【No.1093】生きている実感を得るために、自らを育てようともがいている

まずは業務連絡から。
先週末、九州でお会いした皆様。
今朝、郵便局より報告書を郵送いたしました。
コロナの影響で、通常よりも3~4日、遅れるとのことです。
もうしばらくお待ちくださいませ。


ということで、先週末は九州に出張していました。
九州の匂いというのでしょうか。
外を歩くと、北海道とは異なる植物、田んぼ、花や木々の匂いが、子ども時代、私が確実に「ここにいた」という実感を持たせてくれます。
そしてまた、自分の意思と決断、選択により、こうやって自由に行きたいところに行き、やりたい仕事を行うことができている。
これも私の中で「今、私は生きている」という実感を得ることに繋がっているのだと思います。


発達相談において、この実感も、大事なアセスメントの視点になります。
常時動きまわっている子、ピョンピョン跳ねている子、クルクル回っている子、大きな声を出している子、唸っている子、他人にとにかくぶつかっていこうとする子。
こういったお子さん達を見て、専門家は「それがADHDだから」「それがASDだから」というかもしれません。
しかし、それは表面的な話であって、子ども達の内面を捉えたものではありません。
子ども達の行動には、必ず目的、意図があるものです。
こういった行動の背景には、子ども達自ら発達させよう、育てようとする目的を感じます。
そしてその目的へと向かわせる内なるエネルギーとは、「今、私はここにいる」という実感を得るためなんだと思うのです。


発達のヌケが埋まり、感覚や身体が育ってくると、「自分がいることがわかった気がします」というようなことを言う人たちがいます。
彼らは学生だったり、社会人だったりするのですが、そんな彼らでも自分という実感が乏しかったことが分かります。
前庭感覚や固有受容覚が育っていなければ、動くことで感じる自分がわかりません。
身体の軸が育っていなければ、自分が空間のどこにいて、何が好きで嫌いかがわかりません。


自分という存在がはっきりして初めて、目の前にいるあなたのことも、実感を持って感じることができる。
自分という存在がはっきりして初めて、実社会の中に出ていくことができる。
ですから、神経発達症を持つ人達の中には、他人との関係を築くことが難しかったり、外部との関係を持とうとしなかったり、はたまた一部の人や情報、環境に大きく影響を受けたりするのだといえます。
そういう意味では、神経発達症の人たちは支援との相性が良いのです。
自分が乏しい→支援に寄りかかる→自分が育たない→支援に依存する…。
こうやって支援者にとっては、コントロールしやすい利用者が作られていく。
いくら支援を受けても自立できないのは、自己が育っていかないからです。
「失敗させない支援」など、お膳立てされた生活の中に、生きている実感が入る余地はありません。
いろんな成功や失敗を体験することで、人は「今、私は生きている」という実感を得ることができるのです。


発達相談でお子さんを見たとき、どのくらいの実感が得られているかを感じとります。
そこから、どのくらい発達のヌケ、遅れがあるかがわかるからです。
多くのヌケがある子は、他人に気づかず、自分だけの世界の中にくるまっている感じがします。
次の段階は、世の中をテレビを観ているように見ている子。
周りの存在に気がついているんだけれども、そこに登場人物としての自分がいません。
その次の段階は、関わりがあると反応する子。
そして、自ら対象に近づいていく子→一方的な関わりをする子→相手の反応を受け止められる子というように進んでいきます。
その発達の進み具合は、神経発達のヌケ、未発達の育ちとリンクしているように感じます。
身体&感覚の発達があっての社会性なので、社会性はSSTなどで教えるものではなく、育つものなのです。


発達援助、身体アプローチは、単に本人のラクを生むためのものではありません。
身体という土台の発達は、自分という実感を得ることに繋がります。
自分があって初めて他人の存在に気が付くことができる。
その他人との関係性を築くことができる。
最初の他人が家族であるように、家族・家庭こそが最初の社会です。
最初の社会の中で、しっかり育ち、育むことが、次なる社会に出ていくための準備になりますし、それが将来の自立と主体的な人生へとつながっていきます。


「生きている実感を得るために、自らを育てようともがいている」
そういった雰囲気を感じられると、共に暮らす我が子の姿に、自らの子育てに奥行と幅が出るような気がします。




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