「心地良い」は、親子を結びつける

訪問すると、多くのご家族は、両親揃って相談を受けられます。
当然、夫婦も最初は他人ですので、お子さんに対する捉え方、子育ての姿勢、想いの強さは異なるわけです。
一生懸命話をし、感情が高まっているお母さんの横で、静かに座って聞いているお父さんがいる。
でも、「ずっとしゃべらないし、奥さんに言われて座らされているのかな」と思いきや、突然、堰を切ったように話だす方も少なくありません。
どんなときに、話し始めるか。
それは、我が子と自分が繋がったとき。


発達障害は遺伝100%の障害ではないけれども、少なからず、ご両親から受け継いでいる部分もあります。
ですから、親御さんの子ども時代の姿と、目の前の我が子が部分的に重なるわけです。
途中から会話に参加してくるお父さんというのは、「そういえば、私も子どものとき、同じことがあったんです」と言われます。
それは親子ですから、自然なこと。


ある意味、「私も子どもの頃…」という言葉が出れば、私の仕事は終わったも同然です。
実際、そういった共通する特徴があったけれども、こうして社会の中で自立し、家庭生活を営んでいるからです。
歩んできた道の中に、我が子を育むヒントがあります。


皆さん、ご存じだとは思いますが、発達の凸凹がある=障害ではありません。
脳や神経発達の凸凹にプラスして、環境への適応に問題がなければ、障害にはならないのです。
凸凹がある人がみんな、発達障害だとしたら、有病率は100%。
まったく脳の、発達の凸凹がない人なんていないのです。


親御さん達とお話をしていると、「子ども時代、こんなことばっかりしていました」「大学卒業するまで、ずっと〇〇を続けていました」ということをよく耳にします。
実は、それがお子さんの発達のヌケを育てるために必要な刺激、活動だったりするわけなんです。
つまり、同じような特徴があったとしても、ご自身で育ててきた。
そして社会に適応し、今、幸せな家庭を築いている。


再三、子どもは自分自身で必要な遊び、発達刺激がわかり、それに没頭するもの、と言ってきました。
でも、それは子どもに限らない、と私は思うようになりました。
親御さんの中に、「近頃、こんな趣味を始めたら、身体の調子が良くなって」「突然、急に〇〇という趣味がやりたくなって始めたら、頭がすっきりしていいんですよ」と言われる方が少なくないからです。
もちろん、親御さんは発達障害なわけではありません。
でも、感覚的に自分に必要な刺激を求め、それを日常の中に組み入れ、より良い生活をカスタマイズしているのです。


自分も大人になって時間が経ちましたし、いろんな大人の方達と接する中で、「より良い人生」「より良い生活」を考えるようになりました。
そのとき、思ったのが、やっぱり自分自身の生活をカスタマイズできる人、より良いものへと常に作り変えていける人が、豊かな毎日、人生を送っているのではないか、ということです。


脳や発達に凸凹があることは、悪いことではありません。
ですから、その凸凹をそのまま受け入れて生きていく人がいても、なんの問題もありません。
その人の人生の話ですから。
しかし、自分自身の人生をより豊かなものにしていこうと思うのなら、やはり自分自身を育てていく必要があります、大人になっても。
未発達な部分があれば、そこを育てる。
未発達な部分が育ちきったのなら、より良く生きるために凸を磨き、凹を整え、なだらかにしていく。
その繰り返しが、ヒトとしての成長となり、自分の人生を豊かに変えていくのだと思います。


私も、30代になってから、子どものときよりも、学生時代よりも、20代のときよりも、「丸くなったね」と言われます(爆)
人間、丸くなるということは、角が取れることであり、凸凹が整ってきた表れなのかもしれません。
ですから、成熟するというのは、発達した証拠であり、大人になっても発達を止めなかった証なのだと思います。


本来、動物としてのヒトは、生きている限り、発達するし、発達を求めていく存在なのではないか、と感じています。
そう考えると、不適応を起こしているわけではないのに、「発達障害」という診断名をつける意味はなんだろうかと思うのです。
診断名をつけることで、子育て、発達援助が、支援に替わってしまう弊害の方が大きいのではないか。


30代になって始めたマラソンも、「心地良い」から続いています。
「心地良い」ということは、私に必要な発達刺激であり、発達の機会なのだと思っています。
自分の「心地良い」という感情に耳を傾けることの意義、その大切さ。
今、私は「心地良い」というのは、発達の道標、声なき声なのだと捉えています。


お母さんやお父さんが、子ども時代、「心地良かった」遊び、環境、刺激は、お子さんの「心地良い」と繋がっているのかもしれません。
「何をしたら良いか、わからない」とおっしゃる親御さんには、「一緒になって心地良いと感じる遊び、活動を」と伝えています。
「心地良い」は、親子を結びつけてくれるのです。

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