確認できるところから、そこにつながっている見えない部分を視る

相談者から「モロー反射が統合できていなくて…」「呼吸が深くできないんです」「背中が固くて困ってます」と言われれば、そこまで難しくはありません。
ですが、実際は漠然とした表現で、それぞれの言葉と概念に乗せて相談者の口から発せられます。
例えば、学校内での問題として、「授業に集中できない」「宿題をやろうとしない」「クラスの子の声、音にびっくりしてしまう」「学校に行いきたがらない」「文章問題がまったくダメ」「グループ学習が難しい」などがあります。
悩みの数は、相談者の数だけあって、その表現の仕方も、見る“眼”によって異なるのです。


そんな抽象的で、主観によって表現される相談に対してどう対応するか?
支援者には、大まかに分けて3パターンがあります。


まず、どんな相談がされても、いつも言うことがだいたい同じ、という支援者。
「そのままを受け入れましょう」「無理はさせない」「周囲の理解が大事」「子どもに寄り添いましょう」「視覚化して伝えましょう」など。
こういった支援者は、相談者の言葉の前に、自分の答えが決まっています。
つまり、相談者の悩みはどうでもよくて、「頼ってもらうことが嬉しい」「過去に自分が言ってもらいたかった言葉を言うことで、自分自身を癒したい」「主義主張が決まっている」というのが、背景にありますね。
このレベルの支援者は、支援者ではなく、自分が支援を受ける立場の人。


次に、相談者の言葉に対して、そのまま返答してしまう支援者。
問題の背景は別のところにあるのに、相談者の表現のまま、噛み砕くことなく飲みこんでしまう。
そうすると、対処療法にしかならず、根本に届く支援はできません。
対処療法に、対処療法を重ねていき、結局、行き当たりばったりの支援に。
一時的に解決したように見えるけれど、時が経てば、再び問題が出てくる。
このレベルの支援者は、勉強すれば誰でもなれるくらいの人。


そして、3つ目のパターンの支援者が、本物のプロフェッショナル。
治すことができる支援者です。
言葉で表現された相談内容を、言葉以外から読み解く支援者。
現在までの育ちの歩み、発達過程、将来の姿まで、表面に出ている部分から見えないものを辿ることのできる支援者こそ、専門家であり、お金を貰って良いレベルだと思います。
また、この支援者は「人を育てる」人だといえます。


対処療法はいくらやっても、対処療法にしかなりません。
言葉に言葉で対応しても、言葉以外は変わっていきません。
問題の根っこを掴み、そこから育てなおしていくことが、時間がかかるように見えますが、一番の近道だと思います。
この仕事を続けてきて思うのですが、発達障害の人達は支援が必要な人ではなくて、育ち直しが必要な人達である、と思います。
彼らが欲しいの支援ではなく、学び直す機会であり、抜けた育ちを埋める時間ではないでしょうか。
そのためにも、本人や家族の方達には、支援者を見る目を養っていただき、また自分たちも問題の根っこを掴む努力をしていただきたいと思います。


「自分に必要な学びは何か?」
「自分の歩みの中で、足りなかった発達段階は何か?」
支援ではなく、育ちを求める人が増えることが、治る人を増やすことにつながると思います。
私自身も、見えないものが視れる職業人になれるよう学び続け、自分を厳しく育てていかなければならないと考えています。

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