【No.1288】家族が育てたらゼロ円

河野氏は隔離期間が終了したあと、こう言うだろう。
「私はワクチンを打っていたから、軽症で済んだ」と。
そして、きっとこの報道を目にした人達の中には、「ほらみろ、重症化予防だよ、ワクチンの効果は」となる。
自らの接種を肯定し、また4回目と言われれば、ホイホイと接種に出かける。


発達障害の世界においても、このようなパターンは20年以上、繰り返されている。
「早期診断、早期療育をしたから、落ち着いて過ごせている」
「療育を頑張ったから、毎日、学校に通えている」


早期診断、療育を受けたから、落ち着いて過ごせているのかはわからない。
もしかしたら、早期診断、療育を受けなくても、落ち着いて過ごせる子だったかもしれない。
そればかりか、支援の世界では「落ち着いていること」「毎日学校に行けていること」が評価ポイントになるが、それは支援の目的が将来、介護しやすい障害者を作ることなので、本当に落ち着いていることがその子の幸せか、本当の資質かはわからない。
この前も長年通っていた療育、特別支援の世界から離れ、一つずつヌケを育て直していったご家庭の男の子は、久しぶりに会うと活発で、よくしゃべるひょうきんな子になっていた。
この子は穏やかな子だったのではなく、自らが出せなかった子なのでしょう。


私はありがたいことに(?)、治る系支援者のほうに分類してもらっています(笑)
「大久保の発達相談を受けてから、息子が治った」なんてことをおっしゃる親御さんや、SNS等で私のセッションを紹介してくれてポジティブな感想を発信してくれる親御さんもいますが、それもまったく同じパターン。
順序で言えば、発達相談→良い変化、治る、かもしれませんが、私がきてもこなくても、治ったかもしれない。
むしろ、私のアドバイス、見立てが間違っていて、発達の妨げになっていることすらあるでしょう。


結局、その子が発達障害かどうかすら怪しくて、世界中、誰にも証明することができないのです。
なので、療育の効果も、支援の効果も、私の発達相談、援助の効果も、誰にも分かりません。
よって、そんなわけもわからないもんを提供している私達支援者よ、「偉そうにするな!」と言いたい。
なにか自分たちが良いことをしているような気になっているが、なにか自分たちが専門的な知識と技能をもって特別なことをやっているような気になっているが、すべて勘違い。
反対に、発達を妨げているかもしれないし、自立を遠ざけているかもしれない。
もともと放っておいても治っていたかもしれない子に対して無駄に介入してる可能性だってある。
そんな自覚と思いがあるから、私は公的な資金が入る形態にはしなかったのです。
自分の財布から出たお金で失敗しても、それは勉強料になるが、出先が税金だったらただの無駄遣いだし、社会全体のマイナスになる。


民間の支援者、療育者でいえば、この頃、細分化が目立ちます。
私が開業した10年くらい前は、障害を持った人が利用するのはほぼ公的なところでした。
福祉法人、医療法人がやっているところでも、必ず公的な資金が入っていたのです。
だから、私のように100%、利用者のお金というところはほぼなかった。
それから10年が経ち、私も相当怪しいと思いますが、そんな私が見ても、「やばいな、この人達」と思うような支援者、療育者が増えました(笑)
しかもやっていることが、とてもマニアックで、重箱の隅を突っつくような感じで、「愛着障害を持つ人が食いつくんだろうな」「うちよりも儲かりそうだな」と見ています(笑)


このマニアック化の流れは、続いていくと思います。
何故なら、「専門的な」「特別な」「あなただけが気づいている」というメッセージは、安心と優越感につながるから。
ぶっちゃけ発達障害の世界は、不安商法でしょ。
子どもの発達の"不安"、子育てをしていく"不安"、就学の"不安"、進路の"不安"、自立の"不安"、親亡き後の"不安"。
その不安を対象に商売が成り立っている世界。
もしなんの不安もない親御さんが、我が子の発達の遅れに気がついたら、「どうやって、そこの苦手な部分を育てていこうかな」と考えるでしょう。
そうやって家族が育てたらゼロ円。
そこに発達障害というレッテルを貼り、療育という名をつければ、医療と福祉にお金が入ります。


〇〇療法とか、〇〇メソッドとか、いろんなのがありますが、ちょっと通っただけで劇的に変わるなんてことはあり得ません。
もちろん、神田橋先生のような達人、神様みたいな人もいるでしょうが、99.99%の人にそんな力はない。
そんなに効果があるのだったら、列をなさないでしょう。
そんなに効果があるんだったら、SNSなんか必死にやってないはず(笑)
お客さん殺到で、その地域だけ発達障害が減少に転じているのならホンモノだと思いますが。
だからみんな、親御さんの不安軽減を目指して忖度し、いかに「あなたは特別な方略を選択したか」を伝えているのです。


