【No.1293】触れることで我が子と繋がる

学生時代、木曜日の夕方は決まって盲学校にいました。
生徒さんの放課後の活動、マラソン伴走のボランティアです。
お互いが一つの輪っかを手に持ち、その状態で走りだすのですが、最初は息を合わせるのが大変。
どうしても目が見える私は、視覚に頼ってしまい、生徒さんの動きを確認しながら走るペースを調整します。
が、それだと走りづらいんですね、生徒さんのほうが。
自分の動きを見られているのも感じるらしく、私が合わせようとする行為自体が却ってぎこちなさを生みます。


盲学校のボランティアは3年間続けました。
その中で、いつしか生徒さんの動きを見ないほうが、どのように走りたいのか、わかることに気がつきました。
視覚ではなく、手に持っている輪っかに意識を向ければいい。
その持ち方、力の入れ方、そして息づかいまでをもが一つの輪っかを通して私の手に伝わってくる。


手というか、触れることは、相手の感情、内側との繋がりを生む。
子どもと手をつなげば、その子がどちらに行きたいのか、どんな気持ちなのかが伝わってくる。
「病院、へっちゃら」と言っても、その手に力が入っていれば、その手に汗を感じれば、言葉とは違った感情を知ることができる。
「ママ嫌い」と言っても、その手に柔らかさや温かさ、ギュッと指を握ってくる感じがあれば、子どもからの愛を感じることができる。
だから、触れる、触れ合うという行為は、相手を知るためのコミュニケーション、やりとりでもある。


私はもっと親子で触れ合いの機会を持った方が良いと思っています。
スキンシップは小さいときだけ、というのが日本的な考え方、文化なのでしょうが、それにしても親子の触れ合いが少なすぎるような気がします。
特に胎児期から2歳前後の間に発達のヌケを持つことが多い発達障害の子ども達には、その触れ合いがとても重要です。
視力の発達から言っても、2歳くらいまでは視覚よりもその他の感覚のほうが先に機能していて、手や足、皮膚を通した感覚刺激が発達の土台を培っていくといえるのです。
皆さんが行っている金魚体操も、意識は揺らす、揺れるに向かいがちですが、本当はその手で子どもさんの足に触れることのほうが意味深いこともあるような気がします。
この時期の愛着形成に関しても、目や耳、モノや言葉ではなく、やはり肌と肌とが触れ合うことで培われていきますね。


親御さんだけではなく、支援者の中にも、子ども達が感じている快・不快が「わからない」とおっしゃる人は少なくありません。
たぶん、その多くは目で見て快・不快を感じようとしているからだと思います。
ですから、「楽しそうにやっているから」という理由で、それが快であると判断してしまう。
でも、子どもさんによっては、やることがないからやっている子もいるし、そのようにやれと教わったからやっている子もいる。
本当に快か、不快かは、見ただけでは分からないものです。


日々、親子での触れ合いがあれば、「触れるようにして見る」ことができるようになるものです。
私達支援者は、他人ですので、安易に子どもさんに触れることはできません。
だから、「触れるようにして見る」を訓練し、身につけていきます。
だけれども、親子なら自然に触れ合えるのですから、その触れ合いを通して子どもの内側と繋がり、その体験の積み重ねが見ただけで、まるで触れているかのように感じられるようになるのです。
難しい訓練も必要なく、ただ純粋に我が子を抱きしめ、触れ合いさえすれば良い。


そうはいっても、親御さんによっては、ご自身が「触れる」ことが苦手な人もいます。
触れて相手の内側を感じられないというのは、自分自身が子ども時代、親から触れられた経験が少ないから。
または自分の親に抱きしめてもらいたかった想いを無意識下に追いやった結果、なんだかわからないけれども、子どもに触れたくない、子どもに触れる行為自体がぎこちない、違和感がある、そもそも触れたいとは思わない、という状態になっている人もいるように感じます。


視覚に偏った生活をしていると、首から下の感覚が乏しくなっていくものです。
それもまた我が子との触れ合いを妨げる原因の一つになるでしょう。
快・不快も、治ったという感覚も、目で見ただけではわからない。
当然、ネットや本にも、それがどういった状態なのか、どうなったらそうだといえるのか、記されているわけでもありません。
そもそもが同じ身体の子はいないのですから。
個別に感じ撮るしかないのです。


やっぱり自分の身体を通して感じること。
そのためには親御さん自身の身体を整え、ヒトとして、動物として本来の感覚を撮り戻していく必要があると思います。
そして日々、我が子に触れ、我が子の内側と自分とが繋がっていることが大事。
この夏、外遊びも大切ですが、子ども達との触れ合いも大切にしていただければと思います。




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8月25~28日の日程で福岡に行きます。
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内容は一つ前のブログでご確認ください。


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