【No.1031】目の動きの遅れ、言葉の遅れ、その引き金は?

ありがたいことに、こういった状況の中でも、出張の問い合わせ、依頼をいただいております。
確かに、新型コロナはよくわからなくて怖いけれど、いつまでも恐れて止まっているわけにはいきませんね。
特に、子どもさんは成長著しい時期を1日、1日と過ごしているんですし、最近、発達の遅れがわかった親御さんにとっては、コロナ以上に我が子の今と将来が気になるはずです。


雰囲気的に、国内は5月上旬くらいから落ち着いていくでしょうし、オリンピックは夏には行われない。
そう判断した私は、夏の出張相談の航空券と宿泊場所の予約を済ませました。
今は、腕と感性を磨く時期と捉え、いつもとは違った学びをしている日々です。
あと、6月21日(日)の特別講演会のお申し込みは、現在、午前の部が残り10名、午後の部が残り12名となっています。
午前は親子向けの講座ですので、あと3~4家族といったところでしょうか。
「新年度になって予定がはっきりしてから」という人たちもいらっしゃいますので、ご検討中の方は、どうぞお早めにお願い致します。


午前中、香川県で「ネット・ゲーム依存症対策条例」が可決されました。
まあ、条例が施行されても、長時間ゲームをする人はするでしょうし、許す家庭は許すでしょう。
ですから、この機に及んで名を売ろうとする専門家と、他県のゲーム愛好者がワーワー言う姿を冷めた目で見ていました。
確かに、全員が全員、長時間それらに触れたとして、依存症になるとはいえません。
ですが、遺伝子的に、ネットやゲームからの刺激に対し、影響を受けやすかったりする子がいるのも確かでしょう。
完全に個人の責任にして放置しておくのではなく、こうやって議論に挙げ、検討することで、本人や家族への問題提起になる、という意味で捉えれば良いのだと思います。


この「全員に当てはまらないけれども、誰かにとってはとても大事な警告となる」というのは、私も重要だと考えています。
発達障害が、後天的な環境、刺激によって、遺伝子のスイッチを入れることが明らかになってきた現在ですので、発達障害の引き金となる環境要因について、皆に当てはまらないけれども、知っておく、というのは必要なことだといえます。


今回で言えば、長時間のメディア視聴は、発達障害の引き金の一つです。
目の動きが乏しい子、立体視ができない子、そして何よりも言葉の遅れがある子。
そういった子ども達の多くは、赤ちゃん時代からテレビがつけっぱなし、幼児向けの教育テレビなら大丈夫だと思い、録画して繰り返しそれを見る、早期からスマホを与えられた、ということがあります。
もちろん、再三申し上げますが、同じような環境でも大丈夫な子もいるのは確か。
でも、私のところに来る発達相談の中では、上記のような課題がある子のほとんどに共通していることです。


実生活の中でも、テレビ画面を見るように、2次元的な目の動きをするお子さんがいます。
それは、その子をパッと見た瞬間にわかります。
明らかに、目に違和感があるのです。
赤ちゃんは、生後すぐから目を育て始め、いろんなものを視界に入れることで、立体的な視野を獲得していきます。
それは、ハイハイなど、自分で自由に動けるようになってから、確実なものとしていきます。
でも、そのときに、平面ばかり、二次元ばかり見ていると、当然、立体視が完成していきません。
むしろ、そちらの刺激が多くなれば、奥行きが育たず、強い色刺激に反応する脳へと作られていきます。


赤ちゃんは、最初はあまり視力がないので、匂いで大事な人を認識し、その姿を目で追いかけることで、目の動きを育てていきます。
視力が上がり、自由に動きまわれるようになると、そこでも大事な人やいろいろなものを見ることで、立体視を完成させていくのです。
「発達性協調運動障害」と診断を受けた子の中にも、この立体視が育っておらず、二次元で世の中を見ているばかりに、よく躓いたり、転んだり、協調的な動きができなかったりする子もいます。
目を育てたら、運動の問題がなくなった子も、たくさん見てきました。
目で見た刺激は後頭葉で捉え、そこからそれが何かと前頭葉で認識し、頭頂葉の運動野から実際の筋肉の動きへ指令が出る。
このように、目を育てている乳幼児は、脳内で大切なネットワークを、それこそ、生きていく上で必要な機能を築いているのです。


言葉の遅れに関しては、詳しく説明するまでもありません。
ヒトは、何故、音声言語を獲得したかといえば、やりとりをするためです。
ただ音楽のように、リズムや音色を楽しむだけで良かったのなら、言語までの発達、進化はなかったといえます。
つまり、人を介して、ヒトとのやり取りを通して育てる音声言語だからこそ、一方的な音のシャワーであり、こちらが何かを言っても、それに反応するわけではないテレビ等は、言語発達の機会を奪います。
また、音は聴覚刺激として受信するだけで、ビタミンを消費しますので、当然、発達に必要な栄養素不足へと陥る可能性もあります。


もともと栄養面、吸収の面で、呼吸の面で課題を持って生まれたお子さんは、強すぎる刺激と長時間にわたる刺激によって、さらに神経発達に必要な栄養素不足に陥り、結果的に発達が遅れることもあるでしょう。
立体視を育てる機会が減り、それは長時間のメディア視聴やもともと運動面の発達の遅れから、また、嗅覚の発達の遅れからも、うまく身体が動かせず、よく転んだりして、それが発達性協調運動障害と診断されてしまうこともあるでしょう。
二者間でのやりとりで言葉を育てるよりも、一方的な刺激に脳が適応し、作られてしまった子が、言葉の遅れ、自閉症と診断されるようなこともあるでしょう。
遺伝的な要素に、これらの環境要因が加わると、発達障害発症への引き金となる子もいるのだと思います。


これは私の15年以上にわたる現場感覚のエピソード。
発達のヌケや遅れが育ったのに、言葉の遅れだけ残り続ける子、そこがなかなか育っていかない子。
そういったお子さん達は、テレビやゲーム、DVDやYouTube、スマホなど、やっぱり長時間触れています。
私も、追視や言葉の遅れがあるご家庭には、上記のような可能性、危険性をお話しするのですが、やっぱり本人が好きだから、それを制限すると乱れるから、と言って、与え続けているケースが多いです。
確かに、その間は、本人が安定している、まあ、没頭している、刺激に意識が奪われているのですが。
でも、言葉の遅れのリスク要因、環境要因の一つには違いありません。


施設で働いていた時も、ノンバーバルな子ども達、若者たち、大人たちは、皆さん、一日の大半をメディア視聴、CD等の音楽を聴くことで過ごされていました。
メディアに長時間触れるから言葉の遅れがあるのか、言葉の遅れがある人がメディア視聴を好むのか、はわかりません。
ただ、一つ言えることは、一方的な刺激は脳を育てない、発達につながらない、ということです。
ヒトの高次な脳の部分は、やりとり、双方間の刺激、フィードバックによって、育てられるのです。


ただ単に、「メディア視聴がダメだ!」「ネット依存になるぞ!」「エビデンスを出せ!」ではなく、その問題の本質と、もしかしたら、自分の、我が子のリスク要因になり得るかも、という想像力が大事だと思います。
未来を想像し、それに今、対処、行動できるのは人間だけ。
我が子をより良い人へと育てたいのなら、その周りにいる大人の想像力が問われるのです。

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