【No.1092】治り方の選択の時代に生まれた新たなニーズ

世の中には、治せる実践家の人がいます。
その場でトラウマを処理することができたり、発達のヌケを見抜いて、そこを育て直す施術をすることができたり、短い時間でのセッションによって参加者の表情・身体をガラッと変えることができたり…。
そういった治せる実践家の人たちの姿を見るたびに、私も同じように、そのとき、その場で治せるようなスキルを身に付けたいと思っていました。


しかしあるとき、ふと思ったのです。
幸運にも、同じ時代に治せる実践家の人たちがいる。
だったら、そこはその実践家の人たちにお任せして、私自身は違う道で神経発達症の子ども達が治るお手伝いをするべきではないか、と。


そもそもが選択肢を作ることを目的とした起業でもありました。
発達に遅れがみられれば、どの子も同じ病院に行き、同じような診断名を受け、同じような療育を受ける。
療育を受けたからといって何かが劇的に変わることはなく、みんな揃って特別支援教育の世界に入り、12年後にもみんな揃って福祉の世界に入っていく。


無料で食事はできるけれども、いつものり弁。
たまに、漬物がついたり、タマゴがついたり、昆布がのったりするけれども、のり弁はのり弁。
「無料だから、いいだろう」なんて言って、のり弁を配る支援者に文句も言えず、他のメニューがあることも知らずに、黙々と食べ続ける姿。
私が当地で見てきた障害を持った子ども達を取り巻く環境は、このようなイメージでした。
誰一人満足はしていないけれども、冷え切ったのり弁を食べているような感じ。
だからこそ、自分には何ができるかはわかりませんでしたが、「のり弁以外もあるよ」「カレーも食べれますよ」と、選択肢の一つになることを目標にしました。


お蔭さまで全国各地に呼んでいただけることが増えましたが、まだまだ各地域には選択肢がない状態が続いています。
のり弁が好きで食べているのなら、何も言うことはありません。
でも、のり弁しか知らず、それを食べているのだったら、残念なことです。
「脳の機能障害」「生まれつきの障害」「治らない」
これは一つの見解であり、過去に信じられていたものです。
今は脳ではなく、神経の問題、それも神経同士の繋がりの問題が常識になっています。
神経の問題なら、刺激や環境、運動によって神経ネットワークが変化します。
ですから、「治らない→支援と療育」ではなく、「治る→身体アプローチ」「治る→栄養」「治る→遊び」という治り方、子育ての仕方の話になったのです。


「治るか、治らないか」の選択ではなく、治り方の選択の時代。
そのような時代において、今、子育てをされている親御さん達には新たなニーズが生まれたと思います。
それは『治り方の選び方』。
つまり、我が子にどの治り方、子育ての仕方、アプローチの仕方が良いのか、望ましいのかを判断するという点で悩みが生じていると思います。
みんな治らず、地域にも選択肢がない状態ですと、そのような悩みを持つ必要はなかった。
治るからこそ、治り方を選ぶために必要な我が子の状態、発達を見る目、確認する力が必要になっているといえるのです。


子どもの状態、発達とは、ひと時も同じことはありません。
日々、神経発達は変化しますので、今日行ったアセスメントが1ヶ月後にも役立つとはいえないのです。
日々の生活の中で、タイムリーにアセスメントすることが、より適切な治り方を選ぶために有効だといえます。
子育ても、発達援助も、その子一人のためのオーダーメイドでなければなりません。


治せない私だからこそ、アセスメントの道で、親御さん達の"治す"を後押ししようと考えました。
私の発達相談を受けても、その場で子どもさんが変化することはありません。
でも、親御さんの子どもを見る目、アセスメントの力が深まれば、同じ子どもさんだけれども、違った側面、姿が見えてくるものです。
子ども達の行動、遊びには、必ず意味があるものです。
その意味の多くは、自分自身に必要な発達を遂げようというもの。
日々の生活の中で、子ども達が今、何を育てたがっているのかがわかれば、何をしたらよいのだろうと悩んだり、「あれもこれもしなきゃ」と焦ったりすることが減ると思います。
私が目指すアセスメントとは、今、子どもが育てたい発達課題を知るための視点です。


このたび、大変ありがたいことに、花風社の浅見さんに栗本さんと対談させていただく機会を作って頂きました。
テーマは、『医者が教えてくれない育ちのアセスメント』です。
まさに私が追求してきた内容であり、全国各地でご活躍されている治せる実践家の栗本さんに、私の見解を問い、深めていただきたいと思っております。
そして深めていただいた見解を、参加される皆様と一緒に共有できたら嬉しいです。


日時は9月13日(日)13時半から15時半くらいまでの予定です。
花風社さんで本を注文されたことがある方には、今朝、講演会のお知らせが届いたと思います。
今後、それ以外の方の参加申し込みの案内もあると思います。
その際は、このブログでも改めて紹介させていただきますので、どうぞ、よろしくお願い致します。
この企画の意図を書いてくださった花風社さんのブログは、こちらです。




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