個人が、個人で治していける時代へと移り変わる時期

相談にいらっしゃる方達から、「どうして、同じ地域に大久保さんのような人がいるのに、支援機関の人達は教えてくれなかったのでしょう」と言われることがしょっちゅうです。
いつものことですから、私は「組合に入っていないからでしょうね」と答えています(笑)


支援センターとは、公的な機関であり、その地域の資源でもあります。
だから、本来は「この地域には、こんな資源、サービス、人がいて、現在の相談内容からしますと、こういった選択肢が考えられます」と提示すること、そして相談者の意思と選択を尊重した上で、相手の機関とつなぐことが役割だと思います。
最初から、紹介するところ、除外するところを決めておいたり、支援者側の都合で勝手に相談者の選択を誘導したり、決めたりするのはもっての外。


なんとか“センター”というくらいですから、地域という円の中心に存在していて、相談者の利益につながるような情報とアイディアと結びつける。
でも、実際は、地域という円ではなく、自分たちを中心とした円を勝手に引いてしまい、そこに入る組織と入らない組織かを見定めている。
青いお祭りは、いわゆる踏み絵です。
だから私は、誘われても「NO」と言い続けた。


結局、自分たちで引いた円の中に入った組織、人間だけで、パスを回し続けます。
障害者支援とは、利用すればするほど、儲かる仕組みだからです。
ちゃんとパスを返してくれる組織にだけ、パスを出す。
一つの機関で抱えていたら、その機関のみしか、回数が増えていきません。
ましてや、自分自身で解決したり、家庭での取り組みだけで治ってしまったら大変です。
だからこそ、お互い裏で悪口を言いながらも、支援機関、支援者同士で繋がりを持つ。
だからこそ、相談者に提供する情報は、支援者が事前に選別しているのです。


事業を起ち上げた当初、「あそこには挨拶行っといた方が良い」「あっちとは敵対しない方が良い」「あの人とはつながっておいた方が良い」などと言ってくる人達がいました。
その人達は親切心で言っていたのかもしれませんが、私には意味が分かりませんでした。


私が組織の中にいる人間なら、そういった振る舞い、行為をすることが、組織に適応し、地域に適応することへとつながったのかもしれません。
でも、私は事業を起ち上げたのです、独立したのです。
起業の醍醐味は、自分が掲げる理想的な社会、地域に向けての挑戦ではないでしょうか。
少なくとも、私はその挑戦権を得るために、独立したともいえます。


第一、私の挑戦は、この地域に選択肢を作ること。
「支援一辺倒ではなく、育ちを」
「子育ての主導権を、もう一度、家庭に」
「一生涯の支援から、自らの足で歩む人生へ」
既存の大きな組織、影響力を持った人間と手を結ぶというのは、地域の目で見れば、ただ既存の組織の外部機関が一つできた、ということと違いがありません。
既存の組織、特別支援の焼き増しをやるくらないなら、最初から起業などしないのです。


起業から6年目。
当初の理想であった地域の選択肢の一つになる、ということはまだまだ実現していません。
しかし、その一方で、この地域以外の方達から相談や出張の依頼が来るようになりました。


全国から依頼が来るようになったのは、私が地域の既存の組織と手を結ばなかったからだと思います。
起業当初に言われた「あそこに挨拶」「あっちの仲良く」をやっていたら、こういった今はなかったはずです。
どこの地域にもある従来の特別支援、療育を行う人間だったら、わざわざ他県から依頼が来るわけがないのです。
つまり、事業を起ち上げてから言われたアドバイスはすべて「この地域でうまく商売するには」という前提があったということです。
もちろん、起業時には「全国に出張して」などとは考えていませんでしたので、アドバイスの本当の意味には気が付いていませんでした。
でも、私に言い寄ってくる面々を見ますと、惹かれるような仕事、子育てをされていなかったため、「この人達の言うことは聞かない」と判断することができました。


どこの地域も同じだと思いますが、従来の組織は、「回数を増やせば儲かる」という仕組みに、体制として組み込まれてしまいました。
既存の組織、支援者たちに、この凝り固まった体制を批判することも、ぶっ壊すこともできません。
支援者のバイアスのかかった情報、アイディアしか得られない支援センターに、自立も、治るも存在しないのです。


これからは、自立した人、治った人とが、個人と個人でつながる時代。
自立したい人は、自立した人と繋がる。
治したい人は、治した人と繋がる。
地域の大きな組織、中心的な組織、支援者と繋がることの意義はなくなったのです。
むしろ、既存の体制に組み込まれる危険性があり、マイナスにすらなります。


自立や治すには、組織との繋がりは必要ありません。
必要なのは、主体的に考え、選択し、実行する力。
個人が、個人で治していける時代ですから、従来の「一生涯の支援」「支援者との繋がり」なんていう価値観をいち早く捨てたものから、治っていけるのだと思います。
まあ、既に若い世代の親御さん達は、そういった価値観すら最初から持っていない場合もありますが。
今、変化の時期なので、従来の価値観とこれからの価値観が混在しているのだと言えますね。



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