2021年9月3日金曜日

【No.1189】「どんな遊び・運動?」から「どんな動きが必要か?」「どんな刺激が必要か?」へ

昨日のブログでもチラッと書きましたが、現代社会で求められる活動の多くは、狩猟生活をしていた頃に発達させた脳を代用しています。
数学脳があるわけでも、社会脳があるわけでも、プログラミング脳があるわけでもありません。
「身体があって文化が生まれる」です。
人類の歴史、700万年のほとんどは自然の中で狩猟生活をしながら生活していたわけで、狩猟生活で発達させ、使っていた脳を汎用させ、現在社会を生き抜いているのです。


発達相談において、「どのような遊び・運動をしたらよいですか?」というご質問が多くなった気がします。
これは様々な方達が、「発達障害は身体から治っていく」という姿を示してきた成果だと感じています。
私も先輩たちから学び、身体からのアプローチを中心にお伝えしていますので、こういったご質問を多くいただくのでしょう。
長らく「支援」の時代が続いていましたので、やっと「身体」がベースに、「身体」から始められるようになったことを嬉しく思っています。


しかし一方で、その先を目指さなければならないとも思います。
「どのような遊び・運動を?」というのは、まだ本質的な部分に気づかれていない状態だといえます。
確かに子どもさんのアセスメントを間違わなければ、発達に繋がる遊びや運動はあるものです。
ただまだそれだと「治る」「治っていく」までは進まない気がします。
身体からのアプローチは、特定の手段、療法ではないのですから。
栄養アプローチがうまくいっていないのは、「食べるからのアプローチ」という本質的な意味をはき違えているから、に似ていると思います。


神経発達に遅れがある子ども達、といいますか、神経発達が盛んなどの子ども達も食事は大事です。
でもだからといって、どの子もサプリを飲めばよいのか、そもそも栄養とは栄養素のことだけなのか、を考える必要があると感じています。
食事とは単なる栄養素を吸収するための行為ではありません。
特に子ども達にとっては、噛む力、飲みこむ力、舌の動き、嗅覚・味覚、消化吸収の内臓機能、手の動き、目と手の協応を育てるのも、食事において行っています。
また食べ物を取りこむ行為を通して、唾液を分泌させ、認識力や防御システムを育ててもいるのです。


当然、噛む、飲みこむ、消化吸収する、も運動です。
ですから身体からのアプローチでは、こういった運動にも注目し、発達機会の保障と発達の後押しが必要です。
時折、栄養療法と身体アプローチという具合に区別して捉えているのでは、と思う親御さん、支援者とお会いします。
でも、本来、栄養も、運動も、身体からのアプローチの一つで別々に存在しているものではありません。
身体からのアプローチなのですから、食事も、排泄も、遊びも、運動も、すべてが入ります。


子どもの神経、脳はまだ未分化な状態なのですから、大人とは違い部分的な発達は適さないのです。
イメージで言えば、噛むことを一生懸命行ったら、感覚が育ち、認知が育ち、運動機能が育ち、手のコントロールがうまくいき、目の合わられるようになり、排便が整い、よく寝られるようになる、感じです。
つまり、発達はあらゆるところと繋がっていますし、あらゆる神経と繋げようとする時期が子ども時代なのですから、まさに芋づる式で発達し、治っていくのです。
よって、〇〇療法というように細分化が進んでいくと、子どもの神経発達の特徴とはズレが生じ、結果的に発達ではなく、パターン学習になってしまうのです。


私が身体アプローチを中心に学び、発達援助の核にしているのは、ヒトの発達に即した考え方だからです。
画期的な療法と言われたTEACCHプログラムだって、高々誕生して50年くらいなものです。
特別支援教育だって20年くらい。
それと比べて、ヒトの進化は700万年。
発達を知るということは、どうやってヒトは進化してきたか、脳や神経系を発達させてきたのかを知ることだといえます。


700万年かけて進化してきた過程には、ヒトの発達の原理原則があります。
文化的な活動はすべて狩猟生活で培った脳を汎用させて行っている。
私が子どもさんの遊んでいる姿に注目するのは、その中に子どもさんの資質、遺伝的に受け継いだもの、そして社会的な活動を行うための土台があるからです。
子どもは最初に【感覚】で世界と繋がります。
【身体を遊び道具】にしたあと、【自由自在に動かせる身体】を育てます。
自由自在に動かせるように身体を使い、【自然と繋がっていく】。
自然で生きていくには単に運動ができるだけではなく、【狩猟採集】、そして自然を【道具として扱う】段階まで育つ必要があります。
現代風に言えば、ジャングルジムなどによじ登る、虫や花、木の実を採取できる。
その状態になって初めて、就学後の教科学習ができる準備が整うのだといえます。


○○式の勉強法などの選択は、こういった身体が育ったあとの選択になるのです。
身体が育っていないのに、いくら勉強法を探してもできるようにはなりません。
同じように○○療法などというのも、本来は身体という土台が育ったあとの選択になるのですが、現状はそうなっていません。
身体が育っていないのに、細分化された療法を行ったり、行わせようとしたりする。
背面が育っていない人に、SSTで他人との距離感を教えようとしても、不可能なのです。
嗅覚が育っていない人に、他人との上手な付き合い方は無理です。
ですから今の療法の多くは、ほとんどがその場だけ、その時間だけ、その人だけ。
つまり、パターン学習を一生懸命させているのみ。


発達障害の子ども達の身体に注目することが標準になったのは喜ばしいことです。
だけれども、もう一歩先に進む必要があると思います。
なぜ、身体からアプローチすることが発達に繋がるのか。
社会生活を送る上で、より良い発達成長へと繋がるのか。
その辺りは私も丁寧に説明し、お伝えしていく必要があると感じています。
もうここ1、2年は、1歳代、2歳代、3歳代の子ども達からの相談が増える一方です。
ということは、親御さんの捉え方、ニーズもどんどん変化しているということです。
親になって数年しか経っていない親御さん達が増えていて、身体が標準になっているからこそ、決して身体療法ではないことをお伝えしなければならないと思っています。
身体療法が効果があるから良いのではなく、ヒトの発達からいえば、身体が育たなければ、社会生活、学習、自立がならない、というお話を。
「どんな遊び・運動?」から「どんな動きが必要か?」「どんな刺激が必要か?」というようになれば、アセスメントとアプローチが一致しますね。


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