私は、そもそもが「誰かに治してもらおう」「なにか外に特別なものが、答えがある」という考えだから、治っていかないのだと思っています。
誰の子なのですか?
我が子のためにあれこれやってあげることが子育てだと勘違いしている人が多い気がします。
それは子どもの頃からずっと点数や目に見える形、モノで評価され、モノの多い少ないが己の価値だと錯覚している愛着形成に不全を抱えた人の特徴になります。


子どもにしてみれば、「外にばっかり目を向けないで、行かないで」となるでしょう。
発達の遅れは外にはありません。
目の前にいる我が子の内側にあるのです。
「私の内側にある発達の遅れを、私が育てて行くから、応援してね、お母さん、お父さん」
そんな声が聞こえてくることが少なくありません。
知らないおっさん、おばさんに背中を押してもらうよりも、お母さん、お父さんに背中をおしてもらいたいはずです。
新幹線や飛行機に乗って、遠くの専門家に会いに行くより、お母さん、お父さんと一緒に遊びたいはずです。


世の中が不安定になればなるほど、世の中の流れが早くなればなるほど、人々の意識は外側に向いていきます。
見通しの持てない時代だからこそ、なにか確実で目に見えるものを欲するようになります。
それが肩書や権威だったり、お金だったり、インスタントな変化だったり。
でも、子育てって、これらすべてと離れたところに存在している。


子育てって時間がかかるし、不測の事態ばかりだし、答えがないもの。
だからなによりも己の軸が必要なんです。
どんな時代、状況、環境になろうとも、こうやって育てて行くんだ、こうやって育ってほしいんだ、という軸。
しかし軸を作るには、自分が見たくないところまで見なければならない。
どうして我が子の発達に悩むのだろうか。
どうしてゆっくりな発達にイライラするのだろうか。
どうして私は我が子を心から愛せないのだろうか。
どうして自分の子育てに自信が持てないのだろうか。
そして、どうして我が子に発達の遅れが出たのだろうか。
どうして我が子は治っていかないのだろうか。
どうして我が子が治るまで、待ってあげられないのだろうか。
それを信じ切れないだろうか。


アセスメントも、発達援助も、根っこを掴み、問題の本質からアプローチすることが大事です。
親御さんご自身の悩みや不安を支援者は一時的にしか軽くすることができません。
発達とは生活の場で生じることであり、日常であり、子育ての中に存在するものです。
なので、よりよく育つための環境としての家庭、親に向けて、根本から変わることを目指してもらいたいと思っています。
私の仕事は家庭支援であり、親御さんがよりよく変わることで、子どもと一緒に発達、成長していくことを目的としています。
治ること以上に、家族の幸せ、子ども時代のきらめくような思い出、親になって良かったなと心から思えること。
社会に飛び立っていった若者たちを見ていますと、これが一番大切で、自立に繋がっていると思わずにはいられないのです。




☆『医者が教えてくれない発達障害の治り方』のご紹介☆

まえがき(浅見淳子)

第一章 診断されると本当にいいことあるの?
〇医者は誤ることはあるけど謝ることはない
〇早期診断→特別支援教育のオススメルートは基本片道切符
〇八歳までは障害名(仮)でよいはず
〇その遅れは八歳以降も続きますか?
〇未発達とは、何が育っていないのか?
〇就学先は五歳~六歳の発達状況で決められてしまうという現実
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのメリット
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのデメリット
〇療育や支援とつながるほど、子育ての時間は減る

第二章 親心活用のススメ
〇親子遊びはたしかに、発達に結びつく
〇変わりゆく発達凸凹のお子さんを持つ家庭の姿
〇学校は頼りにならないと知っておこう
〇安定した土台は生活の中でしか作れない
〇支援者が行うアセスメントには、実はあまり意味がない
〇親が求めているのは「よりよくなるための手がかり」のはず
〇人間は主観の中で生きていく
〇専門家との関係性より親子の関係性の方が大事
〇支援者の粗探しから子どもを守ろう
〇圧倒的な情報量を持っているのは支援者ではなく親

第三章 親心活用アセスメントこそ効果的
〇子育ての世界へ戻ろう
〇その子のペースで遊ぶことの大切さ
〇「発達のヌケ」を見抜けるのは誰か?
〇いわゆる代替療法に手を出してはいけないのか
〇家庭でのアセスメントの利点
1.発達段階が正確にわかる
2.親の観察眼を養える
3.本人のニーズがわかる
4.利点まとめ
〇家庭で子どもの何をみればいいのか
1.発達段階
2.キャラクター
3.流れ
4.親子のニーズの不一致に気を付けよう

第四章 「我が子の強み」をどう発見し、活かすか
〇支援と発達援助、どちらを望んでいますか?
〇子ども自身が自分を育てる方法を知っている
〇親に余裕がないと「トレーニング」になってしまう
〇それぞれの家庭らしさをどう見つけるか
〇親から受け継いだものを大切に、自分に自信を持とう

あとがき(大久保悠)


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