飛んだり、見失ってしまうことがあるので。
そして、こちら側も、ニュアンスや前提条件など、通常の会話で端折っている部分についても言葉に表す必要があるため、どうしても時間が長くなります。


しかし、そんな話の長さ、クドクドした説明も、自閉症の人の特性だとは思いません。
だって、発達のヌケ、遅れが育ってくれば、段々、会話がシンプルになってくるから。
つまり、自閉症の特性なんかじゃなくても、ただ単に発達の問題。
だから、あとからでも治るし、変わってくる部分。


支援者の中には、あたかも、こういったしゃべりが特性であるかのごとく、対応する人がいます。
もちろん、私も、相談時にはそのしゃべりに合わせますが、それは本人の発達のヌケ、遅れの具合を確認するという意味あいもあります。
決して、そのしゃべりのままで良いとは思っていませんし、聞いてて「もっと端的にしゃべって」と思うことも多々あります。
この長いしゃべりは、聞いている方も疲れるし、本人の脳だって疲れるのを感じます。
だから、治した方が良くて、そのために、育てた方が良いと思います。


端的に言えば、論理的に偏って話そうとするから長くなる。
つまり、左脳と右脳のバランスが悪いだけ。
ヒトは、言葉を介して会話をしつつも、肌感覚など、察することでやりとりしている部分もあります。
同じ共有した経験、感覚があれば、そこは端折る。
空気感で、「この話はもう良いかな」「これ以上、言わなくても、その先は察してくれた」などわかれば、端折る。
そして、臨機応変に話の内容に濃淡をつけていく。
これができるのは、感覚も使って会話しているから。


感覚面に発達のヌケや遅れがあれば、当然、ほかの部分に頼るしかなくなります。
それが論理的な部分、左脳です。
右脳<左脳の働き。
脳は右から左に発達していきますので、右脳を育てる時期に何かあったのかな、と推測できます。
右脳を育てるのは、2歳前後、言葉を獲得する前まで。
だから、身体アプローチで治っていく、感覚が育つから、言葉以前の発達段階のヌケが埋まるから。


「自閉的な思考」などと言われることもあります。
でも、それだって、本当に特性なのか、脳のタイプの違いなのか、変わらない部分なのか、怪しいと思います。
所謂、こだわりだって、情報キャッチがうまくいかないから、感覚面の育ちの偏り、バランスが悪いから、結果的にこだわる、とも考えられる。
全体ではなく、部分に注意が向くのも、そういう脳のタイプとも考えられる一方で、全体を感覚的に掴む脳力に弱さがあるから、どうしても部分にしか注意が向かない、とも考えられる。
こういったステレオタイプの自閉っぽさだって、発達のヌケが埋まっていった人たちは、薄まっていくし、柔軟さも出てきます。
ですから、「ただ感覚面で未発達、ヌケがあるだけでしょ」「右脳が育つ前に、左脳が育ち始めたのね」と思うのです。


脳の中を見ることはできませんが、脳の育ち、働き、状態は、その人のしゃべりに表れると思います。
会話の長さ、一文の長さ、声の抑揚&ピッチ、内容の濃淡、表現の仕方、同じ言葉を応用して使うか、表現の豊かさ&幅、会話の組み立てのパターン、割り込みへの対応…他多数。
こうして文字にして挙げてみると、会話の中身以外から感じている部分が多いことに気づきました(私の場合)。
でも、誤学習、誤認識、妄想を崩すときには、チャットみたいな感じで、とにかく文字にこだわり、論破を目指しますが。


自閉っぽさって、姿勢だけではなく、会話や思考にも表れますし、そのように紹介、表現されることが多いと言えます。
しかし、発達のヌケ、遅れが育ってくれば、そういった自閉っぽさも薄まってくるし、目立たなくなるし、治ったり、柔軟さが出てくる人だっています。
だから、久しぶりにかかってきた電話の声で、発達の進み具合がわかります。
治っていっている人は、会話が短くなるし、話がわかりやすくなる。
それに冗談が出たり、気づいたりするスピードが早くなる。
ヘンな四字熟語じゃなくて、わざとらしくない自然なたとえが出てきたりもします。


自閉症の特性と捉えると、そこで発達が止まってしまいます。
それが自閉っぽさと捉えると、そこで育もうとする手が止まってしまいます。
クドクド話すのを、ただ聞いているだけじゃ変わらない。
何が言いたいか分からない説明に対し、「要点よく話す会話術」みたいな自己啓発本を読んでも、ソーシャルストーリーで「どういう会話が望ましいか」みたいな文章を見せても、変わらない。
長いしゃべりを治す方法はなくても、感覚、右脳を育てる方法はありますね!

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