【No.1313】治らない人が治っていくには

「治らない人が治っていくには」
そんなことを最近ではよく考えるようになりました。
だって、ほとんどの子ども達はひと昔前までは「発達障害」なんて言われなかった子ども達です。
もともと普通に育っていく子が何らかの原因で発達が遅れた。
だったら、その原因を取り除き、発達していくような環境を整え、早いうちに本来の発達の流れに戻してあげればいいだけでしょ。
治る子の治るための発達援助って、必要なことだと思うけれども、そこが仕事の中心になってはいけないと思ってる。


私がイメージしている「治らない人」っていうのは、同年齢の人のように、いわゆる一般の普通の人のようにはならないだろうなって思う人のこと。
周りから見れば、ちょっと変わった人。
本人から見れば、なんだか不具合を感じるな、周囲とのズレを感じるなって人。
だから単純に自立したら治っている、支援を受けていたら治っていない、というわけではない。
治っていないけれども自立している人もいるし、一般就労している人もいる。
一方で治ったけれども、自立していない人もいるし、働けない人もいる。


先日、ここでいう治っていないけれども、障害者枠じゃなくて、普通に試験を受けて入社し、働き続けている若者と久しぶりにお会いしました。
そこで見えてきたのは、脳の配線の違いです。
私がこの頃よく使っているバイパスを通して、本来の、ヒトの動きで発達し繋がっていく経路ではないけれども、迂回したネットワークを使って機能を果たしているイメージ。
その若者の場合、7~8年くらい前は、記憶と言語が強く結びついている感じがして、過去の似たような場面を思い出しながらしゃべっていた感じがしていました。
だけれども、久しぶりにお会って話をすると、言葉に感情がのるようになっていて、しゃべるピッチも早くなっていました。
たぶん、仕事を通じて新たな神経ネットワークが築かれているのでしょう。


発達障害という現象は、その脳機能自体が育っていない場合と、本来繋がっている脳の機能同士(部位同士)が繋がっていない場合とがあるのだと思います。
私が感じる「治らない人」というのは、どうもなんらかの原因で特定の脳機能自体が(完全?一定段階まで)育っていかない感じがします。
しかし一方で、特定の脳機能自体が100%ではなく、60%くらいの育ちであっても、ネットワーク自体は築いていける感じがしますし、なんなら直結ではなくても、正常な部位を迂回して機能を果たすことはできていると感じます。


親御さんの中には薄々、「この子は同級生のように普通の子にはならないだろうな」と感じている人もいますね。
ですから上記のようなお話をすると、そういった若者たちはどのようなことをしてきたのか、をお尋ねになります。
私がそういった若者たちと関わってきて思うのは、「主体性」の大切さ。


ほぼ全員と言っていいでしょうが、みなさん、「〇〇ができるようになりたい」という意思を持ったものに関して上達や「治った」がみられています。
たとえば、接客の仕事をしていて、お客さんに訊かれたことに答えられるようになりたい、という想いを持っていた若者は、数年かけて簡単なやりとり、接客ができるようになりました。
この前は「初めて雑談ができました♪」と喜んでいました。
たぶん、ヒトの神経は必要に迫られると神経同士の繋がりが生じ、喜びや達成感などポジティブな感情によって強化されるのでしょう。
ハイハイがプログラミングされているのではなく、「あっちに行きたい」「行けたら嬉しい」という繰り返しでハイハイという動きの神経ネットワークができるように。


「治らない人が治っていくには」、彼らの主体性が重要になっていくと思います。
その主体性を発揮するためには、本人の興味関心や「必要に迫られる」状況・環境が必要になるといえます。
ポイントは「反復」と「ポジティブな感情」になりますので。
主体性がない"やらされ"感のするものは、たとえそれが必要な発達刺激だったとしても、バイパスを通すような神経ネットワークづくりにはつながらないような感じがします。
本来の自然な繋がりとは異なりますので、その辺りはより強力なものが必要なのでしょう。


ちまたには「こういった課題には〇〇をすると良い」みたいな情報が溢れています。
しかしそういった情報の多くは、治る子の治るための情報だと思います。
治る子というのは、親が治ることをやめない限り、治っていくものですし、そもそもそういった子ども達は特別支援の対象ではなかったはずですね。
もともとノンバーバルな子ども達、重い知的障害や困難な課題を抱えている人たちの支援から始まった私ですので、こういった人達が薬に頼ることなく、またできるだけ支援を受けることなく、部分的だったとしても1つでも多く治っていけるような、少しでも日常生活がラクになれるような発達の後押しの仕方を考えていければと思っています。
もちろん、目指すところはHow toではなくて、治らない子その子に合わせた治る方法です。




☆『医者が教えてくれない発達障害の治り方』のご紹介☆

まえがき(浅見淳子)

第一章 診断されると本当にいいことあるの?
〇医者は誤ることはあるけど謝ることはない
〇早期診断→特別支援教育のオススメルートは基本片道切符
〇八歳までは障害名(仮)でよいはず
〇その遅れは八歳以降も続きますか?
〇未発達とは、何が育っていないのか?
〇就学先は五歳~六歳の発達状況で決められてしまうという現実
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのメリット
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのデメリット
〇療育や支援とつながるほど、子育ての時間は減る

第二章 親心活用のススメ
〇親子遊びはたしかに、発達に結びつく
〇変わりゆく発達凸凹のお子さんを持つ家庭の姿
〇学校は頼りにならないと知っておこう
〇安定した土台は生活の中でしか作れない
〇支援者が行うアセスメントには、実はあまり意味がない
〇親が求めているのは「よりよくなるための手がかり」のはず
〇人間は主観の中で生きていく
〇専門家との関係性より親子の関係性の方が大事
〇支援者の粗探しから子どもを守ろう
〇圧倒的な情報量を持っているのは支援者ではなく親

第三章 親心活用アセスメントこそ効果的
〇子育ての世界へ戻ろう
〇その子のペースで遊ぶことの大切さ
〇「発達のヌケ」を見抜けるのは誰か?
〇いわゆる代替療法に手を出してはいけないのか
〇家庭でのアセスメントの利点
1.発達段階が正確にわかる
2.親の観察眼を養える
3.本人のニーズがわかる
4.利点まとめ
〇家庭で子どもの何をみればいいのか
1.発達段階
2.キャラクター
3.流れ
4.親子のニーズの不一致に気を付けよう

第四章 「我が子の強み」をどう発見し、活かすか
〇支援と発達援助、どちらを望んでいますか?
〇子ども自身が自分を育てる方法を知っている
〇親に余裕がないと「トレーニング」になってしまう
〇それぞれの家庭らしさをどう見つけるか
〇親から受け継いだものを大切に、自分に自信を持とう

あとがき(大久保悠)


『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』をどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!ご購入して頂いた皆さまのおかげで二刷になりましたm(__)m


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