【No.1291】ヒトという動物としての躍動した発達を

人というのは、つくづく「外のことはよくわかるんだな」と思いますね。
裏を返せば、自分のことはよくわかっていない。
まあ、わかっていないから、他人のことをズケズケと言えるんだなとも思います。
私の仕事なんて、その最たるもので、ひと様のおうち、お子さんのことだから、客観的に見え、あれこれと言えているんだと思います。
違うのは、その自覚があるかと、他の療育機関、支援者と異なり、忖度&接待をしないところですかね(笑)
妻に訊けば、子ども達に訊けば、理想の父親とは程遠いでしょう。
だからこそ、あまりしゃしゃり出ずに、子ども達の生きる力、伸びる力をただただ信じようと私は思っています。


この仕事を続けていくと、多くの人達と出会います。
そして何よりも自分のことがよく分からないという人間の習性が見えるのです。
私はよく「発達障害のうち、90%以上は誤診」と言っています。
でも、勘の良い人はお気づきの通り、これは「90%以上の人は、環境側の要因によって発達障害に"されている"」と言っているわけです。
もし単純に、本人だけの問題で、本人が抜かした発達とその遅れが原因だとしたら、私が施設を起ち上げて、そこでセッションをすれば良いわけです。
遠方の人なら、一週間から1ヶ月くらい来てもらって、そこで毎日、プログラムをこなしてもらえばいい。
でも実際は、そんな施設を作っても無駄でしょ。


一応、私は日本に3施設しかなかった自閉症児の専門施設にいましたが、いくら専門的なスタッフが24時間、365日、計算されたプログラムを行っても、根本からの改善はできませんでした。
きっと今のような知識があったとしても、治るは無理。
まあ、リアルな自閉症の人、最重度から測定不能の知的障害を持った人、強度行動障害を持った人だったというのもあるけれども、そこまで問題をこじらせ、知的発達が進めなかったのは、本人側というよりも、環境、家族、成育歴の中に問題があるから。
そこから治していくためには、施設では限界があり、やはり家族、成育歴の中に立ち返り、戻っていくしかないのです。


「私は治った側です」というけれども、実際は「治っていないでしょ」と思うことがある。
反対に「私は治っていない側です」というけれども、実際は「治っているでしょ」と思うこともある。
そして「治った」と見える人の中にも、当然、治っていない部分があり、「もう少し行えばもっと治るんだけどな」「治り切ってはないよな」と思うこともあります。
たぶん、これは私が三代にわたる視点で、治ったを見ているからでしょう。


面談をすると、親御さんの中に発達障害の面影を見ることがあります。
このように働き、自立した生活をし、家族を持っているので、世間一般から言えば、治った人だといえるでしょう。
しかし実際には、我が子にも発達の課題が表れ、こうやって子育てに悩まれている。
親御さんの悩む根っこを辿っていけば…
・感覚的に「治った」「成長した」「良い方向に進んでいる」が分からない
・遊び方が分からない
・子どもとの関係性がうまく作れない
・マニュアル通りにはできるんだけれども、アプローチを創意工夫して変化させることができない
・続けることができない
・そもそも自分の身体を自由自在に動かせない
・よって日々の生活で精一杯で子育ては無理
・"愛する"が、"心地良い"が実感としてわからない
・自分の親への恨みが、してほしかったことが、子どもに、自分の子育てに乗り移る


で、これらの問題はどこで生じたかといえば、親御さんの子ども時代、その親御さんが育った環境、さらにいえば、親の親との関係性に始まっている。
親御さんが胎児だった頃から幼少期、子ども時代を通して作られていった問題が、いざ、自分が親になり、子育てとして向き合ったとき、我が子の「発達障害」という形で現れる。
ですから、三代続くといえますし、子どもの発達障害を治していくには、まずは親である自分の課題と向き合い、解決する必要があるのだといえます。
そこでけりをつけておかなければ、目の前にいる子を自立、治ったまで後押しできないし、その次の世代、我が子が親になったとき、自分と同じような状況と向き合うことにもなる。
小さいお子さんの場合、祖父母の方が同席されることもありますが、これを実感しますね。


自分自身の課題、そして我が子に発達が遅れた原因、その要因と向き合うことは、とても辛いことだと思います。
だけれども、大人である私達がそこから逃げてはいけないと思います。
何故なら、今の子ども達だけではなくて、その次の世代にも関わってくるからです。


日本の乳幼児、子ども達の死因で多いのは、先天性の障害・病気でも、不慮の事故でも、ガンでも、自殺でもありません。
この国では、一年間で15万人前後の人工妊娠中絶が行われ、命を失っているのです。
そのほとんどが若年層、10代、20代の若い世代の人。
つまり、妊娠適齢期があり、私達も動物であるということです。
平均寿命が50歳を超えたのは、戦後1950年代になってから。
人類700万年、祖父母の世代までは10代、20代で子を産み、我が子が子を持てる歳まで育った頃に、人は死んでいたのです。
もし妊娠に関する医療技術が向上しているというのなら、今頃、ベビーブームが起きているはずです。


