【No.1318】「正常」なる幻想

発達相談をしていて、親御さん達の多くに共通した"勘違い"があるように感じます。
それは「なにも問題がない状態が正常」という勘違いです。
別の言い方をすれば、少しでも違うところがあれば、それは異常であり、発達に課題があり、発達障害である、という勘違いです。


「うちの子、発達障害なんです」という子を見ても、「どこが発達障害なんだろうか」と思うことが多々あります。
確かに部分的見れば、ある発達に関してスポットライトを当てれば、同年齢の子どもと比べて遅れているといえます。
でも、人間って生き物ですし、複雑系の存在なので、ある部分を取り出して、そこが異常だ、正常だ、なんては言えないと思うんです。
その人、全体でどうなのか。
そして何よりも、今まさに発達途上の子どもさんなら、それが異常か、まだ育っていないか、発達中か、はわかりませんね。


ちょっとでも周りの子と違うところがあれば、すぐに「発達障害」としてしまうのは、現代医療がハッタツの分野に入り込んでいるからだと思います。
現代医療はなにかといえば、西洋医学であり、対症療法です。
異常を見つけ出し、その異常をどう抑えるか。
異常値を作り、正常値を作って、その間を行ったり来たりで商売するのが現代医療。
だから発達障害の診断は、その子の全体としての発達状態や今後の発達などを考慮せず、とにかく異常を見つけ、その異常に対してどういった対症療法をするかで終始している。
そんな思考が、親御さん達の頭の中まで侵食しているんですね。


「正常の発達がある」と思わせるのが、彼らの方法であり、洗脳の手段。
「そもそも子どもなんて、みんな、同じ発達などしないでしょ」という当たり前のことに気づければ、多くの子ども達は発達障害というレッテルなど貼られなくて済んだのに。
江戸時代の日本、いや、私達が子どもだった昭和、平成の前半までは「うちの子が異常だ」「異常だ」といえば、「そういうあんたが異常だね」と言われていたと思います。
発達の検査なんていうのもあるけれども、あの項目通り、月齢通り進めば、正常だといえるのでしょうか。
というか、子どもの発達って、あそこで挙げられているもの以外はないの?
異常を作りだすために、正常という基準が作られているということを知っていれば、ひっかかることはないでしょう。


同じような洗脳が他にもあって、ここ数年、「私が愛着障害だから」という親御さんが増えました。
確かに親御さんに愛着障害はあるかもしれません。
でも、親御さんに愛着障害があるから、お子さんが発達障害になるわけでも、発達障害が治らないわけでもありません。
愛着障害がある親御さんの子でも、発達障害にならない子がほとんどですし、親に愛着障害があろうとも、治る子は治る。
これはコロナ騒動でもたくさん見てきた光景で、「人流と陽性者数」「未接種者と陽性率」「マスクの感染予防効果」など、どうして因果関係がこんなにも単純だと思えるのか、私には不思議でなりませんでしたね。
人間を構成している要素は、かなり複雑で多様です。
そこを「ヒト」というひと括りで、それまた単純化された要因と結びつけて、どうのこうのって、よっぽどの人間オンチか、思考停止した人かだと思います。


ご自身の愛着障害を我が子の発達障害や治らない理由にしたい背景は、とにかく理由づけをして頭をラクにしたいということもあるでしょう。
人間は曖昧で、どっちつかずの状態が一番脳みそ、エネルギーを使いますので。
省エネとして、とりあえず、「自分に愛着障害があるから、この子は〇〇なんだろう」と思いたいのはわからなくはないです。
でも、そこで生じる弊害は、子どもさんのほうに出るんですね。


親御さんが愛着障害を治すことと、子どもの発達障害、治るは、独立しています。
もちろん、その影響はあるのでしょうが、そこだけじゃないし、それだけじゃない。
むしろ、「これこそが原因なんだ」と思うことで、見失う部分がある。
みんな、テレビを観たら発達障害にはならない。
みんな、鉄不足になったら発達障害になるわけではない。
みんな、身体アプローチをしないと、治らないわけではない。
残念ながら、そうやって物事をシンプルに捉えてしまいがちな家庭では、子どもさんのことがよく見えていない場合が多いし、よく見えていないから情報に飛びつきやすく、洗脳も受けやすい。


