2019年4月12日金曜日

発達障害という軸、定型発達という軸

フィギアの選手を見ていると、「よくもあれだけ高速で回転して目が回らず、演技ができるな!」と思います。
ああやって回転しても目が回らないのも、練習の成果ですね。
最初から目が回らなかったわけではありません。
ちゃんと目が回るという発達を遂げたあと、長年の練習の結果として目が回らない段階になった、ということ。
目が回らない→目が回る、からの再び「目が回らない」です。
目が回らない子が、フィギアの選手になったわけじゃないのです。


お金を貰って発達障害の人達と関わるようになって、もう15年以上が経ちます。
その中で、いろんな支援者と出会ってきましたが、専門家というか、発達障害の専門的になると、どんどん腕が悪くなってくる人が多いような印象を受けます。
若手の頃は、30代くらいのイケイケのときは、「あの人はよい支援者になるな」「この人が上に立つようになれば、素晴らしい変化が起きそうだな」と感じていたのに、肩書が付き、キャリアが積み重なってくると、ただの凡人になり、腕の可もなく不可もなしになる。
治せたはずの支援者が、40代過ぎて、ただの支援者の一人になっている。
そんな期待外れな支援者の顔を思い浮かべる方も、いらっしゃるのではないでしょうか。


肩書や組織ができれば、いろんな縛りが出てきて、それで腕が悪くなる、治せなくなる、という要因も考えられるでしょう。
でも私は、「軸がずれるから下手くそになる」と考えています。
「軸がずれる」というのは、発達障害の中に軸が移動するということです。
つまり、日頃、発達障害と関われば関わるほど、そういった中での経験が増していけばいくほど、自分が見てきた、経験してきた発達障害という軸の中で、「この人は軽い」「この人は特異的だ」「この人は典型的」という具合になる、ということです。


私も、20代の頃は、キャリアとしての経験数が乏しいため、のめりこむように発達障害について勉強したものです。
しかし、あるとき、気が付いたのです。
期待されていた先輩たち、支援者達は、40代になると凡人になる、ということに。
ですから、私は、そういった人達の姿から理由を探ろうとしました。
そこで行きついたのが、軸のズレ。
そういった先輩たちと話をしても、いつも発達障害中心の話で面白味がない。
結局、終始、発達障害の内側の基準で話をしているから、良くなるというような発想は出ないし、それ以上のワクワクするような話がでないのだと感じました。


それに気が付いてから私は、軸はあくまで定型発達に置いておかなければならない、と思うようになりました。
ですから、赤ちゃんの発達やヒトの進化、言葉や遊びの発達段階など、定型発達とはどういうものか、その勉強をするようになりました。
もちろん、始めの頃は、「治そう!」と思って勉強していたわけではありませんが、結果的に今の仕事に繋がっていると思います。


定型発達という軸があるからこそ、そこからのズレで、発達障害を捉えることができる。
だからこそ、どこが遅れ、何が抜けているかに気が付くことができます。
そして、どうすれば、どこを後押ししていけば、定型発達という流れに乗ることができるか、より良く発達していけるかに気が付くことができます。
これが発達障害という軸で捉えようとしていたのなら、ある意味、発達障害の内側のみで解釈、完結しようとしていたら、こういった発達の後押しはできなかったと思います。
そして私も、今頃、凡支援者の一人として、どう支援していこう、どうやって発達障害者の中で、この子を良い部類にしていこう、などと考えていたかもしれません。


私は、我が子の子育てを通して、定型発達を教わっています。
また幼稚園や保育園、学校との関わりを通して、同世代の子ども達の発達を教わっています。
すべて、自分の軸を定型発達に置き続けられるための学びです。
定型発達を知らずして、発達障害を治すことはできないのです。


若手の支援者や幼稚園、保育園の先生、特別支援と関係のない分野の専門家、親御さんがパッと治せたり、治すための育み、アイディアが出たりするのは、普通の子を通して、発達障害の子を見ることができるからだと思います。
反対にキャリアを積み、肩書を身にまとい、「私は専門家です」と恥ずかしげもなく公言できちゃうくらいまでくると、まあ、腕が悪い、そして治せないし、治そうという発想すら一ミリも湧いてこない。
それは定型発達という軸を見失い、発達障害の世界、内側、そこの価値観のみで完結しようとするから。
もちろん、本人は意識していないのでしょうが、発達障害の世界に限って言えば、専門家、専門的になればなるほど、腕が悪くなるのは、特別支援あるあるだと思います。


支援者や若手の人からも、相談や助言を求められることが増えました。
そんなとき、私は上記のような話をします。
軸が発達障害に移ると下手くそになる。
うまい支援者、治せる支援者は、軸が常に定型発達にある人。
だから、ヒトについて知識、理解、知見を深めていかれると良いですよ、と。


発達障害の人は、別の世界からやってきた人ではなく、みんな同じ人間。
ただ定型発達からズレてしまった結果、いろんな支障が出ているだけ。
だったら、課題の根っこはそのズレであり、本来の自然な流れに乗れるよう後押しするのが、支援者としての役目。
だから私達は、ヒトについて学び、深めていく必要があるのです。
発達障害、特別支援の世界には、治すための答えはないですね。

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