2021年1月19日火曜日

【No.1136】「心地良い」を科学する

発達援助において「心地良い」は重要なキーワードになります。
「子どもさんが"心地良い"と感じる刺激、活動、遊びを行いましょう」
「親御さん自身も発達援助、子育ての中で"心地良い"と感じられることが大切です」
このように発達援助において、また心身の養生において「心地良い」は、その活動を続けるかどうかを決める中心的な指針となります。


しかし、この「心地良い」という言葉を聞いた人の中には…
「"心地良い"って感覚がわからない」
「そもそもなぜ、"心地良い"が重要なのか、発達に影響するのか」
というような感想や疑問を持つ方達もいます。


「エビデンスはないけれども、飲食店で感染が広がっている」
全国の保健所は、一人ひとり聞き取りをし、その情報一年分を記録し、所持しているわけです。
なので、「エビデンスは無い」というのは、データと感染の相関関係が見られなかったけれども、政治的な意図か、個人的な直感で言っている、という意味なんだと解釈できます。
私はエビデンスがないこと自体は、否定されるべきではないと考えています。
何故なら、この複雑系の世界において、すべての事象が証明できることなどはなく、また個人の見解や実例の中には、まだエビデンスを導き出すだけの手段、方法がないものも多数あるからです。
ただそのように考えている私ではありますが、今回の件は、ひと様の生活、人生を左右しかねない発言になりますので、たとえ専門的な知見と経験による直感&直観だったとしても、その根拠を示す努力と、今分かっているところまでの情報、データを示すべきだったと思います。


「じゃあ、"心地良い"の根拠は?」という問いが、私のほうにもやってくるでしょう。
実を言えば、最初は神田橋條治医師の受け売りの言葉で使っていました。
それから発達援助の中で、「心地良い」という指針を伝え、実践していく中で、確かにポジティブな変化が見られる子ども達、若者たちが多くなっていったのが流れです。
しかし、商売として行っている以上、このエピソードレベルで満足してはいけません。
必ず、その裏打ちされる情報、知識を得る必要があるのです。
で、その根拠となる研究、情報、知識が集まり、自分の中でも「心地良い」の根拠はこれだという段階まできているのが今のところです。


言葉で説明しきるには、多くの文字と時間を要しますので、シンプルに説明しますと、こうなります。
「心地良い」という感覚、「快」という感覚が、感覚と感覚を繋げる始まりになるから。
ヒトという種は、進化の過程でよりよく環境に適応することを戦略として獲得してきました。
ですから、脳も、身体も、感覚も、大変未熟な状態で生まれてきます。
その分、赤ちゃんは養育者に守ってもらう必要があり、養育者の身体を使って自分の心身の安定を図ります。
その際、赤ちゃんにとって大事なのは、自分を守ってくれる養育者を知覚することです。


じゃあ、どうやって養育者がわかるようになるかといったら、養育者から得られる匂い、音、見た目などの五感からの情報と、抱かれて「心地良い」、おっぱいをもらって「快」という自分の内側にある感覚とを結びつけるのです。
ここのところは、人の赤ちゃんやチンパンジーの赤ちゃんなどを対象にした研究で明らかにされており、ただ単に視覚情報や聴覚情報を与えただけでは感覚の連合は生じず、養育者から皮膚に触れられている状態のときに、聞かされた言葉などに強く反応することがわかっています。
また赤ちゃんは、皮膚感覚を刺激されると、脳全体が活性化する、心身(自律神経)が安定することも明らかにされています。
まとめますと、赤ちゃんは皮膚感覚を刺激されることで「心地良い」を生む。
その「心地良い」という感覚をベースに、他の感覚と連合させていく、神経同士の繋がりを生じさせていく、ということです。


そのような科学的な知見から発達援助を読み解くと、やはり「心地良い」という感覚の重要性がわかります。
特に神経発達症の子ども達は、胎児期から言葉を獲得する前の2歳くらいまでの間に、発達のヌケや遅れが生じていることが多くあります。
機能や認知の課題と言うよりも、ヒトとして生きる上で重要な初期の発達、主に感覚と運動系の発達に課題、やり残しがあるといえますので、そうなると感覚同士の繋がり、神経同士の繋がりを考えたときに、ベースである「心地良い」という感覚が重要なわけです。


ヒトは進化の過程で、「心地良い」を中心に初期の発達を遂げていくという戦略をとっていますので、生活の中に、活動の中に、「心地良い」をたくさん作っていくことが大切だといえます。
たぶん、他の療育、療法で抜け落ちている点は、この「心地良い」という感覚、人の初期の発達形態でしょう。
専門的な療育、支援になるほど、その子の内的な要因は無視され、外から確認、観察できる点のみで評価、展開されてしまいます。
今まで内的な要因が切り捨てられてきたのは「エビデンスが無い」からであり、それはそういった研究ができていなかったということです。
でも、このように一見すると、支援者の直感であり、エピソードにすぎないと思われるような「心地良い」というテーマでも、どんどんその真実が明らかにされているのです。


ですから、真実は常にエピソードから始まる、一人ひとりと真剣に向き合うことで明らかにされていくのだといえます。
ただ、そのエピソード、直感&直観の段階から科学的根拠へと繋げていくための努力はしなければいけないと思います。
コロナ騒動でメディアに出ていた専門家の姿から気付きと大事な姿勢を学んだのでした。




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