【No.1422】『脳の中身を見てみよう~AI時代の発達セラピー』を読んで

「自閉症だと診断されました」 「脳の機能障害だと言われました」 「じゃあ、息子さんは脳を調べられたのですね」 「いや、病院では脳の検査をしませんでした」 「問診と視診だけで、どうして脳の機能障害とわかったのでしょうかね」 こういったやりとりを数えきれないくらい行ってきました。 でも、これからの発達相談では 「側頭葉の島皮質に機能低下が出てたんです」 「脳神経の刈り込みがうまくいってなくて、部位同士の繋がりが強すぎるのが問題の根っこだとわかりました」 などと言われる親御さんも出てくると思いますね。 神経発達症は科学技術の発展により、治療対象になったのです。 脳波測定用のキャップを被り、脳波を定量的に見ることができる。 しかも数分間という短い時間で。 さらに定型発達とのずれをAIが分析してくれ、そこを刺激するアプローチもある。 以前の療育、支援とは別次元に入ったと言えます。 でも、日本全国津々浦々まで行きわたるには相当時間がかかると思います。 というか、日本の特徴として児童発達専門の医療機関、療育機関に行って、「じゃあ、脳機能をスクリーニングして、トレーニングにつなげましょう」と言ってくれる可能性は、宝くじに当たるくらいの確率でしょう。 簡単に言えば、発達障害の分野は科学と距離を置くことで発展、維持してきた分野です。 診断は成育歴と問診。 アプローチが先にあって、そこに子どもを合わせる療育。 本当に意味があるのか、効果があるのか。 たまたまその子の成長と重なったのか、評価するものはないし、その評価すら作ろうとしてこなかった。 「みんな発達障害で、みんなが理解し、支援を受ければ、それでよし」 誰のせいでもなくて、誰かが頑張る必要はない。 だって、生まれつきの障害で受容しなきゃならないから。 「多様性万歳!」を叫んでいれば、誤診だって、過剰診断だって、向精神薬だって、アンパンマン療育だって問題なし。 医療も、福祉も、支援者も、みんな、生きていける。 口を開けて待っていても、この書籍で紹介されている検査、治療アプローチは降ってきません。 長い間で構築された発達ギョーカイに自浄努力、自ら当事者ファーストに変わることを期待しても難しいでしょう。 だから、こういった方法があることを知ることが大事。 海外ではすでに実践され、米国小児科学会では薬物よりも優先順位が高い位置づけになってい...