祖父母の世代までは、「元気な子どもを産めるように」と食べ物や運動、姿勢やどういった刺激を受けるかまで、きめ細かく教えられてきたものです。
それが「時代錯誤だ」「人権侵害だ」などと言われますが、ヒトはどう頑張っても動物なのです。
自然の流れから逸脱したとき、動物としての生命に不具合が生じるのは当然の結末。
私達は、食べたいときに食べたいものを食べ、遊びたいときに遊びたいことを行ってきた。
そのときの欲求、欲望のままに生きてきてしまったのではないでしょうか。
そして誰も、それが問題だと、未来に繋がる問題だと教えてくれる大人たちがいなかった。
だから、今の子ども達が苦しんでいるのだと思います。
私達今の子育て世代は被害者でもあり、加害者でもある。


放射能もそうですが、「ただちに」は人体に影響を及ぼさないものです。
しかし、添加物、化学物質、石油由来の薬は、月日をかけて体内に蓄積される。
もちろん、親子の愛着形成の不全さ、トラウマ、脳や身体の歪みは、蓄積の形が思考や行動となって表れる。
だから、「発達障害を治す前に、まずは自分でしょ」と言っているのです。
「流産したあとの次の子は健康な子が生まれる」と言われているのは、体内に溜まった悪い物を全部子どもが持っていってくれるから。
動物としての解毒の形なんですね。
正直、発達障害児における解毒治療というのは、そこじゃないよなって思います。


今までの人生を振り返れば、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、東日本大震災というような大きな出来事がありましたが、今がもっとも不安定な時代だと感じています。
そしてまだ底を打っていない。
本当に大変な時期は、これからやってくると思っています。
ですから、チャンスは今しかない。
特にコロナ騒動で、みんなが「おかしいな」と気がついた今に。
日々生きるだけで精一杯になったら、自分のことを冷静に考え、変わろうと動けはしないはずです。
私達は、子どもに生じた不具合、発達障害という問題を通して、自分自身を顧みて、自分のダメさに向き合う必要があると思います。
大いに反省し、そして我が子と次の世代の子ども達に、動物として、日本人として大事なことを伝えていく責任があります。


「今だけ、カネだけ、自分だけ」で生きてきた戦後生まれの先輩たち。
そんな先輩たちを、GHQの占領政策を、政治家たちを「悪い」「あいつらのせいだ」とののしっても、何も生まれない。
わたしたちには、発達障害を治す責任があるし、これ以上、発達障害の子ども達を生まないように行動していく必要がある。
自分の寿命が尽きるとき、今が時代の分岐点だったと思うことでしょう。
私は発達援助という仕事をしています。
だから、発達援助という仕事を通して、より良い社会と未来を創っていくために行動しなければなりません。


今まで通り、「診断受けて、自分のせいじゃないって安心して、療育に通って、特別支援を受けて、進路指導の先生が勧めてくれる福祉事業所に行って、はい、親としての務めはおしまい」なんて無理。
子どもの発達はお金では買えないという当たり前の現実と向き合わなければなりません。
お金が無くなったとき、もう一度、日本が貧乏になったとき、本当の発達、ヒトという動物としての躍動した発達が起きるのだと思うのです。
そういった意味では、これからやってくる未来が楽しみでもあります。




☆『医者が教えてくれない発達障害の治り方』のご紹介☆

まえがき(浅見淳子)

第一章 診断されると本当にいいことあるの?
〇医者は誤ることはあるけど謝ることはない
〇早期診断→特別支援教育のオススメルートは基本片道切符
〇八歳までは障害名(仮)でよいはず
〇その遅れは八歳以降も続きますか?
〇未発達とは、何が育っていないのか?
〇就学先は五歳~六歳の発達状況で決められてしまうという現実
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのメリット
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのデメリット
〇療育や支援とつながるほど、子育ての時間は減る

第二章 親心活用のススメ
〇親子遊びはたしかに、発達に結びつく
〇変わりゆく発達凸凹のお子さんを持つ家庭の姿
〇学校は頼りにならないと知っておこう
〇安定した土台は生活の中でしか作れない
〇支援者が行うアセスメントには、実はあまり意味がない
〇親が求めているのは「よりよくなるための手がかり」のはず
〇人間は主観の中で生きていく
〇専門家との関係性より親子の関係性の方が大事
〇支援者の粗探しから子どもを守ろう
〇圧倒的な情報量を持っているのは支援者ではなく親

第三章 親心活用アセスメントこそ効果的
〇子育ての世界へ戻ろう
〇その子のペースで遊ぶことの大切さ
〇「発達のヌケ」を見抜けるのは誰か?
〇いわゆる代替療法に手を出してはいけないのか
〇家庭でのアセスメントの利点
1.発達段階が正確にわかる
2.親の観察眼を養える
3.本人のニーズがわかる
4.利点まとめ
〇家庭で子どもの何をみればいいのか
1.発達段階
2.キャラクター
3.流れ
4.親子のニーズの不一致に気を付けよう

第四章 「我が子の強み」をどう発見し、活かすか
〇支援と発達援助、どちらを望んでいますか?
〇子ども自身が自分を育てる方法を知っている
〇親に余裕がないと「トレーニング」になってしまう
〇それぞれの家庭らしさをどう見つけるか
〇親から受け継いだものを大切に、自分に自信を持とう

あとがき(大久保悠)


『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』をどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!ご購入して頂いた皆さまのおかげで二刷になりましたm(__)m


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