2021年6月10日木曜日

【No.1173】笑顔のアセスメント

ラジオでのお便りに返事をしている際、パッと出てきた言葉ですが、「笑顔のアセスメント」は大事だと思います。
子どもが笑っていると、その遊び、活動は心地良いもの、と私達は無意識に判断していますが、実際はそうではないこともありますね。
「ソファーでピョンピョン跳んでいるとき、いつも笑顔なんです」という親御さんがいましたが、実際その様子を見ていると、顔は笑っているけれども、心地良いような感じがしませんでした。
むしろ、「やらざるを得ない」感がプンプンしていて、辛ささえ伝わってくるのでした。


「笑っているから、楽しい」わけではないことを学んだのは、施設職員時代です。
笑顔で自傷している人もいましたし、怒りながら涙を出しテレビゲームをしたり、おやつを食べたりしている人もいましたので、必ずしも表情と感情が一致しているわけではないのだと感じました。
あとスキンシップ遊びを求めてくる子に応じていたら、最初笑っていて途中からパニックになる子も。
特に知的障害の重い人達は、表情のバリエーションが乏しく、泣くか笑うかで、中間の表情がない感じがします。
確かに生まれたばかりの赤ちゃんは笑いませんし、認知症が進んできたご高齢の方は表情が失われていきます。
認知機能と表情は連動していますので、表情の豊かさが認知機能の豊かさであり、表情が感情のすべてを表しているのではない、ということを知りました。


我が子の遊び、活動、動作を、そのままやらせておいて良いか、止めるべきか、で悩まれる親御さんは少なくないと思います。
子どもの表情、笑顔は大事な判断基準になるのですが、「笑顔=快・発達に繋がる活動」というのは言い切れません。
ですから私がどうしているかと申しますと、常日頃の表情の確認、アセスメントも行うのです。


「遊んでいるときの表情はどうか?」
「おやつなどを食べたときの表情はどうか?」
「関わり遊び(くすぐりやスキンシップ)をしたときの表情はどうか?」
「何もしていないときの表情はどうか?」
「不快や拒否のときの表情はどうか?」
「リアクションに対して、表情が出るまでの時間はどうか?」
あとは成育歴の中で表情のバリエーションの変化と認知機能の状態を確認します。
このようにしてその子の表情を多面的に評価したうえで、笑顔=快なのかを判断していきます。


笑顔と心地良さが一致している場合は、家庭生活の中でたくさん笑顔になれることを増やしていくことが、そのまま発達に繋がります。
一方で笑顔が必ずしも本人の心地良さと繋がっていない場合は、別の判断基準を見つける必要があります。
身体を観るプロフェッショナルな方達が仰っているように、「呼吸が深くなる」「身体が弛む」などもありますし、「表情が自然になる」「声の大きさが一定になる」「動作がスムーズ」「テンションの波が小さくなる」「立ち方・歩き方」「口の開き具合」「食欲」といった変化でも確認することができます。
もちろん、一人ひとり違いますので、何がその子の心地良さの表れか、を確認していく必要があるのです。


ちなみに表情を作る顔面神経の出発地点は脳幹の橋からであり、そこでは舌の味覚(舌前方2/3)と唾液腺・涙腺の分泌も司っていますので、味覚を育てること、つまり、いろんな味を覚えることが表情のバリエーションを育て、結果的に認知機能の発達にもつながっていると思っています。
そう考えると、赤ちゃんはお腹が空くと涙を流して泣き、同時に唾液も口の中に広がる。
で、おっぱいを貰って、穏やかな表情になり、いろんなものを何でも口の中に入れて舐めるようになったくらいから表情の変化が見られるようになる。
そして離乳食から幼児食と移行し、複雑な味を感じ、味覚が広がっていく中で表情と認知機能が豊かに育っていく。


つまり何を申し上げたいかと言いますと、「笑っているから良いんだ」と言えるには、関連するその他の発達も確認する必要がある、ということです。
この表情を一つとっても、日常生活の中での表情が出る場面の確認と、味覚は育っているかな、学習面での発達はどうかな、と多面的に確認しなければなりません。


療育施設や支援級の連絡帳に、「今日も笑顔がたくさん見られました♪」みたいなことがかわいい文字で書かれているのをよく見かけますが、そのたびに「こんな友達メールみたいなことばかり書いているから、勘違いしてしまう親御さんが出てきてしまうんだよ」とツッコミを入れています。
まあ、特別支援の教科書には、こんなアセスメントの仕方は書いてなくて、特徴的な言動しか載っていませんので、特異性を見つける=アセスメントとなっているのでしょう。
それこそ、異常を見つける医療モデルのアセスメントですから。
それではいつまで経っても、子ども達の発達に繋がるアセスメントはできませんね。
間違い探し、ダメ出しでは、発達援助はできません。





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