特別支援の外にこそ、真のニーズがある

日本の場合、お医者さんしか診断することができません。
ですから、発達障害の人達が通る医療の中で軽度化や症状が出ない状態までの治療がなされれば、医療が入り口であり、出口になります。


しかし、現在の医療では、発達障害を治療し、治すことができません。
なので、発達障害の人達の生活を支えるケアの必要性が生まれます。
それが支援や介助といった福祉です。


制度的、金銭的、人的、環境的な支えは必要ではありますが、生涯支え続けることは、本人も、社会も求めていないといえます。
「治らない障害の人たちなのだから、何もせず、ずっと福祉の中にいればよい」
決してそのようなことはなく、個々に合った学びがあれば、成長していく人達です。
そして特別支援教育が生まれました。


特別支援教育の目的は、その子の持つ資質を最大限伸ばし、将来の可能性を広げ、自立して生きていける社会人を育てることです。
そのために、普通学校の教育とは異なり、より個別的に、より柔軟な教育が行われます。


医療があって、福祉があって、教育がある。
それも公的に、誰でも利用することができます。
ある意味、定型発達の子どもを育てるよりも、多くの選択肢があり、多くの資源、サポートがあるといえます。
それなのに、どうして公的な機関を頼るのを止める人がいて、どうして民間の機関を頼る人がいるのでしょうか。


それは公的な機関に満たせないニーズがあり、公的な機関の外にニーズがあるからだと思います。
医療→福祉→教育と、特別支援がニーズと共に生まれてきたのと同じように、ニーズが民間の選択肢を生んだのです。
ニーズがないところに民間が出ていけば、いくら肩書や資格、資金等あっても淘汰されるのが当たり前です。


私は公的な機関を通って、民間になった人間です。
公的な機関で働いていたときにヒシヒシと感じていました。
公的な機関の限界を。
そして、本人、親御さん達のニーズを満たせていないことを。


私が感じた限界は、特別支援の中だけで、子どもを育てていくこと。
診断名をつけたところから、ずっと特別支援の中でどうにかしようとしているのがわかります。
結局、間に特別支援教育が入るけれども、医療と福祉の行ったり来たりであり、特別支援の世界から外に出ていく人がほとんどいない状況があります。


「親元を離れ、自立して生きる」
これは動物としての本能であり、長い進化の過程の中で遺伝子に組み込まれたものだと思います。
本人と家族の想いであり、ニーズです。


特別支援の中で完結できないのは、自立が存在しないからです。
特別支援の中で言われる「自立」とは、支援を受けながら自立“的”に生きていく、という意味ですから。
そして一番の問題は、子育てのニーズに応えず、治療と教育と支援にしてしまったこと。


発達障害とは受精した瞬間から現在まで続く発達の中に課題が存在するということ。
決して診断された瞬間から障害が生まれたわけではありません。
特別支援は診断から始まりますが、子育ては、子どもの発達は、その前から始まっているのです。
つまり、発達に障害がある子をどう育てていくか、どうすればより良く育っていけるか、これこそがニーズの中心だといえます。


親御さんがしたいのは、療育ではなく、子育てです。
本人が望むのは、特別支援の世界で生きることではなく、より良く発達、成長し、社会の中で自立して生きていくことです。
子育てに、資格も、エビデンスも必要はありません。
必要なのは、我が子がより良く発達、成長する姿のみ。
だから、親御さんは公的、民間にこだわらず、より良いものを求めて行動します。
「資格だ」「エビデンスだ」は、支援者間の陣取り合戦であって、子どもも、親御さんも興味が無いのです。
そういったものは、本人と親御さんの「自立したい」という欲求の前では、ただの音であり、文字でしかありません。


親御さんが求める子育てのニーズ、本人が望む自立のニーズが満たされない限り、民間の機関はなくなることがないでしょう。
むしろ公的だ、民間だ、という声がなくなるのが望むべき未来です。
何故なら、子どもを育てるとは、社会全体で営まれることだから。


今のように、特別支援の中だけで育つ子ども達の未来は良くないと思います。
発達障害を持った子ども達も、同世代の子ども達と同じように、地域の資源を使い、より良く育っていく。
必要なのは、特別なニーズを満たす場所を作り、分けることではなく、同じ地域の資源を使いながら成長していくこと。
ですから私は、子育ての中にニーズがあり、家庭での子育ての中に発達を促す力があるのだと考えています。
特別支援の外にこそ、真のニーズがある。

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