あの子が良かったものが、うちの子に良いとは限らない。
却って、マイナスな影響を与えることもある。
人間はかなりの複雑系です。
つまり、複雑で唯一無二の存在だからこそ、目の前の子どものことをしっかり見つめる必要があるんですね。
一人ひとりが自分の名医になればいいわけで、子どもさんの場合は親御さんがその名医になればいいし、そこを目指すのが子育てであり、親子の育ちあい。
結局、今回説明してきた洗脳は、そういったことをさせないためのものだとお気付きでしょうか。


コロナも医師やワクチンが治すものではありません。
結局は、自分の免疫が治しているのです。
自分の体調を整えている人は、この2年半で発症しないし、発症してもすぐに自分自身で治してしまう。
世の中の人達が、そんな当たり前のことに気づき、自分自身で取り組めていたら、日本の経済と子ども達という未来を傷つけずに済んだのに。
同じように発達の課題も、我が子のことをしっかり見て、その子に合った環境と発達刺激を与えられていたら、家庭で自然と育ち、治っていくのです。
そこに医療も、療育も、支援者も、必要なし。
つまりは、こんな風な人ばかりになると、医療は儲からないから、「正常」なる幻想を植え付け、異常という恐怖を演出し、依存心を持った人間を作ろうとしているだけなんですね。
数値で異常か、正常か、確認できるシステムは、人間の頭を使わせないためのもの。


だから私は、発達相談、援助という仕事を通して出会った人達に、搾取されいることに気がついてほしいし、もう一度、自分の頭で考え、行動できるようになってほしいと願っています。
子どもさんが治っていくということは、親御さんが思考停止の状態から抜け出し、試行錯誤しながら主体的な子育てを行っていく、ということなんですね。
このまま、医療に搾取され続けていけば、これから生まれてくる子ども達にも発達障害のレッテルが貼られていくでしょう。
そして彼らの未来と自由が奪われていく。
そうならないためにも、一緒に頑張っていきましょう。




☆『ポストコロナの発達援助論』のご紹介☆

巻頭漫画
まえがき
第1章 コロナ禍は子ども達の発達に、どういうヌケをもたらしたか?
〇五感を活用しなくなった日本人
〇専門家への丸投げの危険性
〇コロナ禍による子ども達の身体の変化
〇子どもの時間、大人の時間
〇マスク生活の影響
〇手の発達の重要性と感覚刺激とのソーシャルディスタンス
〇戸外での遊びの大切さ
〇手の発達と学ぶ力の発達
〇自粛生活と目・脳の疲労
〇表情が作れないから読みとれない
〇嗅覚の制限 危険が察知できない
〇口の課題
〇やっぱり愛着の問題
〇子ども達が大人になった世界を想像する
〇子どもが生まれてこられない時代
〇子育てという伝統

第二章 コロナ禍後の育て直し
〇発達刺激が奪われたコロナ禍
〇胎児への影響
〇食べ物に注意し内臓を整えていく
〇内臓を育てることもできる
〇三・一一の子どもたちから見る胎児期の愛着障害
〇胎児期の愛着障害を治す

第三章 ヒトとしての育て直し
〇噛む力はうつ伏せで育てよう
〇感覚系は目を閉じて育てよう
〇身体が遊び道具という時期を
〇もう一度、食事について考えてみませんか?
〇食べると食事の違い
〇自己の確立には
〇右脳と左脳の繋がりが自己を統合していく
〇動物としての学習方法
〇神経ネットワーク
〇発達刺激という視点

第四章 マスクを自ら外せる主体性を持とう
〇なぜマスクを自ら外せることが大事なのか
〇快を知る
〇恐怖を、快という感情で小さくしていく

第五章 子どもの「快」を育てる
〇「快」がわかりにくいと、生きづらい
〇快と不快の関係性
〇子どもの快を見抜くポイント
〇自然な表情

第六章 子ども達の「首」に注目しよう
〇自分という軸、つまり背骨(中枢神経)を育てる
〇首が育っていない子に共通する課題
〇なぜ、首が育たない?
〇首が育たない環境要因
〇首が育つとは
〇背骨の過敏さを緩めていく
〇首を育てるには

第七章 親御さんは腹を決め、五感を大切にしましょう
〇子育て中の親御さん達へのメッセージ
〇部屋を片付ける
〇子どもと遊ぶのが苦手だと思う親御さんへ
〇ネットを見ても発達は起きません
〇発達刺激という考え方
〇五感で子どもを見る
〇特に幼児期は一つに絞って後押ししていく

第八章 自由に生きるための発達
〇発達の主体を妨げない存在でありたい
〇大人が育てたいところと子どもが育てたいところは、ほとんど一致しない

あとがき
こういう本を読んできました
巻末漫画

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