「見えないものは、ない」という方たちに"希望"という情報を提供できるか

日々、私がお付き合いしているのは、「見えないものは、ない」という方たちです。
ですから、「見えないものを見えるようにする」ことも、大事な支援だと思っています。
社会的なルールやマナー、相手の気持ち、周囲からの願いなど…。
これらの情報は、自分以外の"他人の視点"と言えるでしょう。

その人に見えていないものは何かを探り、情報を提供していきますが、その中には"他人の視点"以外の情報もあります。
例えば、同じ自閉症の人の情報です。
特に、生き生きと生活している自閉症の人の情報。

私が支援に携わらせて頂いた方の中には、自閉症という診断名を告げず、一般の就職試験を受け、採用された人が何人もいます。
その中には、働きが認められ、本採用になったり、どんどんキャリアを重ねている人もいます。
また、知的障害を持っていますが、一般枠で就職し、他の人と同じように働いている人もいます。
このような地元にいる人達の話をすると、みなさん、とても驚くんですね。
「同じ障害を持った人で、そんな人がいるとは思わなかった」って。
「病院や支援機関の人の話では、一般就労は無理って言われたので」って。

「ソーシャルスキル」とか言って、"他人の視点"の情報は提供されますが、こういった地域で生き生きと暮らしている人の情報って、今、困っている本人たちにはあまり教えないんですね。
良く言えば、本人たちのプレッシャーにならないような心遣いかもしれませんね。
「頑張らせない」「無理させない」がギョーカイスタンダードですから。
そもそも自分たちが支援した人の中に生き生きと生活している人がいない、っていうのもあるかもしれませんが(ブ)

生き生きと生活している自閉症の人の情報ってとても大事だと私は思うんです。
希望になりますから。
今はよくない状況かもしれないが、やりようによっては自分だって明るい生活が送れるかもしれない。
こう思えると、未来へと進むパワーになると感じますね。
ちょっと頑張ろう、ちょっと生活を変えてみようと思えるだけで、少しずつ歯車が前進し始めるんです。
このような明るい未来や希望も、「見えないものは、ない」という方たちにとっては、見えていないことが多いんですね。

私はよく話をしますよ、地域で生き生きとした生活を送っている人達の話を。
そうすると、「どうせ私は障害があるし」「どうせ私には、普通の人と同じような生活、人生は無理」なんて言っていた人の目が変わるんですね。
諦めの目が、驚きの目に変わり、最後には希望を持った目に。
人は、今日より明日、明日より明後日というように、希望が持てるから前向きになれると思うんです。
もし希望がなければ、意欲が湧かず、変わるための行動をとらないはずです。
淡々と同じことを繰り返すだけの日々を送るはずです。

「見えないものは、ない」という方たちに"希望"という情報を提供できるか。
自閉症の方たちの支援に携わらせてもらう際、私の頭の中にある言葉です。

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