【No.1018】関西出張(+広島)を終えて

昨日、3泊4日の関西出張を終え、函館に戻ってきました。
新型コロナが騒がれていますので、お断りされるご家族もいらっしゃるかな、とも思っていましたが、予定していた4家族の皆さんは大変温かく、反対に私の方を気遣ってくださいました。
本当にありがとうございました。


今回の出張を終え、一番に思ったのは、私の妻への感謝でした。
金曜日から移動しましたので、3連休をまるまる息子たちと過ごしてもらいました。
全国あちこち出張して一発勝負で発達相談をしている仕事に対して、いろんな方からお褒めの言葉を掛けてもらいますが、本当にすごいのは私ではなく、妻だと思っています。
家族の理解と協力がなければ、いくら治すアイディアを持っていたとしても、届けることはできません。


真っ先に家族のことを思ったのは、今回、お会いしたご家族の皆さまの影響だと考えています。
当然、訪問するご家族はお互いについて知りません。
ですが、今回はお子さん達の年齢が皆さん近く、そして何よりも、身体全身を使って我が子を思いっきり愛しているご家族でした。
どのご家庭に訪問しても、とても雰囲気が良いのです。
お子さんが、ご両親の愛情をたっぷり受け取っているのが、本当に良く分かりました。
そんな愛情たっぷりのご家族と関われたからこそ、自分の家族を一番に思い浮かべたのだと思います。


我が子を心から愛し、全身で表現しているご両親。
しかし、その家族のエネルギーを奪おうとする存在がいます。
幼い子を前にして、この子の将来がすでに決まっているかのように告げる専門家。
乳幼児期の中心は家庭であるのにも関わらず、そこでの様子、成長に耳を傾けることなく、チェックシートとにらめっこして、診断名をつける医師。


大事なのは、親御さんが知りたいのは、チェックシートに当てはまるかどうかではありません。
100歩譲って当てはまってもいいし、診断名がついてもいい。
でも、それ以上に、どうすれば、この子がより良く育っていくか、そこが知りたいのです。
そんなにチェックシートが大事なら、各家庭に配って、親御さんにつけてもらえば良い。
お金を貰って仕事している身なら、腐っても「専門家」と名乗っているのなら、より良い未来について具体的な助言ができなければなりません。


往復の飛行機で、ちょうど読めるくらいなのが新書なので、いつも1冊持って移動します。
今回、読んだのは『子どもの発達障害 誤診の危機』(ポプラ新書)です。
Eテレの『すくすく子育て』など、よくテレビにも出ている榊原洋一医師が著者です。
タイトルのように誤診や過剰診断についてが中心に書かれていましたが、私が読んで良かったと思ったのは、第6章の『発達障害は治る』という部分です。


発達障害を治すのは、子ども自身です。
どうして、子ども自身かというと、発達する力は、その子の内側に存在しているからです。
著者の榊原医師は、「outgrow」という言葉を使い、その様子を表現されています。
まさに、私達が行いたいのは、子ども達の内側にある発達する力を後押しすること。
そういった後押しを受けて、子ども自身で、障害を乗り越えていってほしい、というのが願いです。
障害が固定化されたものなんていうのは、ひと昔も、ふた昔も、前の認識です。
便宜上、引いた障害と定型の間の線。
そんなもの、子どもが自らの発達する力で飛び越えてしまうのです。
それこそ、「発達障害は治る」です。


今回、訪問させてもらったご家族は皆さん、しっかり我が子との愛着関係が築けていました。
子どもさんの表情、雰囲気からも、子どもさん自身が、親御さんからの愛情に気づいている様子が何度もみられました。
ですから、子どもさんが、今ある障害を飛び越えていく、発達の遅れを取り戻していくことが十分に可能と言いますか、あるのは「いつ飛び越えるか」という時間の問題だけだと思います。
何が発達のストッパーになっているか、今の遅れは何と繋がっているのか、についてお伝えしましたので、その点を今までの子育てにプラスして育んでいかれると、本来の発達の流れに戻っていくはずです。


せっかく我が子を愛し、家族の生活を楽しんでいる人達に対して、「今、発達が遅れている」「チェックシートに当てはまる」なんてことだけで、水を差す専門家は百害あって一利なしです。
家族の喜び、育む力を奪おうとする専門家なんていらないのです。
必要なのは、発達の遅れがあり、気持ちが揺らぐ、または後ろ向きになりそうな家族に対し、専門的な視点から具体的な助言と、それに伴うポジティブな未来、将来の可能性を伝えること。
家族、子育てと関わる専門家なら、その家族が、子育てがポジティブな方向へと進むための仕事ができなきゃいけません。


もちろん、単なる慰めや接待ではなく、核心をつく具体的な助言です。
ただ「遅れている」ではなくて、なぜ、今、遅れが見られているのか。
その遅れは、どういったことで育っていくのか、どのくらいで育ちきるのか。
「診断基準に当てはまる」ではなく、当てはまるのは、脳の特性からなのか、発達の遅れの積み重なりか、発達のヌケの影響か。
定型の子ども達でも行う動作も、通る発達過程も、すべて「自閉だから」「発達障害だから」というのは、自分自身で「私は勉強不足です」「定型発達を知らずに、ただの専門として発達障害をやっています」と言っているようなもの。


どう頑張っても、診断のチェックシートがつけれても、その人に発達障害を治す力も、知見もありません。
今の時代、診断に当てはまるかどうか、なんて大したことではありません。
たとえ、今、障害があろうとも、発達の遅れがあろうとも、その子の発達する力を信じ、自らの足で飛びこえていくことを後押しするのが、真の発達援助であり、自然な子育ての姿です。
診断とは、支援を受けるための手続きであり、支援を受けることは、支援を受けながら生きるという子の将来を他人が決めてしまう行為なのです。


支援を受けても、発達はしない。
発達したのは、その子の内側にある発達する力が発動しただけ。
支援を受けて発達するのなら、早期療育の子ども達は、大人になるまでにどれほど発達するのか、どれほど多くの人達が自立して生きていくのだろうか。


親がすることは、子の可能性を最大限に広げてあげること。
そのための1つが、発達障害を治すことであり、そのための後押しをすること。
発達障害を治すのは、子の将来の可能性、選択肢を広げるための子育ての一つです。


子どもの成長はあっという間です。
幼いお子さんのご家族からの相談では、「今しかない、この“とき”を大切にしてください」とお伝えしています。
特に就学前は、我が子が一番かわいいときであり、家族としても一番幸せを感じられる時間だと思います。
でも、その時間も、少しずつ短くなっているのです。
ですから、発達障害を治すのは大事だけれども、それが家族の時間のすべてにはなってもらいたくありません。
特別なことをしなくても、一緒にご飯を食べ、一緒に公園に出かけ、一緒に笑うだけでいい。
そういった今しかない家族の時間を積み重ねていくことも、子どもの発達には大事なことです。
主体的に、自らの意思と選択によって生きていける人は、子ども時代が家族でのきらめく時間で埋まっている人。


是非、今までの子育て、家族での生活をベースに、ちょっと今回お伝えした視点、方法、アイディアを加えていただければ、と思います。
どの親御さんも、我が子の発達する力を信じているのが、とてもよく伝わってきました。
きっと、子どもさん自身で「outgrow」、課題を乗り越えていかれると思いますし、私も信じています。
今回お会いしたご家族の皆様、誠にありがとうございました。



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