【No.1171】直感と心地良さの科学
このブログは、だいたいジョギングやジムで運動しているときに思いついたものを文字にしています。
一方でラジオやメール相談、実際の発達相談での回答は、その瞬間、パッとひらめいたものを言葉にして伝えています。
言葉で表せば、文字のブログは「ひらめき」であり、発達相談は「直感」なのでしょう。
そんな話が、昨晩観た「ヒューマニエンス 40億年のたくらみ」という番組で紹介されていました。
京都の哲学の道が有名だったり、経営者などがマインドフルネスを取り入れたり。
そうやって敢えて考えないような時間、ボーとするような時間にも脳は活発に動いていて、創造やアイディアの着想に繋がる話は知っていました。
しかし、直感に関しては大脳基底核が関わっていたなんて知らず、そういったものが科学の力で明らかになったことに驚いています。
なんとなく、直感が働く人、直感が良い人というのは、今までの経験や情報の記憶から瞬時に引っ張りだすのがうまくて、かつそれがすぐに動きとして表せられる人なのかな、とは思っていました。
ですから、直感を磨くというのは、ある程度、情報の蓄積が必要で、あとは…という状態でした。
番組には将棋のプロ棋士の方がゲストとして出演されていましたが、その方の直感に対する表現が興味深いものでした。
将棋を指しているとき、直感が閃いたときは「美しい感覚がある」「芸術作品のような感じがする」そしてその手を打った瞬間、「心地良い気持ちになる」と仰っていました。
将棋は一見すると、指し手を読んでいき、「こうしたら、相手はこう動く」のような論理的、法則的、数学的な思考に思われがちですが、プロの棋士は芸術に近い感じで指していることがある。
昔読んだ羽生善治棋士の著書にも、「直感が7割」などと書かれていました。
たぶん、数え切れないくらい将棋を指し、学んできたプロ棋士の方達は、莫大な記憶の蓄積の中から瞬時に解答を導き出す力が長けているのだと思います。
勝ち筋を見つけた一手が直感的に見えたとき、「心地良い気持ちになる」と表現したことに対して、それは「大脳基底核が感情ともつながっているからだろう」と脳科学の研究者の方が見解を述べていました。
ということは、神田橋先生の「心地良いを大切にする」というのは、心地良いを指針とする=直感が働いている状態だと考えられます。
子育てや発達援助が上手な親御さんと言うのは、特別支援や療育、発達障害の知識が豊富な親御さんよりは、むしろ、あまりそういった知識や情報に振り回されていない親御さんだと感じます。
そしてそういった親御さんは、ご自身の直感をうまく活かしながら、「こうやったらいいかも」「こんな遊びが楽しいかも」という具合に、子育てをされ、子どもさんもそれに応えるようにしてどんどん発達成長されている印象を受けます。
我が子が治ったと喜んでいる親御さんというのは、「やっとの思いで」「苦労に苦労を重ねて」というよりも、ご自身も楽しみ、笑顔が多かった気がします。
つまり、親御さんが「心地良い」ことを実行されている。
「心地良い」は親御さんの直感が働いている状態であり、その直感の源はどこかといえば、今までの体験や記憶だと思います。
その豊富な記憶の中から、直感的に我が子の発達に良いアイディアを導き出している。
じゃあ、その記憶は何かと言えば、我が子と過ごしていた時間における出来事だけではなく、親御さん自身が生きてきた人生、そのものも含まれているのだと思います。
当然、我が子と親御さんは遺伝的に受け継いでいる部分がありますので、親御さんの人生の中での体験も、貴重な情報になると言えるのです。
ですから、我が子の子育て、発達援助をより良いものにしていくためには、我が子、親である自分、またその親である祖父母、3代の記憶と情報にアクセスすることが重要なんだと私は結論付けました。
勉強熱心で、いろんな資格を習得する親御さんほど、子どもの発達につながらないことを行っているように感じます。
これは療育や支援という表面的で乏しい情報にアクセスしているからではないでしょうか。
自閉症や発達障害、支援のプロになれたとしても、我が子の専門家になることはできないのでしょう。
我が子の専門家になるためには、親の代から受け継いだものの中に、そして親である自分の人生と、我が子が歩んできた時間の中に答えがあるのだと思います。
ラジオでの相談も、実際に家庭に伺っての発達相談も、一発勝負です。
だからこそ、感じるのですが、後から振り返ると、どうしてあのような発言、助言になったか、自分でも不思議に思うことが多々あります。
そして終わった頃には、「心地良かった」という余韻だけが残っている。
たぶん、私が今までに学んだこと、素晴らしい実践家の方たちから教えていただいたこと、実際に関わったご家庭、お子さん達から得たことに、アクセスできているのだと思います。
反対にイマイチだった発達相談には、綺麗事、教科書的な回答と引き換えに、心地良さがありません。
いくら感謝されても、申し訳なさが出てきてしまいます。
まだまだ私は知識が足りず、直感をコントロールすることができていないのでしょう。
大脳基底核は、古い脳、伝統脳の部分です。
つまり、親としての直感、私のような支援者としての直感を上手に働かせるには、やはり心身を整え、大脳皮質ではなく、感覚的な刺激を味わい、楽しむ機会が必要なんだと思います。
親御さんが緊張不安が強い→直感が発揮できない→大脳皮質で考える→答えを外に求める→子どもが見えない→発達が進んでいかない→緊張不安が増す→無限ループ。
親御さんの心身が整っている→直感が働く(心地良い)→3世代の知識、知恵、情報にアクセス→子どもに合った子育て→どんどん発達成長→親御さんが子育てを楽しむ→心身が整う→…。
子育て、発達援助の指針を「心地良さにする」というのは、非科学的に見えるかもしれませんが、こうやって後から研究が進み、明らかにされることがあります。
それこそ、エビデンスが出るのを待っていては、子ども達はあっという間に大人になってしまいます。
「エビデンスがある」というのは、現時点でわかっていることであり、未来永劫正しいわけでもありません。
反対に「エビデンスがない」ことだったとしても、まだ科学、研究のほうが検証するだけ追い付けていないということもあるのです。
エビデンスよりも、目の前の子どもがどうか、ですね。
エビデンスよりも、親御さんの直感のほうが3世代という歴史と情報の重みが違いますね。
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