【No.1180】事業所一覧の紙を渡されても

知事のお仕事は気楽なものです。
「お盆期間の帰省の自粛を求めます」とアナウンスすれば、お仕事したになるのですから。
普通、帰省の自粛をお願いするのではなく、みんなが安心して帰省ができるように仕事をするのが行政の仕事ですよね。
たとえ発症しても、安心して医療が受けられる体制作り、準備を行うのが行政の仕事ですよね。
補償はしないけれども、お願いはする。
挙句の果てに、「国民の中で危機感が共有できていないことが問題」だと、なんだか我々のほうが悪いみたいな言い方をしている。


「孫の顔がみたいから」といって、せっせと治験中のワクチンを打ったジジババも少なくないはずです。
あれだけ「ワクチンを打てば、日常生活が戻せる」と言っていたお医者様たち、専門家の皆様たちは、心が痛まないのでしょうか。
これこそ、デマ太郎が注意すべき発言だと思います。
このように言いっぱなしで責任を取らないのが専門家。
行政も、自分たちは汗をかかず、ただアナウンスするだけで、「あとは国民の責任」と投げてしまうのが本質です。


似たようなことは発達支援における行政の姿にもみられます。
なにか支援を受けようとするとき、行政で渡されるのはその地域で利用できる施設の一覧です。
たとえば児童デイなら、〇〇市の児童デイ一覧がまとめられたものが手渡され、「あとはご家族で決めてください」と言われます。
でも、だいたい初めてそういったサービスを受ける親御さんですので、いきなり一覧を渡されても、どこが良いとか悪いとかわかりませんよね。
その地域に1つか、2つかしか施設がなければ、そこまで迷うことはありませんが、今は雨後の筍状態で乱立しているところが多いので、困ってしまうと思います。
だけれども、だれもそれぞれの施設の違いは教えてくれない。
行政は責任を負いたくないので、あとからメンドクサイことに巻き込まれたくないので、意見や説明を求められても、頑なに「ご自身の目で」と言い続ける。


これって、本当に不親切なことだと思うんです。
現実的な問題として、すべての施設を見学に行くことはできません。
たとえ見学に行ったとしても、表面的なことしかわからないと思います。
本来、我が子の課題、今後伸ばすべき点がわかって初めて、選ぶ基準が生まれるのですから。
選ぶ基準が曖昧ですと、「家から近い」ですとか、「利用時間が長い」「なんとなく施設がきれい」などという視点で決めてしまいがちになります。
そうなると、親御さんは良いか悪いか分からないまま、どんな効果があるかがわからないまま、施設が説明することをそのまま受け入れて利用してしまう。
そして実際に利用し、ときが立ったのちに、「ここは違うかも」と思えてくる。
ここでの問題は、費やした時間が戻ってこないことです。
訳も分からず利用していた発達支援が、発達に繋がっていなかったとしたら、その貴重な子ども時代の時間を無駄にしてしまったことにもなります。


一覧表の紙切れ一枚を渡して、お仕事になるのなら、気楽な仕事だと思います。
ですが、それではいけないと、国のほうも見直しが始まっています。
児童デイのあり方について、その専門性、質の担保について検討が行われ、この秋にも公表されることになっています。
どう考えても、今のように申請書の不備がなければ、だいたいOKというあり方はいけないと思います。
どの発達支援も、その原資は税金になりますので、税金の使い方として質の担保なしに認めるのはまずいでしょう。
だから、今日も一日DVDとか、公園に連れていってあとは自由とか、鍵のかかった何もない部屋で過ごすだけ、というような施設が出てくるのです。


児童デイに関しては、レスパイトと発達支援を明確に分けるべきだと思います。
今は発達支援という名のレスパイトが多すぎです。
確かに、レスパイトなら、子どもさんが一日怪我なく過ごしてくれさえすればよくて、募集要項にある「未経験者も大歓迎」という人達でも可能です。
なので、レスパイトならレスパイトとしての役割を明確に打ち出し、親御さんも納得の上で利用できるようのしたほうが良いと思います。


あと、発達に力を入れていると謳っているところは、「うちは発達支援事業所です」と打ちだし、きちんと質の評価をされるべきだと思います。
今どき、スケジュールカードを使っているから発達支援している、とは言えないでしょうし、そんなレベルでは恥ずかしくて外に言えないはずです。
少なからず、神経発達症ですし、発達が盛んな子ども時代なのですから、上辺の対処法ではなく、根本的な発達に寄与するものが行わなければ、税金を使って行う必要はありません。
だったら、学童や放課後クラブ、公文やスポーツクラブなどのほうがよっぽど発達に繋がります。


つまり、税金を使うのなら、もっといえば、ほとんどの国民は利用していないサービスを一部の人たちが独占的に利用するのですから、結果が問われなければならないのです。
今みたいに、「今日の利用者は5名です」で、5名分のお金が貰えるというのはダメだと思います。
ただDVDを観せていても5万円。
一生懸命、発達に繋がるアプローチを行っても5万円。
だったら、みんな前者のほうに流れるよねって、現在問題になり、ようやく見直しのための検討が行われているのです。


コロナ騒動後、福祉予算が削られるのは目に見えています。
当然、表向きは「支援の質の担保」ではありますが、実際は予算削減のための事業者同士の淘汰を目指したものになると思います。
すると、今後は事業者として選ばれるサービスができるかどうか、そしてそれをアピールできるかどうか、がポイントになっていくはずです。
そういった近未来を考えると、事業所ごとの特色が重要になっていきますし、そこで私のほうも商売になるかな、と思っています。
特色をつけるために一番簡単なのは、特色のある人間を入れる。
「〇〇氏の定期コンサルを受けています」とか、「欧米で認められている〇〇療法の認定者がスタッフにいます」とか、がインスタントにできる方法です。
どう考えても、いちから人を育てるのは大変ですし、そもそもがこの児童デイで生涯やっていこう、と思っているスタッフがどれほどいるか。
ですから、児童デイの質が問われるようになると、私たちのような個人でやっている支援者同士の質が問われるようになってくるだろう、とふんでいます。


「帰省しないでください」「県境を跨がないでください」
というのは、やっている感だけ。
やはりそこには実際の行動と責任がなければ、責務を果たしたとはいえないと思います。
どう頑張っても、「行動の自由」の上に知事は存在しない。
同じように、ペラッと一覧表を渡すだけの福祉行政もダメ。
ちゃんと行政の責任で、事業者を指定し、そして質の担保を目指すためのチェックは行わなきゃ。
行政的な手続きはわかるけれども、行政の中にそれぞれの事業所、支援サービスの内容の説明ができる人をつくらなければならないと私は思います。




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